日医ニュース 第998号(平成15年4月5日)

第108回日本医師会定例代議員会
坪井会長
「日医が果たすべき役割は重大」

 第108回日本医師会定例代議員会および第61回日本医師会定例総会が,3月30日に日医会館で開催された.当日は平成15年度日医予算のほか禁煙日医宣言,追加議案,緊急動議などすべてが可決成立した.

 午前九時三十分,関原敬次郎議長の開会宣言,あいさつの後,議席の指定,定足数の確認(定数三百三十八,欠席六,出席三百三十二),議事録署名人指名[中嶋ヒロシ氏(三重県),粟津俊彦氏(長崎県)],ブロック選出の議事運営委員会委員八名の紹介など,所定の手続きが行われた.
 冒頭,坪井栄孝会長が,所信を表明し,つづいて,糸氏英吉副会長が,平成十四年度会務の概要を報告.まず,全員起立して,平成十四年度(二月末日現在)に物故された会員千四百十五名の霊に対して黙トウを捧げ,議事に入った.
 まず,第一号議案「平成十四年度日本医師会会費減免申請の件」が上程され,石川高明副会長の説明後,賛成多数で可決した.
 次いで,第二号議案「平成十五年度日本医師会事業計画の件」,第三号議案「平成十五年度日本医師会予算の件」,第四号議案「平成十五年度医賠責事業特別会計予算の件」,第五号議案「平成十五年度日医総研事業特別会計予算の件」,第六号議案「日本医師会会費賦課徴収の件」を一括上程,糸氏・石川両副会長が提案理由を説明し,その後,詳細な審議を行うため,予算委員会(二十五名で構成)に付託された.
 さらに,第七号議案「禁煙推進に関する日本医師会宣言(禁煙日医宣言)の件」が上程され,糸氏副会長による提案理由説明の後,表決が行われ,賛成多数で原案どおり可決.また,第八号議案「イラク戦争の即時終結を求める決議の件」が追加議案として上程され,石川副会長が説明を行った後,代表質問と個人質問に入った.
 午後二時三十五分,役員会議室において予算委員会が開催され,一方,大講堂では質問が継続された.
 午後四時五分,議事を再開し,予算委員長(凌俊朗氏,佐賀県)から付託された議案の審議結果が報告され,第二号議案から第六号議案は賛成多数で可決された.つづいて,第八号議案の審議結果も報告され,賛成多数で可決.その後,「医療特区構想に関する緊急動議」が提出され,質疑の後,了承された.再び個人質問が行われ,午後四時五十五分終了.
 引き続いて,第六十一回日本医師会定例総会を開催.
 (一)庶務及び会計の概況に関する事項,(二)事業の概況に関する事項,(三)代議員会において議決した主要な事項について,坪井会長の報告があり,総会は閉会となった.

イラク戦争の即時終結を求める決議

 さる三月二十日イラクへの武力攻撃が開始された.
 日本医師会は,いかなる理由があろうとも戦争の悲劇を看過できない.
 この戦争において生物・化学兵器や超大型高性能爆弾などの大量殺戮兵器が使用されることとなれば,おびただしい人命が失われることは避けられない.
 世界唯一の原爆被爆国の医療人として即時終結を強く求める.
 右 決議する.

 平成十五年三月三十日

第百八回日本医師会定例代議員会

医療特区構想に関する緊急決議

 日本医師会は,現在,小泉内閣が推進している医療特区構想に断固反対する.
 以上,決議する.
 (理 由)
 日本医師会は,日本の医療にアメリカのイデオロギーを導入し,医療特区における株式会社の医療への参入,混合診療の容認,外国人医師の診療許可など日本の医療制度を根幹から崩壊に導くことは絶対に容認できない.
 国民の健康,身体,生命を市場原理の俎上にさらし,医療の中に豊かな者と豊かでない者との差別を持ち込むことは,日本の医療に長年責任を持ってきた学術専門団体である日本医師会として,断じて許すことができない.
 このことを閣議決定によって推進しようとする小泉内閣に対して猛省を促すものである.

