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平成31年(2019年)2月20日(水) / 南から北から / 日医ニュース

家庭菜園の愉しみ

 子どもの頃は野菜を食べるのが嫌いだったのに、大人になってから野菜を作ることが趣味になるとは、不思議なものだなあと思います。
 生まれ育った千葉県の実家には、猫の額ほどの小さな庭があり、その一角で、今は亡き祖父が家庭菜園を愉しんでいました。
 広さとしては2~3畳分しかないような小さな畑に、毎年トマト・きゅうりなどを植えていて、夏には祖父と一緒に収穫をした思い出があります。
 医学部6年生の臨床実習の時、指導医のお宅に招かれ、庭の枝豆を食べさせて頂きました。「鳥などが食べに来るが、その残りを人間が食べる」と話されていたことに衝撃を受けたのを覚えています。
 医師になって3年目頃から、なぜだか妙に家庭菜園をやりたくなりました。
 勤務先が変わるごとに住む場所も変わりましたが、その時々で畑を借りるなどして、いそいそと取り組んでいました。
 最初は全くやり方が分からず、畑に穴を掘って、買ってきた肥料をどさっと投入し、そこにそのまま苗を植えました。いかにも素人の思いつきですね。すぐに枯れてしまいました。
 本当は苗と肥料を直接くっつかないようにしなければいけないのですが、そんな基本的なことも分からず手探りの状態でした。
 やはり基本的な事項の一通りの理解は重要です。家庭菜園の本を買って学び、クワで畑を耕し、それなりに作れるようになりました。
 家庭菜園は鳥や虫との闘いでもあります。臨床実習の時の指導医のような広い心を持ち合わせたいものですが、自分の人間性はまだまだ未熟なようです。私は初心者であるにもかかわらず無農薬にこだわっているので、悠長に構えていると食べ尽くされる危険性があります。
 キャベツに挑戦した時は、たくさんの蝶々が来て子どもが喜んでいたのですが、どうやらたくさんの卵を産みに来ていたらしく、はらぺこあおむしに数日で食い荒らされ、葉脈だけになってしまいました。
 無農薬でも虫の対策方法はあります。酢・焼酎・唐辛子を混ぜて作る天然素材の虫よけ(「ストチュー」と呼ばれています)です。これが猛烈な臭いがするのです。100倍くらいに薄めて霧吹きで野菜に掛けるのですが、そこについている虫が逃げ、身をよじります。農薬より危険なのではないかと思うくらいの強烈さです。
 今はご近所の方のご厚意で、家のすぐ近くに畑を借りています。今年は、初めてブロッコリーに挑戦しました。来る日も来る日も虫退治をして、臭いに耐えながらストチューを振りまき、ようやく食べられるブロッコリーを2個収穫できました。とても美味しくて、子どもも喜んで食べてくれました。
 これが店頭では数百円で売られているなんて......。プロの農家さんの苦労を思うと、ただただ脱帽です。
 家庭菜園は大変だけど愉しい。苦労した分の喜びがあります。つらい冬を乗り越えたからこそ春の喜びが大きいのと似ています。
 一時は、通勤用の自家用車を軽トラックに買い替えようかと思ったこともありましたが、家族や職場仲間の賛同が得られず断念しました。
 将来は大きい畑のある小さい家に住んで、家庭菜園を続けていくことが夢です。

青森県 南黒医師会報 第95号より

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