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平成29年(2017年)2月20日(月) / 日医ニュース

「米国ヘルスケアの最新動向」をテーマに開催

「米国ヘルスケアの最新動向」をテーマに開催

「米国ヘルスケアの最新動向」をテーマに開催

 独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)ニューヨーク事務所の川端裕之ディレクターによる報告会が1月31日、横倉義武会長始め多くの常勤役員出席の下、日医会館で開催された。
 報告会は、道永麻里常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉会長は、「本日ご講演頂く川端ディレクターには、毎年、ハーバード大学公衆衛生大学院武見国際保健プログラム視察のための出張の折、ニューヨークでアメリカの医療の現状について話を聞かせてもらっている。現在アメリカではトランプ大統領が誕生し、早速オバマケアを廃止する大統領令に署名するなど、大きな変化が起きている。そのような中で本日お話を聞くことができることを楽しみにしている」と述べた。
 引き続き、川端ディレクターが「米国ヘルスケアの最新動向~大統領選の振り返り、連邦政府がこれまで進めてきた医療政策とトランプ大統領のインパクト、目まぐるしいライフサイエンス分野の環境変化と最新テクノロジーについて」と題して講演を行った。
 川端ディレクターは、今回の大統領選を振り返った上で、トランプ大統領の勝因について、「賃金格差の広がりに対する不満が国民の中にあった」「もともと民主党が強かった州が接戦となった」等があったと分析。トランプ大統領については、①アメリカ第一主義者であり、国民の不満はグローバル化によって過度な競争に晒(さら)され、不法移民によって職を奪われたことにある②アメリカは本来、個人責任に基づいて自由であるべきであり、国家、特に連邦政府が国民に対し過度な義務を課すべきでない―と考えていると説明した。
 オバマ前大統領が創設したオバマケアについては、「無保険者の減少」「医療の質の改善」「医療費の伸びの抑制」などの成果が見られるとする一方、「病気になってからの医療保険への加入や健康な若年層の未加入により、保険会社の撤退、保険料の上昇」などの問題も起きているとした。
 その上で、トランプ大統領がオバマケアを廃止すると決めた背景には、これらの問題に加えて、国民全員に対して、連邦政府が医療保険購入義務を課すものであり、自由主義に反すると考えたことにあると指摘。今後については、「そのまま廃止しただけでは無保険者数が再び増加するだけでなく、支持基盤である白人中低所得者層の保険が失われてしまうことによる反発は必至であることから、いかにこれらの人々が納得するトランプケアをつくっていくかが焦点となる」と述べた。
 トランプ大統領のヘルスケアに関する考え方については、選挙中から掲げていた①オバマケアの全面廃止②州を越えた医療保険販売を可能にする③メディケイド補助金の包括助成④医療プロバイダの価格透明性の向上⑤安全・良質かつ安価な医薬品の参入促進⑥医療預金口座の拡大⑦個人の保険料について全額税額控除を可能にする―の7つの施策を紹介。「超党派により『21世紀医療法』『メディケア及び児童の医療保険プログラム改革法』といった重要な法律が既に成立していることから、医療分野の研究開発の方向性や医療の量から質に根差した方向性は踏襲されるだろう」とした。
 高額薬剤の動向に関しては、価格決定の仕組みが複雑で、市場の流通価格が分かりにくいとするとともに、製薬企業と保険会社による償還価格の交渉が激化しつつあるものの、薬価は高騰傾向にあると説明。そのため、保険会社による高額薬剤の使用制限も見られるとした。
 更に、ライフサイエンス分野の環境変化と最新テクノロジーとして、IT技術による医療プログラムの開発や遺伝子治療のための環境整備が進められていることなどを紹介。今後、医療費が高騰化する中においては、最先端医療を行うに当たり効果の有無を診断することや病気の予防が重要になるとした他、保険者機能が強化されるとともに、ビックデータ、人工知能を利用したデータシェアリングが進むことで、研究開発の効率性が大きく進展するのではないかとの考えを示した。

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