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令和4年(2022年)4月20日(水) / 日医ニュース

代表質問に対する執行部からの回答(要旨)

1 新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた公衆衛生対策・情報発信の強化について

 池田琢哉代議員(鹿児島県)からの、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた公衆衛生対策・情報発信等の強化について、日本医師会の見解を問う質問には釜萢敏常任理事が回答した。
 同常任理事はまず、日本版CDCの創設について、感染症危機管理体制を強化するため、国立感染症研究所、国立国際医療研究センター、地方衛生研究所などの機関を束ね、情報を一元化し、迅速かつ的確に対処方針を示す権限を有する司令塔の機能を担う組織の創設を、引き続き国に強く求めていく姿勢を示した。
 保健所等機能については、減らし過ぎた保健所の増設を含め、でき得る体制の拡充を実施した上で、あらかじめ他業務担当者の中で人材の養成・確保を行い、業務逼迫時に迅速に派遣し、支援できる体制を組むことを提案。また、医薬品・医療機器等の自国での製造・確保については、国家の危機管理として平時における国内生産体制整備と継続的な財政支援が必要であるとし、今後も政府に対して要請していくとした。
 更に、コロナ関連の情報に関しては、定例記者会見や担当理事連絡協議会等の開催を通じての他、ホームページや新型コロナワクチン速報、日医ニュース、理事会速報などで情報配信を行っているとする一方で、その方法には改善の余地があるとするとともに、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード等のデータや、厚生労働省から発出される事務連絡等についても可能な限り要旨を整理し、分かりやすい情報発信に努めていくとした。

2 診療・検査医療機関の逼迫状況を鑑みての施策について

 竹村克二代議員(神奈川県)からの、診療・検査医療機関の逼迫状況を鑑みた施策に対する要望については、釜萢常任理事が回答を行った。
 同常任理事はまず、新型コロナウイルス感染症のPCR検査・抗原定性検査・抗原定量検査に対する保険収載点数の引き下げに関して、日本医師会の働き掛けにより経過措置等の延長が行われた経緯を説明した上で、感染状況や医療機関の実施状況を踏まえ、医療現場の費用負担増とならないよう、引き続き国に強く働き掛けていくとして、理解を求めた。
 また、診療・検査医療機関に対する経済的支援や物資不足については、中川会長が後藤茂之厚労大臣に対し、診療・検査医療機関への抗原定性検査キットの最優先配分を訴えるとともに、ワクチン接種や検査陽性者への健康観察等の役割を担っている医療機関を支えるための財政支援を強く求めたことを説明。
 その上で、今後も診療実績に応じた財政支援を引き続き要望していく意向を示すとともに、感染防護具を含めた医療機関が必要とする物資の確保についても、今後の感染再拡大に備えて、継続して国に要請していくとした。

3 今後のコロナワクチン接種体制について

 リー啓子代議員(東京都)からの、今後のコロナワクチン接種体制に対する日本医師会の見解を問う質問には釜萢常任理事が回答。
 同常任理事は、追加接種の進捗状況を説明した上で、18歳以上の対象者全員にできる限り早期に追加接種を行うことが重要であるとの考えを示すとともに、5~11歳の小児へのワクチン接種についても、特に基礎疾患がある者や医療的ケア児の接種を優先すべきと主張していることを説明。小児の接種の安全性に重大な問題はないとする国の審議会データについて更なる周知も必要であるとした。
 その上で、ワクチン接種の推進には、会員の先生方の関与が必要であるとして地域医師会からの呼び掛けを要請するとともに、ワクチン接種により新型コロナの発症予防、重症化予防となることなど、正確な情報をかかりつけ医から丁寧に説明することについて、引き続きの協力を求めた。
 また、日本医師会では、国とさまざまなルートを通じて、迅速かつ緊密な情報交換、連携を図ってきたとして、中川会長が国の政策決定の過程で、後藤厚労大臣や内閣官房新型コロナ対策室長等と直接連絡を取り合っている他、国の各種審議会に担当役員が構成員として参画し、日本医師会の主張を反映させてきたことを説明。引き続き、全国の現場の意見等を基に、国との交渉や検討会等において主張していく姿勢を示した。

