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平成30年(2018年)11月5日(月) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

経済財政諮問会議及び財政審等の議論に対する日医の見解を示す

定例記者会見 10月10日

 横倉義武会長は、経済財政諮問会議や財政制度等審議会において、社会保障制度改革に関する議論が開始されたことを受けて、日医の見解を明らかにした。
 横倉会長は、まず、経済財政諮問会議(10月5日開催)において、民間議員から「予防・健康づくりの推進」に関して、「予防・健康づくりの要となる、糖尿病腎症重症化予防にかかる埼玉県方式、特定健診・特定保健指導事業の医師会モデルを含む生活習慣病・認知症対策について、先進・優良事例の全国展開を実現すべき」「人生の最終段階における医療・ケアの在り方について、人生の節目で関係者が十分話し合うプロセスや住み慣れた場所での在宅看取りを促進すべき」という医師会との協力を求める提言が出されたことに対して、日医としても引き続き関係者と協力しながら、積極的に推進していく考えを明示。
 ただし、民間議員から「社会保障関係費について5000億円を下回るよう抑えるべきところは抑えるべき」との意見が出されたことに関しては、「来年は消費税率が10%に引き上げられる予定であるが、増税の結果として安心して社会保障を受けられるようになったという成功体験を持てることが重要であり、過度な抑制をすべきではない」とした。
 一方、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会(10月9日開催)に関しては、当日提示された社会保障費の抑制策に向けた改革案の主な項目について、日医の考えを説明した。
 「予防医療等による医療費や介護費の節減効果は定量的に明らかではなく、一部にはむしろ増大させるとの指摘もある」という記述については、日本健康会議等の取り組みを改めて説明。「こうした取り組みにより、2017年度の医療費は既に2011年の予測より5兆円以上も下回っており、特に、糖尿病予防の医療費削減効果は明らかである」とするとともに、「今回の財政審の主張は現在進められている地域での健康づくりの活動に水を差すものであり、強い怒りを感じる」と指摘した。
 また、全国紙の記事を引用した資料についても、「予防医療は、国民に健康長寿という何物にも代えがたい便益をもたらします。国・地方自治体や医療従事者は今後も引き続き予防医療を積極的に推進すべきだと考えています」という結論が削除されており、大変恣意(しい)的だと批判した。
 加えて、健康寿命の延伸による高齢者の就労増がもたらす可処分所得の増加額は年間約2400億円にも上るとの試算もあること(図)を紹介。「国民の幸せのために予防に費用が掛かるのであれば、国はその財源をしっかりと確保すべきであり、財務省はその支援をきちんと行う必要がある」とするとともに、「高齢になっても生きがいを持って生き生きと働き続けられるよう支援していくことこそ、医師、更には医師会の役割である」とし、引き続き、その責務を担っていくとした。
 その他、「改革工程表」に示されている「外来診療における窓口負担のあり方」「費用対効果評価の活用」「医療費適正化に向けた地域別の診療報酬」「高齢化や支え手の減少における給付と負担のバランス」については、改めて日医の考えを説明するとともに、「応能負担」「高額医療機器の配置の適正化」についても言及。「応能負担」については、「日医は以前から社会保障の理念に基づき、所得や金融資産の多寡に応じた応能負担を行うべきと主張してきた」とした上で、「多額の公費による支出があったにもかかわらず、死亡時に更に多額の遺産を残された場合などは、その検討をしていくことも一つの方法なのではないか」と述べた。
 更に、「高額医療機器の配置の適正化」については、「国公立病院や大学病院などが同一医療圏にありながら、バラバラの経営や補助金で高額な医療機器の重複投資を繰り返してきた例も散見されており、地域医療対策協議会もしくは地方厚生局単位程度で協議会を設けるなどして検討の上、一定の規制をかけることも一つの方法」とするとともに、「その際には、重粒子線、陽子線を始めとした超高額医療機器に限定すべきであり、MRIやCTにまで規制を掛けるべきではない」とした。
 その上で、横倉会長は、「財政審は負担の増加と給付の抑制のみを主張しているが、財務省は、社会保障の抑制策を考える前に、まずは446兆円超にも上る企業の内部留保を活用して国の財政に寄与するような提言をすべき」と強調し、2040年に向けた社会保障のあり方については、しっかりとした議論の場をつくり、国民全体で合意の上、納得を得られる負担と給付を導き出すことを求めた。

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