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令和4年(2022年)12月15日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

新型コロナウイルス感染症の現況等について

 松本吉郎会長は12月14日の定例記者会見で、(1)新型コロナウイルス感染症の感染状況並びにワクチン接種、(2)季節性インフルエンザとの同時期流行、(3)感染症法等の改正法の成立、医療計画における感染症対策に関する議論―について、日本医師会の見解を説明した。

 (1)では、まず、松本会長が新型コロナウイルス感染症の感染状況について、「爆発的な上昇ではないものの、全国的に新規感染者数は多く、病床使用率は上昇傾向にあり、感染者数が多い地域などでは5割を上回っている」ことを報告。BQ.1系統やXBB系統などのオミクロン株の亜系統を含めて増加していることに注視が必要であるとして、改めて、感染拡大の防止に向けて、屋内での効果的な換気を行うこと、基本的な感染防止対策を継続することに加え、ワクチン接種の一層の推進を呼び掛けた。

 オミクロン株対応ワクチンの接種状況については、首相官邸の公表データ(12月13日)から、12歳以上のオミクロン株対応ワクチン接種率は全体で26.4%であり、そのうち、65歳以上の高齢者は42.3%であるとし、12月13日の1日当たりのワクチン接種回数は約108万回となり、少しずつ接種率が上がってきたことを説明した。

 また、厚生労働省が11月22日に開催した自治体向け説明会において、初回接種(1回目・2回目)に使用している従来型ワクチンは、年内で国からの供給が終了される予定ではあるものの、これまでに各自治体に配送されたワクチンと年内までに配送される予定のワクチンにより、令和4年度末までは従来株ワクチンが十分に供給される状況にあることを報告。その上で、松本会長は、「年末年始に向けて、社会経済活動の活発化による接触機会の増加等による感染拡大が懸念される。改めてワクチン接種の推進について日本医師会でも積極的に呼び掛けていく」と強調した。

 (2)では、新型コロナと季節性インフルエンザの同時期の流行に備えて、日本医師会は、都道府県医師会長及び郡市区医師会長に対し、年末年始を含めた発熱外来診療体制の拡充を要請し続けてきたことに言及。12月9日に厚労省より公表された各都道府県の計画策定の結果では、47都道府県の最大診療能力を積み上げると、政府の想定を大きく上回るおよそ90万人分にも達するとし、松本会長は、「こうした体制を築き上げたのは、ひとえに、各地域の医師会、行政、医療機関等の関係者の皆様のおかげである」と謝意を述べるとともに、「築き上げられた体制を維持していくためには、検査キット等の確保や財政面も含めた継続的な支援も必要であることから、引き続き政府に働き掛けていく」との姿勢を示した。

 (3)では、12月2日に、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案」が、参議院本会議で可決・成立したことを受けて、松本会長は、「今回の感染症法等の改正法の成立を受けて、コロナ対応の教訓である役割分担の重要性に今後は重きを置いていくべき」との認識を示した。

 その上で、今回の改正法では、都道府県と医療機関との協定の締結や、その協定に基づく要請に、「正当な理由なく」従わなかった場合の医療機関名の公表や地域医療支援病院等の承認取消といった規定に着目されがちであるが、全国の医療現場では、コロナ対応などに大変な努力を重ねており、「承認取消」の規定に不安を感じている関係者も多くいると指摘。「大切なことは、平時から役割分担と連携をしっかりと進め、各医療機関が自院の機能を発揮して、それぞれの役割に対応できる体制を築き上げ、かつ、適宜見直していくことである」と述べるとともに、「どのような場合に、いかなる感染症対応を担うかを関係者間で協議を行い、各都道府県行政がその内容をしっかりとくみ取り、更に、実際に発生・まん延した感染症の特性に合わせて柔軟に対応していくことが、現場の方々の不安を解消し、誇りをもって対策に当たって頂くことにつながる」との考えを示した。

 更に、今回導入される都道府県連携協議会についても触れ、都道府県行政と医師会など関係団体間の連携や都道府県と保健所設置市との連携など重要な役割を担い、各地域の実情に応じた予防計画を立案するとともに、令和6年4月施行する第8次医療計画とも整合を図りながら、地域の体制が整備されていくことに期待を寄せた。

 また、日本医師会の提案により、次期医療計画の5疾病5事業の6番目の事業として「新興感染症対策」が加わるばかりでなく、救急など他の疾病・事業でも感染症対策との関連が大変重要視されるようになったとした他、厚労省の検討会の議論の中では、日本医師会担当役員が都道府県連携協議会の重要性を主張するとともに、高齢者への対策の必要性を唱えたことを報告。超高齢社会において、高齢者は当初から介護やリハビリの視点が必要であり、多職種連携が重要であることから、高齢者施設への対策をよりクローズアップし、平時から協力医療機関をマッチングし、早期に治療介入できるような体制づくりを築くべきであるとの考えを示し、「医療計画に関する国の基本方針などにも、そうした観点を盛り込むべきである」と主張した。

 最後に松本会長は、来年以降いわゆる日本版CDCや司令塔機能に関する法整備が行われることにも触れ、その際には1.科学的根拠に基づく未知の感染症への対処方針の決定2.感染防御法、診断や治療法などの迅速な情報提供3.検査キット、医薬品やPPEの医療現場への十分な配付4.ワクチンの確実かつ偏りのない供給―など、国の一元的な対応が可能となる体制づくりを求めた。

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 会見に同席した釜萢敏常任理事は、まず、全国の感染状況について、都道府県でのバラツキはあるものの、全体としては徐々に増加しており、年末年始もそうした状況の中で迎えることになるとの見通しを示した。

 次に、今後の感染対策について、政府のアドバイザリーボードや各種分科会の議論を踏まえて対応が行われていくことを説明するとともに、その際には新型コロナウイルスは依然として不明瞭・不明確な部分が多いため、そうした中で対策を講じていく難しさがあるとした。

 その上で、改めて12月末までにオミクロン株対応ワクチンの接種を進めることの重要性を強調。また、高齢者施設や介護施設等を含め、医療現場において、現状では、「感染防止対策を特段大きく緩めることや、対応をすぐに変えることは難しい」との見方を示すとともに、急な変更による感染拡大と病床ひっ迫のリスクがあることから、医療提供者側の立場としては、今後対応を変更していく際には段階を踏んで徐々に変えていくべきとした。

 その他、釜萢常任理事は、新型コロナの感染法上の位置付けの議論に言及し、政府、国民、経済団体や医療団体といった関係者の合意が得られている状況ではないと説明。「ある時点で国が何らかの決断をすることにはなるが、その運用に関しては無理のない形で変更していくことが望ましい」とした。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

問い合わせ先

日本医師会 健康医療第2課、地域医療課 TEL:03-3946-2121(代)

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