4 埼玉の医師殺人事件を踏まえて、「医療・介護現場を無法地帯にしてはならない、医療介護従事者を暴力から守る」方策につき日医の見解について

 山田謙慈代議員(広島県)からの、埼玉の医師殺人事件を踏まえた、医療介護従事者を暴力から守る方策について、日本医師会の見解を問う質問には城守国斗常任理事が回答した。
 まず、大阪における放火事件、埼玉での患者家族による立てこもり発砲事件において、命を奪われた患者と医療従事者の方々に哀悼の意を表し、今回の事件を契機として、会内に「医療従事者の安全を確保するための対策検討委員会」を設置したことを報告。
 同常任理事は、「まずは医療従事者が、危険を察知することや危険な状況になりつつあること等をはっきり認識し、そのことを周囲と共有することが重要である」とし、危険察知力、危機管理能力を高めるための研修を検討していくことを強調した。また、相談できる体制づくりに向け、行政や医師会等の関与・支援、警察との連携が重要であるとするとともに、警備会社による緊急通報システムの準備も選択肢に挙げた。
 その上で、応招義務に関して、医師と患者の信頼関係が損なわれた状況下においては、新たな診療行為を行わないことが、医師法で定める「診療を拒むことのできる正当事由」に該当することを周知していく考えを示し、国に対しても体制整備に必要な財政支援を求めていくとした。

5 医療現場における患者等からの暴言・暴力(いわゆるカスタマーハラスメント)への対策について

 平田泰彦代議員(福岡県)からの、医療現場における患者等からの暴言・暴力(いわゆるカスタマーハラスメント)への対策についての質問には城守常任理事が回答した。
 同常任理事は、患者やその家族による理不尽な主張や要求が、医療従事者に対する暴言、暴行、脅迫などへとエスカレートしている実態が各医療団体より報告されているが、そのさまざまなハラスメントが、大阪や埼玉で起きたような悲惨な事件に発展するかは予測がつかない状況にあることを憂慮(ゆうりょ)。
 日本医師会として、「医療従事者の安全を確保するための対策検討委員会」を立ち上げ、検討を開始したことを報告するとともに、喫緊の課題については、医療従事者のための相談窓口を設置することや、医師会と警察との情報共有体制を構築していくことを挙げた。
 その上で同常任理事は、医療関係者が安心・安全に働くための環境整備に向け、警備会社などによる緊急通報システムの構築など、防犯体制整備に必要な財政支援を国に求めるとともに、警察庁に対しては、都道府県警察本部が全国の医師会、医療機関からの求めに応じて、安全確保に資する支援を行うよう働き掛けていく姿勢を示した。

6 介護保険要介護認定(新規・更新)申請時の主治医意見書作成のための患者情報提供ツールの件

 三條典男代議員(山形県)からの、介護保険要介護認定(新規・更新)申請時の主治医意見書作成のための患者情報提供ツールに関する質問には、江澤和彦常任理事が回答した。
 主治医意見書の作成に当たっては、日常生活において必要な介護や手間の具体的な状況を記載することが求められることから、自施設の多職種と連携して本人・家族への聞き取りを行う等、工夫して取り組まれているとした上で、同代議員より紹介のあった熊本県における事前の患者情報提供ツール「主治医意見書のための情報提供シート」について、「各地域の実情に応じて、関わる職種との連携により、要介護認定を円滑に進める大変参考となる取り組みである」と評価。
 まずは都道府県医師会と県行政、郡市区医師会と市町村で、地域の実情に応じた連携体制を構築すべきであるとして、日本医師会として厚労省担当部局と協議し、各地域の支援をしていく意向を示した。
 また、同常任理事は、要介護認定の円滑な運営に資する好事例について更なる情報提供を求めるとともに、「主治医意見書の作成はかかりつけ医の裁量の範疇(はんちゅう)にあるため、国から自治体への通知・事務連絡とかかりつけ医の裁量に齟齬(そご)が生じないよう、厚労省と円滑な介護保険制度の運営について引き続き協議していく」として、理解を求めた。

7 日本医師会が目指す医療DX(デジタルトランスフォーメーション)とオンライン診療、HPKIの価値とは?

