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令和3年(2021年)9月5日(日) / 日医ニュース

新たな死因究明等推進計画における体制の構築に向けて

新たな死因究明等推進計画における体制の構築に向けて

新たな死因究明等推進計画における体制の構築に向けて

 令和3年度都道府県医師会「警察活動に協力する医師の部会(仮称)」連絡協議会が7月30日、WEB会議システムを用いて日本医師会館で開催された。
 連絡協議会は、担当の渡辺弘司常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした中川俊男会長は、日頃の活動に感謝と敬意を表した上で、「死因究明等推進基本法」が昨年4月に施行されたことを踏まえ、日本医師会としても政府の死因究明等推進本部などに参画し、新たな死因究明等推進計画の策定に携わったことなどを報告。「今後もその実施状況を検証するなど、フォローアップを図っていきたい」と述べた。

報告

 報告では、まず、渡辺常任理事が、令和2年3月に都道府県医師会を対象に行った「警察活動に協力する医師の部会(仮称)」の設置・活動状況等に関する実態調査の結果を概説。「本調査結果は国の検討会にも報告し、検視立会いの処遇の問題等、国全体で死因究明の施策を推進していくための基礎資料として活用してもらうことになっている」と述べるとともに、今後、会内委員会でも検討する意向を示した。
 花井光総務省四国行政評価支局長は、これまでの現行計画の各種施策等に関する実地及びアンケートでの調査結果を説明。現行計画は目標が定性的なものが多く、その達成度の量的な評価は難しい面もあるが、それらの結果を踏まえて、国として推進すべき施策の具体化を図り、実施状況を検証・評価することでPDCAサイクルを回すことが重要になるとした。
 また、その中核となる死因究明等推進地方協議会(以下、地方協議会)については過去・現在・未来の視点から活性化するための具体的方策を提示した。
 岩田博樹厚生労働省医政局医事課死因究明等企画調査室長補佐は、令和元年6月の死因究明等推進基本法の公布から令和3年6月に新たな推進計画が閣議決定されるまでの経緯を報告した上で、同推進計画は、3年ごとに見直し、毎年1回のフォローアップを実施することになっているとして、その概要と講ずべき施策を説明した。
 曽根明文警察庁刑事局捜査第一課検視指導室長は、死体が発見されてから解剖されるまでの流れを、死因・身元調査法の概念図を用いて概説。今後は高齢独居者が増加することに伴い、警察の取り扱う死体が増加するとの見通しを示すとともに、犯罪を見逃さないためにも必要な検査の実施がますます求められているとして、警察に協力する医師の果たす役割の重要性を強調した。

協議

 続いて、今村聡副会長が進行を務め、栃木、福島、岩手、岡山、長崎、福岡の各県医師会から事前に寄せられた提出議題に対する回答を行った。
 栃木県医師会からの在宅等で新型コロナウイルス感染症の陽性患者が死亡した場合の検案時の留意点等に関する質問には、感染防護の観点から留意すべき点として、関係学会等の見解を情報提供した通知を改めて紹介した。
 福島県医師会からのいわゆる警察医の待遇及び身分保障に対する要望には、「新たな推進計画の課題の一つとされていることから、引き続きその改善に向けて働き掛けていく」と述べるとともに、都道府県医師会に対しても地方協議会に参画の上、課題解決に向けて取り組むよう求めた。
 岩手県医師会は、①医師・警察・法医学三者の融合的繋(つな)がりの構築②死因究明、身元確認の重要性に関する学習機会の継続と社会的議論の活発化③若手医師育成と法医学解剖に対する法医学教室への手厚い支援④地域警察に対して協力する検案協力医の体制強化に対する支援―を要望。①については、連携には地方協議会が重要なステークホルダーとなるとの考えを示すとともに、今後も日本医師会として、三者の融合的繋がりの構築に努めていくとした。
 また、③については、日本医師会からの強い要望により新たな推進計画にも盛り込まれているとした上で、今後は計画が確実に実施されるためにも検証とフォローアップが重要になるとの考えを示した他、④については、検案を行う医師の適切な処遇確保に向けて、国の検討会において引き続き働き掛けを行っていくとした。
 岡山県医師会からの検案時における犯罪性の有無の判断に関する質問には、警察庁の曽根室長が、「自殺か否かを判断する際には、遺書の有無の他、関係者の周辺捜査や薬物検査・解剖を踏まえて総合的に判断することになるが、必要があれば遺留品の解析を依頼することもある」と説明した。
 長崎県医師会は、警察嘱託医会と警察活動に協力する医師の部会との関係やそれぞれの活動資金についても質問。これまで活動してきた警察医会、警察協力医会等の組織、人材等を有効活用することで、検案等の業務を行う医師と医師会との連絡が円滑に確保されるようにすることを求めるとともに、その運営費用に関しては、事業内容により公費支出が必要であることに理解を示し、国に対してその助成を要望していくとした。
 福岡県医師会からの、本協議会において警察活動に協力する医師の業務を明確にした上で、その内容等を検討するべきとの提案には、「今後、会内委員会で検討していきたい」と応じた。
 その後、渡辺常任理事が閉会のあいさつを行った。当日の出席登録者は、部会代表者等123名であった。

キーワード:死因究明等推進計画
210905g2.jpg 死因究明等推進基本法に基づき、死因究明等の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために定められたもので、令和3年6月1日に閣議決定された。「死因究明等の到達すべき水準と基本的な考え方」「死因究明等に関し講ずべき施策」等が示されている。

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