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平成29年(2017年)11月5日(日) / 日医ニュース

横倉会長が第68代世界医師会長に就任

横倉会長が第68代世界医師会長に就任

横倉会長が第68代世界医師会長に就任

 世界医師会(以下、WMA)シカゴ総会が10月11日から14日にわたってアメリカのシカゴで開催され、横倉義武会長が第68代世界医師会長に就任した。
 日本人でWMA会長に就任するのは、故武見太郎元日医会長、故坪井栄孝元日医会長以来、3人目となる。

 今回の総会には50医師会及び赤十字国際委員会等から約400名が出席。日本からは、横倉会長、松原謙二副会長・道永麻里常任理事・角田徹東京都医師会副会長(いずれもWMA理事)の他、今村聡副会長、石川広己・鈴木邦彦・羽鳥裕・釜萢敏・温泉川梅代・市川朝洋各常任理事、福田稠・柵木充明・平松恵一・石渡勇各理事、魚谷純監事、久野梧郎日医代議員会議長、畔柳達雄参与、日医Junior Doctors Network(JMA―JDN)の医師3名等が参加した。
 13日の総会式典には、日医及び都道府県医師会の役職員等総勢86名が出席し、WMA会長就任式が行われた。
 横倉会長は、①全力を尽くしてWMA会長の職務を務める②医師の名誉を維持し、利益を保護するために、絶え間なく努力する③WMA定款・施行細則を守り、医の倫理の国際綱領の原則を支持し、ジュネーブ宣言の精神を達成するために自身と自身の職位を捧げ、医の実践における自由を擁護する④世界中の医師の間の関係を強化するために努力し、全ての人ができる限り高い健康水準に達するよう支援すると同時に、医師の崇高な伝統を維持することで世界平和を促進させる―ことを宣誓した後、アーディス・ホヴェンWMA議長からメダルが授与された。
 続いて、就任あいさつを行った横倉会長は、「国民の健康寿命を世界トップレベルにまで押し上げてきたわが国の医療システムを世界に発信することで、世界中の人々の幸福の実現に貢献していきたい」とするとともに、さまざまな国、地域の医療課題について、より真摯(しんし)に耳を傾け、解決に向けたWMAの取り組みを加速させていく考えを示した。
 また、1960年代にシカゴ大学経済学部でも教鞭(きょうべん)をとっていた日本の経済学者である故宇沢弘文氏の言葉を引用し、「医療が『世界全体の社会的共通資本』となることを理想に掲げ、WMAを前進させていきたい」と述べた全文は別記事参照

ジュネーブ宣言の改訂案を採択

171105a2.jpg 14日に行われた総会では、「ヒポクラテスの誓い」の現代版として、1948年に開催された第2回WMA総会で採択された「ジュネーブ宣言」の改訂案が採択された。
 今回の修正は、患者と医師の関係、医師同士の関係がここ数十年にわたって変化してきたことを踏まえて行われたものであるが、これまでの基本的な考えは変えず、①「医師の誓い」というサブタイトルを付記②患者のオートノミー(自己決定)の尊重、教師、同僚、学生の間における双方向の尊敬と敬意の明示―などが具体的な見直し点となっている(和文は、後日、日医ホームページに掲載予定)
 また、ポーランドにおいて、若手の医師が待遇改善と国民の健康を守るため、十分な医療費を求めてハンガーストライキを行っていることを憂慮し、その解決を求める緊急決議を採択。次期会長に関しては、選挙の結果、イスラエル医師会のレオニード・エイデルマン会長を選出した。
 更に、横倉会長はWMA会長として、WMAと国際軍事医学委員会、国際製薬医学会との協力関係を定めた覚書に調印を行った。
 その他、総会開催期間中、アジア大洋州医師会連合(CMAAO)加盟医師会参加者との懇談会を開催するなど、各医師会との意見交換を実施した。
 総会における主な採択文書並びに議事内容は以下のとおりである。

(1)医の倫理関係

 ○医学教育の質の保証に関するWMA宣言(シカゴ宣言)
 ○強制肛門検査の禁止に関するWMA決議
 ○専門職内のいじめとハラスメントに関するWMA声明

(2)社会医学関係

 ○武力闘争におけるWMA声明
 ○医療用大麻に関するWMA声明
 ○医学教育に関するWMA声明修正
 ○紛争の最中や紛争直後における各国医師会の協力に関するWMA声明
 ○エピデミック/パンデミックに関するWMA声明
 ○養子縁組の搾取防止における医師の役割に関するWMA声明
 ○健康と気候変動に関するWMA宣言修正

(3)財務企画関係

171105a3.jpg一、今後の開催日程
 2018年:理事会4月リガ(ラトビア)、総会10月レイキャビク(アイスランド)
 2019年:理事会4月サンティアゴ(チリ)、総会10月トビリシ(ジョージア)
 ※総会は、当初、トルコのイスタンブールで開催予定であったが、トルコの社会情勢を鑑み、安全が確認されるまで無期限に延期することを決定。1年の前倒しによりジョージアで開催することとなった。
 2020年:理事会4月ポルト(ポルトガル)、総会(開催地未定)
 2021年:理事会4月(開催地未定)、総会10月北京あるいは上海(中国)(審議中)
 ※総会は、中国医師会が一つの中国政策の下に台湾医師会の名称変更を求めていることを懸念し、両医師会の直接対話による状況の打開を求めることになった。
 2022年:理事会4月(開催地未定)、総会10月ベルリン(ドイツ)
二、新規加盟医師会
 ベリーズ医師会、パキスタン医師会の加盟が認められ、加盟医師会は114となった。

(4)学術集会

171105a4.jpg 「卒前医学教育における質の保証」をテーマとして、講演並びに四つの地域に分かれての討議が行われた。
 その中では、「学生に十分な教育をするための教員、教職員が不足している」「医療の営利化が進んでいる」等に対して懸念が示された他、医療の質を確保するためにも各国の医師会の役割、生涯教育の重要性を指摘する意見が出された。

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