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令和3年(2021年)5月20日(木) / 日医ニュース / 解説コーナー

新型コロナ対策に求められる「正確な情報発信」「自治体との連携」「デジタル化の推進」

新型コロナ対策に求められる「正確な情報発信」「自治体との連携」「デジタル化の推進」

新型コロナ対策に求められる「正確な情報発信」「自治体との連携」「デジタル化の推進」

 今号では5月5日号に引き続き、自見はなこ参議院議員に特別インタビューをした模様を紹介する。第2回目となる今回は、新型コロナウイルス感染症対策に必要なことなどについて、ご自身の考えを語ってもらった。

Q 新型コロナ対策として必要なこと、また、コロナ収束後の医療提供体制についてお考えをお聞かせ下さい。

A 新型コロナウイルス対策で必要なことは、政府からの正確で的確な情報発信だと強く感じています。水際を含む国内感染状況の国民への説明、感染対策の方向性、協力を頂いている民間事業者や労働者をカバーする経済対策などを、遅滞なく「伝わるように伝える」ことが、最も国民や対策に当たっている関係者が求めていることだと思います。
 医師が治療方針を説明する時と同じで、同じ情報を共有し、納得感を持って共に進んで行くことが鍵となりますが、感染状況などの予見可能性を示すことは、行政からは苦手な分野かも知れません。
 感染症対策ではありますが、国の経済などの重大事項との関連から、最終的には科学的知見を内包した上で政治判断として取り扱われるということを、厚生労働大臣政務官を務めたことで学びました。
 ただし、早期の強力な公衆衛生学的介入が最大の経済対策であることは、100年前のスペイン風邪の米国セントルイス市でも実証されています。
 さまざまなせめぎ合いで、政府も苦労していると思いますが、原理原則は見失わないように対応することが必要だと思います。

地方自治体との連携強化の必要性

 国と地方自治体との連携も非常に重要です。例えば、ワクチン接種で政府の方針を受けて自治体が動く場合には、全体の方向性の把握と同時に、細かな実務作業の詰めも求められ、想像を絶する事務労力が費やされます。
 今回は、全国知事会、全国町村会、それらを所管する総務省などの働き掛けに当初から助けられていますが、その一方で、地方自治体における通知や事務連絡などの情報の周知や、予算措置の執行に時間が掛かる実態もあります。感染者数など、自治体からの情報を国が把握するのに困難を感じる局面もありました。
 国と地方自治体との関係や権限設定に関する、今回明らかになった感染対策上の課題については、コロナ収束後の国会で審議をする必要があり、次のパンデミックに備えるために今の段階から常に考えておくことが必要です。

デジタル化の重要性について

210520g2.jpg 今後の医療行政を行う上でも、デジタル化は必須です。本紙5月5日号でもお伝えしたとおり、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での対応の経験から、情報を一元的に把握して共有することの重要性を痛感し、G―MISやHER―SYS等のシステム整備に取り組み、政務官の任を終えました。
 その後に、厚労省ではワクチン接種でもV―SYS(ワクチン接種円滑化システム)や、内閣官房ではVRS(ワクチン接種記録システム)といったICTツールが出現しましたが、システム周辺で課題が多いと感じています。
 システムをつくる上で大切なことは、グランドデザインを描くこと、それを公に説明すること、加えて、その実現のためにシステム提供者側は、必要最低限の項目の絞り込みを行うべく、当初からその作業を省内あるいは省庁横断的、政府―自治体横断的に行うことです。
 新型コロナワクチンに関して、いくつものシステムに医療従事者に類似の項目を入力させることは、本来のシステムが持つ情報を統合し"楽"にしてくれる働きを十分に発揮している状態とは言えないのではないでしょうか。
 また、ユーザーである医療従事者に改良要望箇所などを細かく指摘してもらい、それらを受けてシステムエンジニアが改良を幾度も重ねていくことで、システムは"成長"していくわけですから、双方向のキャッチボールが成り立つコミュニケーションチャンネルを当初から開けておくべきであったと考えています。
 加えて、今後は、デジタルと行政の仕組みの両方に詳しい人材の育成やマネジメントするに当たっての権限付与も求められると思っています。

