閉じる

平成28年(2016年)1月5日(火) / 日医ニュース

「みんなで見守る子どもの成長」をメインテーマに開催

「みんなで見守る子どもの成長」をメインテーマに開催

「みんなで見守る子どもの成長」をメインテーマに開催

 平成27年度(第46回)全国学校保健・学校医大会(日医主催、愛媛県医師会担当)が昨年12月5日、「みんなで見守る子どもの成長」をメインテーマとして、松山市内で開催され、日医からは横倉義武会長を始め、今村定臣・石川広己・小森貴・道永麻里各常任理事が出席した。
 当日は、午前に、「『からだ・こころ(1)』学校健診・学校教育・生活習慣病他」「『からだ・こころ(2)』アレルギー・学校検診・感染症」「『からだ・こころ(3)』運動器検診・漏斗胸」「耳鼻咽喉科」「眼科」の5つの分科会が行われ、各会場では研究発表並びに活発な議論がなされた。
 引き続き行われた都道府県医師会連絡会議では、北海道医師会を次期担当とすることを決定。長瀬清北海道医師会長からは、次期大会を「みんなで築こう子どもたちの未来─考えよう学校医の果たす役割」をメインテーマとして、平成28年10月29日に札幌市内で開催する旨の説明が行われた。

学校保健活動に対する長年の貢献を顕彰

 午後には、まず、開会式と表彰式が行われた。
 開会式であいさつした横倉会長は、「社会環境の急激な変化が子ども達の心身にさまざまな影響を及ぼし、その課題は一層複雑化、深刻化している。子ども達が直面する多くの課題解決のためには、学校保健関係者、家庭、地域が一丸となった取り組みが不可欠である」として、改めて学校保健が果たす役割の重要性を強調。
 参加者に対しては、「学校保健安全法施行規則の改正に伴い、平成28年4月から新制度での健康診断がスタートすることになるが、本大会を通じて、学校保健並びに学校安全活動の重要性を再認識して頂き、なお一層の活躍をお願いしたい」と述べた。
 表彰式では、長年にわたり学校保健活動に貢献した中国四国ブロックの学校医(9名)、養護教諭(9名)、学校関係栄養士(8名)の代表者に対して、横倉会長から表彰状と副賞を、久野梧郎愛媛県医師会長から記念品をそれぞれ贈呈。
 受賞者を代表して上田泰雄氏からは、「本賞の受賞を機に、子ども達のこころとからだの健康のため、複雑化するさまざまな課題に対して決意を新たに取り組んでいきたい」との謝辞が述べられた。

シンポジウム 「学校保健における小児慢性疾患」

 引き続き、「学校保健における小児慢性疾患」をテーマとしたシンポジウムが行われた。
 「小児の慢性疾患治療の現状と課題:小児がんを中心に」と題して基調講演を行った石井榮一愛媛大学大学院医学系研究科小児科学教授は、小児期の疾患の多くは、急性疾患であるが、幼少期から長期にわたり治療が必要な慢性疾患もあると説明。小児がんなどの慢性疾患は、医療だけでなく若年者の社会的、教育的、就業関連のニーズ全般にかかわる問題であることから、今後は医療者や家族との連携体制、学校や社会の役割の明確化、医療給付を含む社会制度の改革などが求められるとした。
 4人のシンポジストによる発表では、まず、檜垣高史愛媛大学大学院医学系研究科地域小児・周産期学教授が、学校現場における子どもの突然死を予防するために必要なこととして、(1)学校心臓病検診の精度の向上(2)発症例に対する適切な対応(3)学校救急の意識の向上─を明示。その実現のための愛媛県における取り組みとして、「AED設置を含めた学校救急体制の整備」や「チームによる連携トレーニング」などを紹介した。
 楠目和代愛媛大学大学院医学系研究科地域救急医療学准教授は、この30年間で劇的に増加している小児のアレルギー疾患について解説。中でも食物アレルギーは、頻度だけではなく重症度も上がってきているとして、文部科学省から出された「学校アレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」「学校生活管理指導票(アレルギー疾患用)」を紹介するとともに、愛媛県で取り組んでいる小児食物アレルギー対策事業について説明した。
 竹本幸司住友別子病院主席小児科長は、小児慢性特定疾患制度の対象となる内分泌疾患・糖尿病の中で、学校生活時間中に治療や運動制限等の注意が必要となるものとして、(1)中枢性尿崩症(2)甲状腺機能亢進症(バセドウ病)(3)先天性副腎皮質過形成症(4)軟骨異栄養症(軟骨無形成症)(5)1型糖尿病─の5つの疾患を挙げ、その概要と求められる具体的な対応策について解説を行った。
 鈴木由香松山赤十字病院小児科副部長は、小児慢性特定疾患として指定されている64の神経・筋疾患の中から、児童・生徒に頻度が高く問題になりやすい疾患であるてんかんについて、正しい知識を持つことで偏見や差別をなくすことができ、緊急時の対応にもつながると説明。また、知的障害、発達障害、起立性調節障害等については、「不登校に大きく関係しており、医療者と学校との連携が最も重要である」と述べた。

特別講演 「ピロリ菌検査の学校検診への導入:胃癌撲滅にむけて」

 その後の特別講演「ピロリ菌検査の学校検診への導入:胃癌撲滅にむけて」では、藏原晃一松山赤十字病院胃腸センター消化器内科部長が、まず、ピロリ菌診療の現状について、平成12年以降、ピロリ菌と胃がんとの因果関係が明らかとなったことで、胃がんの発症予防を目的としたピロリ菌除菌療法の有効性が確立されたこと、平成25年にピロリ菌感染胃炎に対する除菌療法が保険収載され、実質的に"国民総除菌時代"を迎えたこと等を説明。
 また、近年、一部の自治体で開始されているピロリ菌検査の学校検診への導入については、(1)ピロリ菌除菌療法による胃がん発症抑制効果は若年ほど高い(2)未婚女性への除菌は感染経路の遮断にもつながる─ことから、胃がん撲滅に向けて大きな効果が期待できると指摘するとともに、「胃がんに加えて上部消化管疾患の発症予防にもつながるため、社会的、経済的にも大きな効果が期待できる」として、長期的視野に立った全国規模での導入を求めた。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる