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平成29年(2017年)12月5日(火) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

財政審の主張に反論しプラス改定を改めて要求

緊急記者会見

 横倉義武会長は11月9日、緊急記者会見を行い、8日の財務省財政制度等審議会財政制度分科会における「平成30年度予算の編成等に関する建議」の取りまとめに向けた議論の中で、医療経済実態調査の結果に関する議論が行われたことについて、日医の見解を説明した。

 横倉会長は、財務省が実際の開設者別施設数の分布を踏まえて加重平均した損益差額率を平成26年度と28年度で比較した上で、「国公立を除く一般病院は、前回改定時より損益はむしろ改善している。診療報酬本体を一定程度のマイナス改定にすべきであり、医療経済実態調査の結果を考慮してもこの判断を変更する必要はない」と従来の主張を繰り返したと報じられていることに関しては、「施設分布で補正した数値で見ても、一般病院全体の収益の悪化の傾向に変わりはない」と主張した。
 また、財務省が、平成26年度と28年度で医療経済実態調査に回答した医療機関が異なっていることから、「客体が異なる影響が極めて大きいということであれば、調査の仕方そのものを考える必要がある」としていることについても、①有効回答率は前回調査よりも上昇しており、信頼度が上がっている②医療経済実態調査は中医協においてこれまでしっかりと議論が積み重ねられてきた―ことを挙げて反論。「それにもかかわらず調査方法に対して再考を促すのは、財務省が診療報酬引き下げのために、客観的ではなく、都合の良いデータのみを収集したいという表れではないかと疑念すら抱く」と述べた。
 その上で、改めて、医療経済実態調査の結果について触れ、「地域医療を支える医療機関は経営努力によって得られた薬価差を含めて運営している中で、薬価改定財源を充当せずに、2回続けてネットマイナス改定が行われた影響であり、医療費の自然増を過度に抑制したことによるものではないか」と分析。
 「2期連続で赤字決算となれば、一般的に資金調達は厳しい状態に置かれることになるため、新たな設備投資が難しくなり、その結果として国民は医療の技術革新の恩恵を受けられなくなる」と懸念を表明した。
 また、国公立・公的と医療法人とでは給与水準が大きく異なることを看護職員・医療技術員の給与を例に挙げて説明。「一人当たり平均給与費は国公立・公的では500万円台であるのに対し、医療法人では400万円台である。本来は民間医療機関の医療従事者の給与水準も、人事院勧告に準拠している国公立・公的病院に合わせて引き上げるべきであるが、それを抑制することにより、民間病院はかろうじて経営しており、その結果として賃金の改定率が低く、改善が遅れている」とした。
 更に、企業の内部留保が406兆円にも上っていることにも言及し、「医療機関は医療法で剰余金の配当が禁止されていることから、再生産費用として必須の利益以外は人件費として還元している。それでも医療従事者の給与水準は他産業よりも低く、再生産費用もほとんど確保できないのが実態である」とその窮状を訴えた。
 最後に、横倉会長は、「平成30年度予算編成においては、医療機関の医療従事者に適切な手当てを確保しなくてはならない」と強調するとともに、「医療経済実態調査の結果を踏まえた診療報酬についての議論は、財政審ではなく、中医協でしっかりと議論すべきであり、今後は中医協において日医の考えを説明していきたい」とした。

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