日医ニュース 第909号(平成11年7月20日)

日医総研
被用者保険の財務的研究
資 料 版

平成11年6月4日


1.研究の目的

この研究は,被用者保険の財務的な全体像を明らかにすることを目的とした.財務的な全体像とは,以下のような内容を想定した.

◇保険料の徴収から医療費等の支払に至るお金の全体的な流れ
◇各保険者および支払基金の会計上の問題点の把握
◇各保険者および支払基金の財務的な健全性の評価 等

2.研究の方法

 各保険者および支払基金の平成8年度の事業報告書から財務の部分を観察し,考察し再計算を実施して結果を求めた.結果は以下の項目として記述した.
I.被用者保険の財務状況
1.政府管掌健康保険の財務状況  
2.組合管掌健康保険の財務状況  
3.船員保険の財務状況  本紙では結論以外省略
4.国家公務員共済組合の財務状況
5.地方公務員共済組合の財務状況
6.私立学校教職員組合の財務状況
II.支払基金の財務状況(別途報告予定.)

3.結論

(1)被用者保険全体について

◇医療保険の財源の問題は,医療給付費のみを限定的に論じて解決する問題ではない.
◇経常収支の赤字と損益計算の赤字とは異なるが,しばしば混同して使用されている.
◇ストックを含めて議論する必要がある.
◇企業会計の複式簿記を導入する必要がある.
◇決算の迅速化と情報開示をすすめる必要がある.

(2)政管健保

◇現状は破産状態
◇組合健保と比較すると被保険者一人当たりの徴収額は6%低く,医療給付費は19%多い.これが破綻の原因.この問題は,組合健保との被保険者の構造の違いによって生じている.
◇政管健保の経営は,速やかに収入の増加を図らない以上,改善しない.
◇組合健保との合併を行えば問題の解決は比較的容易になる.

(3)組合健保

◇経常収支では赤字になっているが損益計算ではまだ黒字を維持している.
◇3.2兆円にも及ぶ準備金や積立金の厚い内部留保があるにもかかわらず,この積極的運用が図られていない.
◇企業会計の考え方を活用して,含み資産や,累積利益を活用して,余裕のあるうちに改革を急ぐべきである.
◇医療機関,保養所などの付帯事業をやめる等のリストラが必要.
◇健保連の機能強化を図り,財産運用や弱小組合対策等に指導力を発揮すべきである.

(4)船員保険

◇疾病,年金等区分経理されているが,疾病部分のみ赤字,疾病部分以外は利益が出ているので,固定費の案分次第で変わる.

(5)共済組合

◇10以上に区分経理が行われている.疾病の短期経理のみ赤字.
◇固定費の案分次第で黒字化する.
◇小さな組織ごとに共済組合を維持する時代かどうか疑問.


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