 伊藤伸一代議員(秋田県)は、(1)オンライン診療の活用において日本医師会が目指した目的、医療体制とは何か、(2)医療DXを進める中で、日本医師会が目指すかかりつけ医を生かした診療体制、(3)国によるかかりつけ医制度化の動きにどのように対処するのか―等について、日本医師会の見解を質した。
 長島公之常任理事は、(1)について、「オンライン診療は、解決困難な要因によって、医療機関へのアクセスが制限されている場合に対面診療を補完するもの」との、従来からの考え方に変わりはないことを強調。本年1月に改訂された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に、初診は原則「かかりつけの医師」によること、対面診療と適切に組み合わせることを記載させ、実質的な距離要件は確保されているとの認識を示した。
 そして、今後、かかりつけの医師である会員の先生方に向けた手引きを作成することを紹介した。
 (2)では、医療DXの目的は、安全で質の高い医療の提供と、医療現場の負担軽減であるとするとともに、かかりつけ医が、地域の医療介護連携の要となり、情報を把握することが可能となるよう、引き続き国に要望していくことを示した。また、「かかりつけ医」の制度化については、改めて反対の意向を示し、「かかりつけ医機能」が各地の医師会を中心として発揮できる仕組みとなるよう要請していくとした。
 (3)では、医療分野の電子署名で必要とされる、本人・医師等の国家資格の双方の確認を満たせる仕組みは、現在HPKIのみであることを強調。そのため、引き続き、全ての医師に医師資格証を配布する方針に変更はないとして、厚労省と協力しながらその普及促進に努める意向を示し、理解を求めた。

8 これからの日本の医療DXについて

 安田健二代議員(石川県)は、COVID-19パンデミックや昨今の医療をめぐる状況が日本の医療DXに変化をもたらし、医療機関にさまざまなコストや労力が掛かっているとして、日本医師会に対して、(1)導入・保守管理経費を基金や診療報酬で手当てする、(2)医療DXを先導する―ことを求めた。
 長島常任理事は、(1)について、医療DXは医療現場の費用・業務負担の軽減に役立つものにする必要があり、導入・運用の費用と業務負担が最小限となるよう、厚労省の会議で主張していることを説明。費用補助に関しては、現在、二つの基金があるものの、ランニングコストへの手当てができないことを受け、引き続き、柔軟な活用を可能とするよう国に求めていくとした。
 また、診療報酬上の評価については、日本医師会の要望により、本年4月の改定において「電子的保健医療情報活用加算」が新設されたことを報告。引き続き、その評価を求めていくとの考えを示した。
 (2)では、電子カルテの標準化や、全ての人にとって使いやすいICTの実現が必要であると指摘。日本医師会として、①日本医師会AIホスピタル推進センターの設置・稼働②日本医師会医療情報管理機構による次世代医療基盤法に基づく活動③ORCA管理機構による日医標準レセプトソフト等の医療情報システムや会員向けキャッシュレスサービス等の提供実施―を行っていることを紹介し、今後も国の支援を求めていくとした。

9 コロナ禍での医師の働き方改革の推進について

 土谷明男代議員(東京都)は、(1)医療機関の宿日直許可取得に向けた取り組み、行政への働き掛け、夜間救急医療の人材確保支援、(2)労働時間短縮に伴う勤務医の給与、(3)コロナ禍で医師の働き方改革を推進する影響―について、日本医師会の見解を質した。
 松本吉郎常任理事は、(1)について、法案成立後も厚労省の公聴会や、自民党議員連盟での講演で日本医師会の考えを説明するとともに、定例記者会見等を通じてその問題点を指摘していることを報告。医師の宿日直の特殊性にも言及し、現状の許可基準のままで労働時間外規制が始まれば、大学病院からの応援も引き揚げられ、医療提供体制の縮小につながることから、3月18日には、関係団体と連名で、厚労大臣に宿日直基準に係る要望書を提出したことを報告。引き続き、その対応策の提示を求めていくとした。
 (2)では、その影響として、大学病院の医師のモチベーション低下による人材の流出、それに伴う地域医療提供体制の崩壊のみならず、大学病院における診療や研究等の質の低下も招きかねないことを厚労省にも伝えていることを説明。
 また、(3)では、「医師の偏在対策が十分に進んでいない中での働き方改革は慎重に進めるべきであり、コロナ対応との同時進行は現実的ではない」とするとともに、地域医療提供体制に支障を来さないよう必要な支援を、引き続き国に求めていく意向を示した。

