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令和4年(2022年)3月5日(土) / 日医ニュース

令和4年度診療報酬改定に関する答申まとまる

令和4年度診療報酬改定に関する答申まとまる

令和4年度診療報酬改定に関する答申まとまる

 中医協総会が2月9日、WEB会議で開催され、令和4年度診療報酬改定に関する答申がまとまり、小塩隆士中医協会長(一橋大学経済研究所教授)から、後藤茂之厚生労働大臣(代理:佐藤英道厚労副大臣)に提出された。
 これを受けて、同日の夕刻には日本医師会小講堂で三師会合同記者会見並びに日本医師会・四病院団体協議会の合同記者会見が行われ、各団体から今回の改定に対する見解が示された。

 当日の総会では、厚労省事務局からこれまでの議論を踏まえて作成された個別改定項目(いわゆる「短冊」)に具体的な点数が盛り込まれた診療報酬点数表の改正案が示され、診療・支払両側がこれを了承した。
 答申には、「近年、診療報酬体系が複雑化していることを踏まえ、患者をはじめとする関係者にとって分かりやすい診療報酬体系となるよう検討すること。」等、20項目からなる附帯意見が付けられることになった。
 答申の取りまとめを受け、診療側を代表して発言した城守国斗常任理事は、まず、新型コロナウイルス感染症との戦いが2年以上にわたって続き、医療関係者や医療機関が疲弊する中、中医協では、診療報酬で行うことのできる同感染症への対応策を講じながら、2年に一度の診療報酬改定を検討してきたことについて振り返り、「前回改定の影響の調査・検証を例年どおり行うことができなかった部分もあるものの、さまざまなやりくりも行い、何とか例年どおりの日程で答申までたどり着くことができた」と述べた。
 また、「今まさに第6波の中、日本全国、そして地域全体でコロナ禍に尽力している。医療現場が疲弊している中で、(要件等の)無理な厳格化をすると地域の医療提供体制そのものが崩壊して取り返しのつかないことになる」とした他、公益裁定に至った一部の項目については、「改定内容が医療の現場に及ぼす影響をしっかり把握した上で、何か問題があれば迅速に対応していくべき」と指摘した。

三師会合同記者会見

220305c2.jpg 三師会合同記者会見には、中川俊男会長、堀憲郎日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長が出席した。
 中川会長は冒頭、今回の改定について、「令和4年度の診療報酬改定に向け、日本医師会、日歯、日薬と共に新型コロナウイルス感染症と全力で闘っている医療従事者と医療機関を支えるため、全力を挙げて診療報酬本体のプラス改定を求めてきた」とした他、昨年11月9日に開催された国民医療推進協議会の総会において、「国民の生命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療提供体制と、新型コロナウイルス感染症対策以外の平時の医療提供体制は、車の両輪として何としても維持しなくてはならない」との決議が採択されたことを説明した。
 また、議論の過程において財政制度等審議会から"躊躇(ちゅうちょ)なくマイナス改定を行うべき"といった主張もあったことに触れ、「地域医療を守るためには、経常的な診療報酬で医療機関経営が成り立つようにしなければならない。同感染症への対応を通じて、通常の医療の余力こそが有事の際の対応力に直結することも、まさに明らかとなった」と強調した。
 改定率に対する所感としては、「昨年12月22日の厚労大臣、財務大臣合意において、国家財政が全体として極めて厳しい中、令和4年度の診療報酬改定について本体プラス0・43%と決定されたことを率直に評価したい」と述べるとともに、今回、看護職員の処遇改善のための特例的な対応にプラス0・2%が確保されたことに関しては、今後、医師、歯科医師、薬剤師を始め、広く医療従事者の処遇改善、働き方改革につながっていくことに期待感を示した。
 次に、同答申について、「新型コロナウイルス感染症への対応」「かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の評価」が大きな柱であるとの見方を示し、「同感染症流行下で医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する中、地域で身近なかかりつけの医師、歯科医師、薬剤師が患者さんに寄り添うことの大切さが改めて認識された。三師会として、今回の診療報酬改定は、かかりつけ機能を後押しするものと受け止めており、それに応えられるよう、かかりつけ機能を充実させていきたい」とした。
 公益裁定となった、(1)急性期入院医療の重症度、医療・看護必要度に係る評価項目及び該当患者割合の基準、(2)オンライン診療に係る算定要件、施設基準及び点数水準―についても言及。(1)では、「心電図モニターの管理という内科系の患者像を表す項目が削除された。現在、新型コロナウイルス感染症に対応している医療機関の経営に更なる影響を及ぼすことになり、残念だ」と述べた他、「重症度、医療・看護必要度」については、「毎回の診療報酬改定で手直しが行われている。これは、医療提供体制を確実に維持するための予見可能性を低下させるものだ」と指摘。不合理な内容については是正しつつも、今回の改定をもっていったん立ち止まり、中長期的な視野で、あるべき姿について改めて考えることを求めた。
 (2)では、対面診療との比較において、触診・打診・聴診等が実施できないものであることが明確化されたことを評価する一方、規制改革を推進する立場からオンライン診療拡大に向けた強い要求があり、医師・患者間の時間・距離要件の継続等が認められなかったことに触れた。
 また、リフィル処方箋の導入についても、受診回数の減少を通じ、医療費の抑制を企図する財政当局からの強い要請があったことを説明。「保険診療には地域医療を守るという重い役割があり、患者さんの安心と安全を最優先にしなければならない。診療報酬はその要件も含めて、そのための国民への約束であり、しっかりとした要件の下、患者さんの安全を丁寧に確認しつつ進めていくべきと考える」と述べた。
 中川会長は最後に、「答申書附帯意見では、オンライン診療やリフィル処方等、引き続き検討すべき項目が掲げられている。今後、問題があれば抜本的に修正する覚悟も辞さず、しっかりと検証していく」として、今後も状況を注視していく姿勢を示した。