 平成十五年三月三十日

第百八回日本医師会定例代議員会

代表質問

 ブロック代表質問は七件で,以下のとおりである.
 中川俊男代議員(北海道)は日医の組織力強化について質問を行い,石川副会長が,「組織の世代交代については未来医師会ビジョン委員会で活発な議論を展開していただいており,日医執行部の世代交代も進めている」と答弁した.
 若林明代議員(近畿・大阪府)の「医療制度改革について」に対して,坪井会長は,「財務省との戦い,管理医療との闘いで大変である」としながら,戦略としては,議員,ジャーナリストやマスコミ,国民などの味方を増やす等,地道な努力が必要と回答した.
 宝住与一代議員(関東甲信越・栃木県)の「三割負担凍結と日医執行部の責任」は,坪井会長が,「三割負担凍結論議は,広い視野と戦略が必要で,勝負を急がず,そのような流れのなかで責任問題は考えていく」と述べた.
 篠川賢久代議員(中部・富山県)は,「日医医賠責保険」について質し,石川副会長から日医医賠責保険制度検討委員会で詳細に検討した結果であるとの回答があった.
 藤原淳代議員(中国四国・山口県)の「医療保険制度の再編・統合」に対し,青柳俊副会長は,「保険者の再編・統合は国民にとっては,負担と給付の公平が図れるが,今の厚労省案では不透明.どんな形にしろ,国庫負担や企業負担を国民に転嫁する再編・統合には断固反対する」と述べた.
 唐澤ヨシ人代議員(東京・東京都)の「医療制度改革と規制緩和における医師の裁量と責任」に対して,坪井会長は,「われわれには専門性,裁量権があることを主張し,安全で平等な医療の構築を完遂するための理念を貫かなければならない」と答弁.
 嶋津義久代議員(九州・大分県)の「診療所機能の評価と活性化」に対し,糸氏副会長は,国民に,「かかりつけ医」を持つことの重要性を啓発するとともに,国に対しても診療所の地域医療に占める大きな役割をもっと高く評価させるべく努力していくと述べた.

個人質問

 午後二時二十五分,個人質問に入る.質問件数は十四件.

  1. 宮城信雄代議員(沖縄県)「日本医師会年金制度」について,宮坂雄平常任理事は,「日医年金は自分の年金を自分の積立金で賄う制度.三%の補償利率を一・五%に変更すれば,安定運営は可能」と答弁.
  2. 新美明達代議員(愛知県)「日医総研の役割」
  3. 原中勝征代議員(茨城県)「大学派遣医の撤退と地域医療」
  4. 久野梧郎代議員(愛媛県)「病院の医師標欠問題」につき,西島英利常任理事は,「標準医師数算定後の端数切り上げは不合理.行政当局と話し合い中」と説明.
  5. 犬尾博治代議員(長崎県)「日医の医療法十三条撤廃への取り組みを求める」に対して,星北斗常任理事は,「有床診療所に関する委員会で議論し,速やかに結論を出したい」と述べた.
  6. 碓井静照代議員(広島県)「株式会社の医療への参入に反対する」について,櫻井秀也常任理事は「社会保障の確立こそ国の責任という考えがまったくない人が担当相というのは国民の不幸」と切り捨て,坪井会長は「どんなことがあっても反対していくことに変わりはない」と強調した.
  7. 植田洋明代議員(奈良県)「ドクターフィーにおける時間概念の導入と自立投資の基準設定」
  8. 谷澤義弘代議員(兵庫県)「高齢者医療制度と介護保険の関係」
  9. 斎藤修弥代議員(北海道)「日本医師会の会員資格を一元化すべき」
  10. 森靖博代議員(神奈川県)「生活保護者の医療に係わる証明書・意見書等の有料化」
  11. 佐々木繁代議員(新潟県)「民事事例に対する行政処分」
  12. 上埜光紀代議員(北海道)「一般病床と療養病床の病床区分」
  13. 岩砂和雄代議員(岐阜県)「日医常任理事会と各ブロック医師会との意見交換の継続実施」
  14. 藤村伸代議員(埼玉県)「日医執行部の基本姿勢」

 なお,事前の議事運営委員会で発言が予定されていた四題,石島弘之代議員(茨城県),富田有祐代議員(埼玉県),鈴木弘祐代議員(千葉県),雪吹周秀代議員(神奈川県)については,今回限りの例外的な措置として,日医雑誌において,誌上回答の形で掲載すると議長から発言があった.


日医ニュース目次へ