10 医師少数県における医師働き方改革と救急医療体制の維持について

 塚田芳久代議員(新潟県)からの、医師少数県における医師働き方改革及び救急医療体制の維持について日本医師会の対応を問う質問には、松本常任理事が回答を行った。
 同常任理事は、まず、二次救急医療機関への支援の必要性を強調するとともに、地域医療構想の「具体的対応方針」における再検証対象医療機関について、日本医師会として、位置付けの見直しを主張していることなどを説明した。
 働き方改革の大きな課題としては、医師の「宿日直許可」を挙げ、許可の取得ができないという声が多くあるとした上で、「許可の取得は救急、特に二次救急の確保の観点で重要」と強調。併せて、3月18日に四病院団体協議会と全国有床診療所連絡協議会と共に厚労大臣へ要望書を提出したことを紹介した。
 同常任理事は更に、地域の医療機能分化と連携が一層求められている中、時間外労働の上限規制が適用される2024年に、診療報酬・介護報酬の同時改定や第8次医療計画等が同時にスタートすることを指摘。「医療計画等による各地域での役割分担と連携強化により、二次救急医療体制の充実を図ることが必要」と述べ、日本医師会として、引き続き医師偏在対策の動向も見つつ、働き方改革は注意深く、慎重に進めるべきであることを国に訴えていくとした。

11 敷地内薬局について

 藤原秀俊代議員(北海道)からの、敷地内薬局に対する日本医師会の見解を問う質問には、宮川政昭常任理事が回答した。
 同常任理事は、まず、敷地内薬局について、「経済的、機能的、構造的な独立性が保たれていない」と述べるとともに、「機能として院内薬局と変わらない薬局であるならば保険指定する必要はなく、考え方を整理することが必要」とした。
 次に、医師と薬剤師の連携や医療機関と薬局の連携は、本来「多数対多数」の関係となるところ、敷地内薬局はほぼ「1対1」の関係となっていることを指摘。外部委託そのものであるとの見方を示した。
 また、療担規則の規制緩和等を背景に、2022年3月時点で、準備中も含めれば半数以上の国立大学が敷地内薬局を有していることを紹介。これにより、患者の経済負担が必要以上に大きくなっているとした。
 更に、診療報酬上でさまざまな対応が行われていることを説明する一方、「それらの措置も十分なものとは言えない」と強調。敷地内薬局について、「院内薬局よりも高い点数が調剤報酬として加味されていること自体、貴重な財源の浪費である」と指摘した。
 その上で、同常任理事は大病院の門前薬局の乱立や敷地内薬局の問題を踏まえ、日本医師会として、今後も薬局機能について厳しく対処していくとした。

12 令和4年度診療報酬改定を問う

 加藤雅通代議員(愛知県)からの、令和4年度診療報酬改定への日本医師会の対応に関する質問には、松本常任理事が回答を行った。
 同常任理事は、まず、今回改定では、新型コロナウイルス感染症や自民党総裁選、衆議院選挙等の影響があったとした上で、財務省等の主張に対しては、すぐに記者会見で反論してきたことを説明。併せて、「第16回国民医療推進協議会」による決議及び自民党議員連盟「国民医療を守る議員の会」の提言が大きな力添えとなったことも紹介した。
 そうした動きの中で日本医師会は、繰り返し「躊躇なくプラス改定」とすることを粘り強く訴えるとともに、政府・与党に、地域の医療提供体制や全国の医療機関、医療従事者等が置かれた状況について理解を求めてきたとした。
 同常任理事は、「地道な取り組みにより、診療報酬本体はプラス0.43%となり、診療報酬本体には一定の財源が確保された」と述べ、代議員、都道府県医師会及び郡市区医師会の協力に感謝の意を示した。
 その上で、「改定率は必ずしも満足するものではないが、厳しい国家財政の中、プラス改定となったことは評価している」とした他、要望してきた地域医療の確保、質の向上のための財源としてプラス0.23%が含まれているとして、理解を求めた。

