日医ニュース 第992号(平成15年1月5日)
「四師会共同声明」発表 3割負担凍結で国民運動を展開 |
日医は,昨年の12月11日,日本歯科医師会,日本薬剤師会,日本看護協会とともに,都内のホテルで統合戦略本部の会合を開き,「被用者保険3割自己負担の実施凍結」をはじめとする4項目について,連携して国民運動を展開することを決議した.同日午後,四師会の役員が厚生労働省内の記者クラブにおいて記者会見を行い,「四師会共同声明」を発表した.(関連記事) |
会見者は,糸氏英吉日医副会長,梅田昭夫日本歯科医師会専務理事,岡本彰日本薬剤師会副会長,岡谷恵子日本看護協会専務理事の四名であり,まず,糸氏副会長が,次のように説明した.
「平成十四年四月に,マイナス二・七%という診療報酬改定に応じたのは,患者負担増をこれ以上増やさないためのものであったが,にもかかわらず,政府は平成十五年度から被用者の三割負担を実施することを決めた.
危機だといわれている政府管掌保険の収支状況について,われわれは検証を行った.その結果,二〇〇二年度の単年度収支は,診療報酬の引き下げ,それに伴う受診抑制を折り込むと,三千百六十二億円の赤字になるが,事業運営安定資金は千九百九億円のプラスを維持する.二〇〇三年度は,単年度収支も四千九百九十五億円の黒字,事業運営安定資金は六千九百四億円のプラスとなる.結局,二〇〇二〜二〇〇四年度で,合計一・五兆円の財政効果があり,したがって,三割負担導入の必要はないと考えている.
サラリーマンにとっては,総報酬制導入によって,保険料が増額になるのに,さらに自己負担増になると,よほど重症にならないと受診しなくなる.社会の中心となるべき人の健康が心配である.三割の自己負担については凍結してほしい.
また,高齢者の自己負担についても,低所得者の自己負担の上限額が,月額三千円から一万二千円に引き上げられた.在宅で療養しているお年寄りは,三〜四倍の自己負担増という危機的な状況になっている.高齢者のうち,特に,低所得者に関しては改善してほしい.これは財政的な問題ではなく,生命のやりとりの問題となりつつある」
さらに,特区構想について,糸氏副会長は,「医療への株式会社参入に失敗したので,医療特区という構想が出てきているが,人の生命を地域で経済活性化の実験材料にするなどもってのほかである.外国資本が日本の医療へ参入したら,個人データが海外に流出する可能性があるし,弱肉強食の医療制度になってしまう.生命・健康にかかわることであるから,厳しい制限があるのは当然のことである」と述べた.
つづいて,梅田日歯専務理事が「声明には全面的に賛成している.日本看護協会も参加したのは意義があると考えている」と述べ,岡本日薬副会長は「四項目とも全面的に賛成している」と,同会の立場を明らかにした.岡谷日看協専務理事は「医療分野では市場原理を徹底するのではなく,人間の尊厳というものを重視してほしい」と,患者に最も身近に接している立場からの意見を表明した.
糸氏副会長は,会見後の質疑応答で,今後は可能な限り,四団体が連携して行動し,国民のための医療制度改革が行われるように,国民にアピールしていくことを明らかにした.
現在,政府においては、本格的な少子高齢社会に対応する医療制度の構築に向けて,聖域なき構造改革を断行している. |