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令和3年(2021年)8月5日(木) / 日医ニュース

9都道県医師会と現下の課題等を共有

9都道県医師会と現下の課題等を共有

9都道県医師会と現下の課題等を共有

 東京オリンピック・パラリンピックに関する都道府県医師会連絡協議会が7月12日、日本医師会館でテレビ会議システムにより開催された。
 冒頭あいさつした中川俊男会長は、同日、東京都に対する4度目の緊急事態宣言が発令された他、埼玉県・千葉県・神奈川県ではまん延防止等重点措置が延長され、東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、東京オリパラ)が宣言下での開催となることに言及。「このような状況の中で、東京オリパラを開催するにはどのような課題があるのか、また、競技開催時の懸念等を洗い出し、その解決に向けた意見交換や情報共有を、競技会場を有する9都道県医師会と行うために本協議会を開催することにした」と開催の趣旨を説明するとともに、「東京オリパラを安全・安心に開催するためにも、医療人としてできることを全てやらなければならない」と強調。
 また、同協議会で浮かび上がった課題に対する必要な対応については、組織委員会に伝えるなど、日本医師会として最大限の対応を取る決意を表明した。
 協議の中では、北海道医師会から、道内での競技が無観客開催となった経緯が説明された他、サッカーにおいては、会場周辺に救護所を設置せずに通常の医療体制で対応する一方、マラソン・競歩においては、北海道救急医学会の協力等を得ながら、競技開催時間内に設けられる救護所に医師・看護師等を派遣すること等が報告された。
 宮城県医師会からは、サッカーの試合が有観客で開催される予定であることを憂慮(ゆうりょ)し、宮城県医師会、仙台市医師会、東北大学病院の連名で、村井嘉浩知事に無観客開催とする要望書を提出したとの報告があった。
 福島県医師会からは、北海道での無観客開催決定が契機となり、福島県内での無観客開催に方針転換されたことや、人流の発生等を懸念し、県医師会としてオリンピック関連イベントやパブリックビューイングの中止を求めた結果、それらのイベントも中止されたことが報告された。
 埼玉県医師会からは、選手に陽性者が発生した場合は、競技ごとに大会指定病院が定められていることの他、選手村から競技場への移動に懸念があることなどが報告された。
 千葉県医師会からは、知事との密接な連携の下に進められている、競技開催中の医療提供体制構築に向けた進捗についての報告があった。
 東京都医師会は、大会関係者宛てに「オリンピック・パラリンピック開催についての意見書」を提出し、大会を契機に、(1)感染拡大しない、(2)通常医療を圧迫しない―ことを要望したことを報告。現在、都内の感染者が急増していることもあり、いわゆる水際対策の重要性を強調するとともに、大会関係者の来場についてもできるだけ減らすことを、日本医師会から組織委員会等に働き掛けて欲しいとした。
 神奈川県医師会及び静岡県医師会からは、キャンプ時や大会期間中におけるスクリーニング検査や医療体制等について、それぞれ説明があった他、神奈川県医師会からは、各国が任命するCLO(コロナ対策責任者)について、どのような資格の人物が任命されているのか、事前の情報提供を求めていきたいとの意見があった。
 その後に行われた意見交換では、ほとんどの会場で無観客となることから、駅から会場までの「ラストマイル」における救護負担が軽減されるとの見込みが示される一方、大会関係者と一般国民との接触を遮断する「バブル方式」がうまく機能するのかといった懸念や、全国のホストタウン、事前合宿所内における感染拡大を心配する声が挙げられた。
 また、協議会の一致した意見として、東京オリパラを開催する以上、安全・安心な大会となるよう、医療者として全力で対応していくことを確認した。
 総括を行った中川会長は、協議会に参加した都道府県医師会に謝辞を述べるとともに、日本医師会への要望として挙げられた、ショートメールの一斉送信サービスを利用した情報共有システムについて、東京オリパラ期間中、開催地の医師会を始めとした各都道府県医師会に迅速に情報提供するため、運用の検討を開始する旨を示し、協議会は終了となった。

橋本組織委員会会長に連絡協議会の主な意見を説明―中川会長

210805d2.jpg 中川会長は7月19日、橋本聖子東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長と都内で会談し、書面「東京オリンピック・パラリンピック競技大会の安全・安心な開催に向けて」を手交するとともに、7月12日に日本医師会館で開催した「東京オリンピック・パラリンピックに関する都道府県医師会連絡協議会」で出された主な意見(別掲)を伝えた。
 会談の中で、中川会長は「本日、お伝えした意見は全国の医師会の統一した意見と考えて欲しい」と述べ、引き続きの感染防止対策の徹底を要望。加えて、日本医師会としても、競技会場を有する9都道県、あるいはその周辺の地域の医師会と情報を共有するためのSMSを活用したシステムを、休日夜間を問わず運用する予定であることを伝えた。
 橋本会長は選手や関係者に新型コロナウイルス感染症の感染者が出ていることに触れ、「プレーブック第3版に従って感染対策の徹底をしているが、感染者が出てしまっている。ご心配をお掛けし申し訳ない」と述べた上で、提出された意見等も踏まえ、引き続き、感染防止対策を徹底していく考えを表明。
 これに対して、中川会長は「日本医師会としても開催すると決まったからには、全国の医師会と協力し、できる限りの支援をしていきたい」と応じ、安全・安心なオリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向けて、両団体が引き続き協力していくことを確認した。

連絡協議会で出された主な意見
●午後9時以降の競技開催に伴い、夜間の人流が増加しないよう、国民に外出自粛の徹底を求めていくこと。
●選手団等の入国に際してのいわゆる水際対策の万全を期すよう、課題点の改善とルールの再徹底に取り組むこと。
●大会関係者、マスコミ等の競技会場への来場をできるだけ減員すること。
●各国が任命するCLO(コロナ対策責任者)に関する情報(例:どのような資格の方が任命されているのかなど)を取りまとめ、ホストタウンや競技開催地域の関係各所に事前に共有すること。
●宮城県においては、第4波の際に人口当たりの感染者数が全国一になった経験もあり、第5波の予兆がある中では、無観客で開催すべきこと。

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