13 「オンライン初診」の恒久化とリフィル処方箋の今後について

 沖中芳彦代議員(山口県)は、「オンライン初診」の恒久化とリフィル処方箋の今後について、安易に拡大されないように、コストではなく医療の質を担保する方向での対応を要望した。
 城守常任理事は、まずオンライン診療について、中医協では、(1)対面診療の実効性担保のため、一定時間内の通院や訪問可能な患者に利用を限定する、(2)実施割合に係る上限設定を維持する―ことを主張するとともに、点数に関しても「対面診療でしか実施し得ない診療行為があり、同等の評価とすることはあり得ない」と指摘してきたことを説明。今回改定による影響の調査・検証を行い、患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させる事象が生じたりした場合には、速やかに診療報酬要件の見直しを要請するとした他、日本医師会で「手引き」を作成し、公表することを明らかにした。
 リフィル処方に関しては、「医療機関の通院負担」を減らすことを導入の狙いとしている考え方には誤解があると指摘。再診の必要性や意義、処方権の実情について触れた上で、医師が定期的に患者を診察し、医学的管理を行うことがまさに「安心・安全で質の高い医療」であるとして、不適切な長期処方は是正すべきと主張。また、医学管理の重要性を鑑み、慎重かつ丁寧に検討してもらうよう周知を続けるとした。

14 今期の診療報酬改定(初診オンライン・リフィル処方箋の導入)について

 濱島高志代議員(京都府)は、今回の診療報酬改定において、有効性・安全性よりも利便性・経済効率が優先され、初診オンラインの恒久制度化、リフィル処方箋が保険導入されたことに関して、日本医師会の考えと医師会員が行うべきことについて質問した。
 城守常任理事は利便性・経済効率が優先されたことや、医療政策がその時々の権力構造におもねる形で決定する傾向が強まっていることに強い問題意識を表明。決定プロセスについては、詳細な制度設計は中医協の場において、有効性・安全性を確認し、医療提供体制にゆがみが生じないよう検討されてきたが、近年は中医協外で詳細な制度設計にまで言及されるテーマが散見されることを指摘し、診療報酬に関するテーマは、中医協で主体的な議論を踏まえて決定されるべきと主張した。
 決定要因に関しては、保険収載の決定の際に「利便性」という判断基準の影響が顕著となっており、その重要性に理解を示した上で、最も重要な判断基準は有効性・安全性であることを改めて認識するよう中医協で強調したと説明。
 最後に、医師会員が行うべきことに関しては、政治と交渉するために、今一度日本医師会の結束を見せる必要性があるとするとともに、全ての医療政策を国民の生命・健康に資するものにするために、今夏の参議院選挙での大勝利が何より必要であると述べ、協力を求めた。

15 リフィル処方箋の導入とオンライン診療について―医師の裁量と自覚―

 「医師の裁量」「医師の質の維持」と組織率向上に対する日本医師会の考え方と、今後の進め方を問う廣澤信作代議員(埼玉県)からの質問には松本常任理事が回答した。
 同常任理事は、「医師に改めて医業の尊厳と責任に対する自覚を促していくことは医師の裁量を守り、医療の維持向上にもつながる」として、「医の倫理綱領」等の更なる周知に努める考えを表明。全国の医師会に対しては、日本医師会に未加入の郡市区等医師会員が約3万2000人いることから、日本医師会までの入会を規定する定款の改正などの対応を求めた。
 加えて、組織強化に向けたパイロット事業を開始したことを説明し、「本事業の詳細を全国に発信する中で、対応の強化を求めていきたい」とした。
 医学生の時からの教育が重要との指摘に対しては、(1)『ドクタラーゼ』に医師の裁量や高い倫理観等を醸成するための企画も検討するなど、内容を更に充実させる、(2)都道府県医師会が地元の医学部等で講義される際に用いるようなコンテンツの検討―を行うとした。
 その上で、同常任理事はわが国の医師を代表する唯一の団体としての矜持(きょうじ)をもって、質と数の両面から組織強化に資する多面的な取り組みを鋭意推進していく意向を示し、理解を求めた。