デジタル化の好事例:日本学校保健会の取り組みについて

 学齢期の子どもの新型コロナウイルス感染は、変異株の情勢においては増加も予想され、今後も学校における感染対策は重要になります。
 学校での新型コロナウイルス感染症対策において、政府は、日本学校保健会が運営してきた「学校等欠席者・感染症情報システム」の更なる普及と充実を図っています。
 現在、同システムには全国の小学校の約66%、中学校の約60%が加入し、感染症で欠席する児童生徒等の発生状況をリアルタイムで把握していますが、教育委員会や自治体の保健所、厚労省、文部科学省、国立感染症研究所等でも情報共有が可能となっています。
 新型コロナウイルス感染症対応の改修も済み、昨年からは厚生労働科学研究でも研究班の事業に参画し、令和3年度予算では文科省から2億円が計上され、校務システムとの連携が行われる予定です。
 このことはシステムを活用した感染症対策のツールの好事例と言えます。

医師の働き方改革との関連について

 コロナ収束後の医療提供体制を語る上で、必要な感染症病床数に関する議論も行われていくとは思いますが、避けて通れないのが、医師の働き方改革です。
 2024年から医師の時間外労働時間の上限規制が罰則付きで適用されますが、医師の過重労働緩和と地域医療提供体制の維持という大変難しい課題に直面します。
 文部科学省が国公私立の81大学病院を対象に昨年と本年の二度にわたって実施したアンケートでは、多くの大学病院が自院での診療や研究・教育体制、地域への医師派遣に支障が出ることを懸念しています。
 4月22日の参議院厚生労働委員会でも質問しましたが、年間の時間外労働時間が1860時間を超えると推定される医師がいる医療機関は、病院全体では27%、大学病院では88%、救命救急の機能を有する病院では84%と、非常に高い割合です。
 まずは若い勤務医が集中する大学病院等を皮切りに取り組みを進めていくことが急務です。これまで、「救急医療に関する議員勉強会」「臨床工学技士の資質向上を求める議員連盟」として推進してきたタスクシフティング・シェアリングはもちろん、「女性医療職エンパワメント推進議員連盟」事務局長として取り組んできた、若い世代では今や4割を占めようとする女性医師の働きやすい勤務環境整備など、大幅な財政措置を含め、徹底的に進めていかなければなりません。
 また、「医師養成の課程から医師偏在是正を求める議員連盟」の事務局長として取り組んできたスチューデントドクターの法制化や共用試験の公的化など、実を結び始めているものもありますが、医師の養成課程まで含む幅広い国民的な議論が、これからの医療提供体制を議論していくためには必要だと認識しております。

Q 最後に会員の先生方に一言お願いします。

A 中川俊男会長を始め日本医師会の先生方には平素より温かいご指導を賜り、深く感謝申し上げます。とりわけ、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、国民の命と健康を守るため医療・介護・ワクチン接種など最前線の現場を担っていらっしゃることに、最大限の敬意を表します。
 今回、より多くの国民が、日頃から医師会が果たしている重要な役割を知ったのではないかと思います。
 三度目の緊急事態宣言が発令されるなど、厳しい情勢が続いており直接お伺いすることがかなわない中、本紙にインタビュー記事を掲載頂ける機会を賜り、大変有難く光栄に存じます。
 参議院議員としての任期も、残り1年余りとなりました。医療現場の先生方のお声を国政に届け、お役に立てるようにこれからも頑張って参ります。またコロナ禍で急激に進行している人口減少へも手を打つ必要があると考え、「こども庁」の議論も成育基本法に基づいて開始しました。
 引き続き、安心の国民皆保険を次世代に受け継ぐ使命を果たすべく、日本医師会・日本医師連盟の先生方と心を一つに、全身全霊で取り組んで参る所存です。変わらぬご指導・ご鞭撻のほど、心よりお願い申し上げます。

最近の自見先生の活動

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「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」事務局長として、積極的勧奨再開、有害事象への対応強化、適切な性教育の普及等について要望申し入れを3月29日に田村憲久厚生労働大臣に、4月19日に萩生田光一文部科学大臣に行いました。

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4月27日
自民党「こども・若者輝く未来創造本部」に成育医療センター五十嵐隆理事長を講師にお迎えした際に、二階俊博幹事長、下村博文政調会長、河村建夫成育基本法推進議員連盟会長と共に記念撮影。

自見(じみ) はなこ 参議院議員
 1976年、福岡県出身。筑波大学第三学群国際関係学類卒業後、東海大学医学部に入学し、平成16年に卒業。その後、同大学医学部附属病院等の勤務を経て、日本医師連盟の推薦により、平成28年に行われた第24回参議院議員選挙(全国比例区)に立候補し、初当選を果たす。令和元年9月には第4次安倍第2次改造内閣発足時に厚生労働大臣政務官を務めた。

お知らせ

210520g6.jpg自見はなこ参議院議員の活動の詳細は公式ホームページをご覧下さい。

https://www.jimihanako.jp

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