日本医師会・四病院団体協議会合同記者会見

220305c3.jpg 日本医師会・四病院団体協議会合同記者会見には、日本医師会から中川会長、松本吉郎・城守両常任理事が、日本病院会から相澤孝夫会長が、全日本病院協会から猪口雄二会長が、日本医療法人協会から伊藤伸一会長代行が、日本精神科病院協会から長瀬輝諠副会長がそれぞれ出席した。
 中川会長は、同日に行われた令和4年度診療報酬改定の答申を受け、(1)新型コロナウイルス感染症への対応、(2)子ども・子育てへの支援、(3)働き方改革―についての見解を述べた。
 (1)では、日本医師会と四病協は、新型コロナウイルス感染症に全力で立ち向かっている医療機関への十分かつ適切な支援を求めてきたと前置きした上で、結果として、今回の改定以前に診療報酬の時限的・特例的な見直しが行われ、更に今回の改定でその継続及び充実が図られたことについて「評価したい」と述べた。
 また、外来については、「外来感染対策向上加算」「連携強化加算」「サーベイランス連携加算」が新設され、外来の感染防止対策を下支えする仕組みがつくられたことに言及。更に、「新型コロナウイルス感染症の流行下においては、かかりつけ医が大きな役割を果たしている」とした上で、今回の改定において、「地域包括診療料」及び加算の要件に、「予防接種にかかる相談への対応」が追加された他、「機能強化加算」の要件として「健康管理の相談に応じること」等が明確化されたことに触れ、「日本医師会として、更なるかかりつけ医機能の充実に努めていく」との意向を示した。
 (2)では、不妊治療・生殖補助医療が保険適用の対象になったことや、不適切な養育等が疑われる小児患者に対する支援体制の評価の新設、「入退院支援加算」の対象にヤングケアラー及びその家族が追加されたことを挙げ、「子ども・子育て支援に診療報酬が寄り添おうとするメッセージと受け止めている」と述べるとともに、不妊治療については答申の附帯意見にあるとおり、早急に検証・検討を行い、より適切な内容に進化させていくことを要望した。
 また、「小児慢性特定疾病」「医療的ケア児に係る主治医と学校医等との連携」も、連携先を拡大する等の見直しが行われた他、「小児かかりつけ診療料」も、診療所等の体制に応じて算定できるよう見直しが図られたことに言及し、「子ども・子育てに心を寄せる多くのかかりつけ医の支援になる」とし、期待感を表明した。
 (3)では、医師の働き方改革を更に進める方向で見直しが行われたことを評価するとともに、看護補助者の活用推進の評価の新設を始め、チーム医療全体として働き方改革が支援されつつあることに言及。
 看護職員の処遇改善については、診療報酬プラス0・2%が充てられ、来年度上半期は補助金、10月からは診療報酬で対応すること、補助金は看護職員以外のコメディカルの賃金改善に充てることもできることを報告。医療機関が追加負担する必要がないよう、できるだけ幅広く公平に処遇改善の恩恵が行き渡るような制度設計を求めた他、「療養・就労両立支援指導料」の対象疾患や対象職種が拡大され、患者の働き方や生活の支援も進んできていることを紹介した。
 その上で中川会長は、「新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、今回の改定が医療提供体制のほころびを少しでも修復してくれることを願う」とする一方、医療提供体制や患者の状態を少しでも損なうようなことがあれば、「抜本的な修正を要請する」ことを強調した。
 続いて、四病協の各団体から今回の改定に対する考えが示された。
 相澤日病会長は、「今般の診療報酬改定は、現に実施されている医療政策の方向に医療機関を向かわせようとする誘導的なもの」と指摘。今回改定が多岐にわたり、非常に膨大であることに触れ、設定された要件や基準をクリアできず、経営継続のための収入を確保できなくなる病院も少なくないのではないかとの懸念を示し、診療報酬による過度な誘導の弊害に対して警鐘を鳴らした。
 猪口全日病会長は、今回改定が急性期医療の集約の名の下に、高度急性期に対する加算が付けられたとの認識を示した他、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、「心電図モニター管理」の削除が決定されたことを問題視。更に、「地域包括ケア病棟の算定要件が厳格化されてきている」として、今回の改定を受けた上でシミュレーションを全日病としても行い、影響を見極めていく意向を示した。
 伊藤医法協会長代行は、新たに急性期の充実体制加算が設けられたこと等に触れ、急性期医療の充実の整備が進められたとして謝意を示す一方、今後、後期高齢者が増加していく中で、内科的な心電図モニターの評価が低くなることについては、内科系疾患を扱う二次救急病院への影響を懸念した。また、地域包括ケアに関しては、新たに二次救急や救急の告示が要件化されることについて、現実的な救急対応の実態を検証する必要があるとの認識を示した。
 長瀬日精協副会長は、今回改定で、看護職員の処遇改善に充当される0・2%の引き上げ分について、対象が地域でコロナ医療等、一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員となっていることに言及。その上で、医療機関の要件として、年間の救急医療加算算定を伴う救急搬送件数が年間で200件以上となっているため、現在、感染症に対応しているほとんどの精神科の単科病院が対象外となってしまうことに懸念を示した。
 更に、院内クラスター感染が発生しても、精神科病院は自院での対応を余儀なくされるケースが多い事情に触れ、看護師の処遇改善の取り扱いについて、多方面に配慮した仕組みとすることを要望した。

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