16 後発医薬品メーカーの不正に端を発する供給不足問題について

 安東範明代議員(奈良県)からの後発医薬品の供給不足問題に関する質問には宮川常任理事が回答した。
 同常任理事は本問題の原因として、(1)後発医薬品メーカーが多すぎる、(2)製造工程が多国籍で多数の企業が関与する複雑なサプライチェーンや、原薬等を中国など海外に依存している―ことを挙げるとともに、「後発医薬品を始めとした医薬品の安定供給は、製造に不備のあった企業に限られた問題ではなく、患者の生命と健康に関わる安全保障の問題として、業界全体で取り組むべき」と強調。
 日本医師会として、日本製薬団体連合会に早急な対応を求めたところ、3月25日に日本製薬団体連合会及び日本製薬工業協会の連名により、最大限の対応を実施・継続する旨の回答を得たことを明らかにした。その上で、今後も国及び企業の取り組みを注視し、継続的に進捗報告を求めるとともに、医薬品の供給状況の速やかな改善に向けて、国に対して提言していく考えを示した。
 国が掲げる後発医薬品の数量シェアを80%以上とする目標に関しては、後発医薬品を中心とした医薬品不足が続けば、その達成は難しいとするとともに、安全な後発医薬品の安定供給という本来の姿であれば、このような数値目標を立てる必要もないとした。

17 後発医薬品の供給不足への対応について

 後発医薬品の供給不足への対応に関する小牧斎代議員(宮崎県)からの質問には、宮川常任理事が回答した。
 今回の後発医薬品の問題については、製造や品質に関する法令遵守を怠ることや、供給体制の不備が発端にあることを説明し、日本医師会として引き続き、適切な対応を求めていくとするとともに、発注量の精査や代替薬の選択に資するような情報が提供されるよう、厚労省及び製薬業界に対して強く働き掛けていくとした。
 今後の医薬品の安定供給については、「日本医師会は信頼される後発医薬品が適切に流通されないまま、使用を無理に促進するべきではない」という立場であることを示した上で、供給不安の根本的な解決策は、供給停止や出荷控えとなっている医薬品の供給再開・増産に尽きると強調。製薬業界全体として、後発医薬品の品質確保、安定供給に対する責任を全うすべきであるとして、そのための取り組みの強化を求めているとした。
 また、安定供給に資する対策の一つとして、長期処方を控えることを挙げるとともに、「医薬品が供給されないことは何よりも患者の不利益であり、供給がはっきりしない状況は医師にとっても納得しがたい」と述べ、国に対しても、企業への増産や製造再開に係る指導、地域での医薬品供給の偏在解消等を引き続き求めていくとして、理解を求めた。

18 日医の発信力強化を

 橋本寛代議員(兵庫県)からの「社会の誤解や若手医師に対する日本医師会の発信力の強化」を求める質問には、城守常任理事が回答した。
 同常任理事は、コロナに関する民間の医療機関や開業医の報道に関する誤解や批判には、中川会長始め担当役員が記者会見で反論するだけでなく、報道番組にも積極的に出演し現状を伝えることで、理解が進みつつあると説明。
 また、若手医師に対する広報については、ネットメディアに対する情報発信の具体的な方策を、広報委員会の意見も聞きながら検討を進めていく考えを示した。
 対外広報については、日本医師会公式YouTubeチャンネルを開設し、国民のワクチン接種に関する疑問や不安に答える動画や、国民向けシンポジウムの模様を掲載していること、また定例記者会見が以前より幅広くメディアで配信されていることを説明。一方で「日医ニュース」や「『日医君』だより」については、「伝達方法を改善するとともに、国民に対する周知方法等についての検討をしていきたい」と述べた。
 最後に、同常任理事は、「コロナ禍において、日本医師会に対する国民の信頼度や期待度がこれまで以上に高まる中で、発信力の強化は不可欠なことである」として、引き続きの支援と協力を求めた他、組織力強化における広報の役割についても検討していく意向を示した。

※外字は代替文字で標記しております。

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