2016年世界医師会（WMA）ブエノスアイレス理事会開催される

アルゼンチン医師会幹部〔ナタリオ・キャンター副会長（左端）、ジョルジュ・コロネル会長（右2人目）、ジョルジュ・ジャネス理事（右端）〕と

アルゼンチン医師会幹部〔ナタリオ・キャンター副会長（左端）、ジョルジュ・コロネル会長（右2人目）、ジョルジュ・ジャネス理事（右端）〕と

　世界医師会（以下WMA）ブエノスアイレス理事会が、アルゼンチンのブエノスアイレスにおいて4月28日から30日にかけて開催され、37医師会及び赤十字国際委員会等約140名が参加した。
　日医からは、松原謙二副会長（WMA理事）、石井正三常任理事（WMA理事及び財務担当役員）、畔柳達雄参与（WMA医の倫理委員会、社会医学委員会アドバイザー）が出席した他、日本医師会Junior Doctors Networkから阿部計大医師、三島千明医師が参加した。
　理事会では、冒頭、オトマー・クロイバーWMA事務総長から、横倉義武会長（WMA理事）は4月に発生した平成28年熊本地震において、日医会長として被災地医療支援の陣頭指揮を執るため、国内に留まることになり、欠席となる旨報告された。
　また、理事会決議として、「ジカウイルス感染に関するWMA声明案」「難民と移民に関するWMA決議案」が採択された。

（1）緊急決議として採択された文書
「ジカウイルス感染に関するWMA理事会決議」（イギリス医師会提出）
　WHOがジカウイルス感染を地球規模の健康に対する緊急事態と指定したことを踏まえ、流行地域における注意喚起、蚊駆除法の有効性に関するデータの収集をWHO他関連機関に促し、診断検査、抗ウイルス薬、ワクチンの開発の継続と入手可能な価格設定を各国政府に求めるとともに、小頭症との因果関係に関する研究内容を公開すべきと勧告する内容。
「難民と移民に関するWMA理事会決議」（トルコ医師会提出）
　多くの難民が、戦争や紛争地帯、絶望的な暴力、不当な扱い、虐待、精神的、肉体的に非常に大きな影響を与えられかねない状況からの回避及び保護を求めているが、国際社会はこれまでに医療ニーズへの対応を含め、難民の危機に取り組む準備ができていない。
　WMAは、1998年のオタワ総会で採択された「難民の医療に関するWMA声明」以来、この問題について繰り返し主張してきた。この決議では、難民がいかなる法的状況下にあっても、適切な医療と安全な住環境が確保されるよう、各国政府、地方自治体に促している。
（2）医の倫理関係
1．作業部会により継続審議される文書
　〇ヘルスデータベースとバイオバンクにおける倫理的考察に関するWMA宣言案
　〇ジュネーブ宣言
2．個々の対応が求められる文書
　〇安楽死及び医師による死亡幇助に関するWMA再考案
3．コメントを求めるため各国医師会に回付される新規文書
　〇出生前の男女産み分けにおける医師の関与に関するWMA決議案
　〇医学教育における品質保証に関するWMA宣言案
（3）社会医学関係
1．コメントを求めるため各国医師会に回付される文書
〈継続文書〉
　〇未成年者の人身売買及び不法な養子縁組の防止における医師の役割に関するWMA声明案
　〇武力衝突に関するWMA声明案
　〇産業・環境保健と安全及びジェンダーの側面に関するWMA声明案
　〇ボクシングに関するWMA声明修正案
　〇化石燃料への負の投資に関するWMA声明案
　〇子どもの肥満に関するWMA声明案
〈新規文書〉
　〇医療その他の重要なインフラに対するサイバー攻撃に関するWMA声明案
　〇医療ツーリズムに関するWMA声明案
　〇医療用大麻に関するWMA声明案
2．10月の総会に採択のために付託される文書
　〇高齢化に関するWMA声明案
　〇WHOタバコ規制枠組条約の実施に関するWMA決議修正案
　〇女性生殖器切除の非難に関するWMA声明修正案
　〇囚人の身体検査に関するWMA声明案
　〇国際医療選択科目における倫理的考慮事項に関するWMA声明案
（4）財務企画関係
1．今後の開催日程
　2016年総会10月台北（台湾）
　2017年理事会4月リビングストン（ザンビア）、総会10月シカゴ（米国）
　2018年理事会4月リガ（ラトビア）、総会10月レイキャビク（アイスランド）
　2019年理事会4月（未定）、総会10月イスタンブール（トルコ）
　2020年理事会4月（未定）、総会10月トビリシ（ジョージア）
2．WMA特別企画会議
①WHO世界総会におけるWMA会合（テーマ：健康の社会的決定要因）
　2016年5月23～28日：ジュネーブ（スイス）
②世界獣医師会・世界医師会共催"One Health"に関する国際会議
　2016年11月10～11日：福岡県北九州市（日本）