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平成30年(2018年)12月5日(水) / 日医ニュース

「国際展開を目指すAMA・JMAの新たなジャーナル」をテーマに開催

「国際展開を目指すAMA・JMAの新たなジャーナル」をテーマに開催

「国際展開を目指すAMA・JMAの新たなジャーナル」をテーマに開催

 アメリカ医師会(AMA)・日本医師会(JMA)共同シンポジウムが11月2日、約150名の参加の下、「国際展開を目指すAMA・JMAの新たなジャーナル」をテーマとして、日医会館大講堂で開催された。
 当日は4題の講演、質疑応答などが行われ、国際的な評価の高い医学雑誌『JAMA』のノウハウを学んだ。

 日医は、日本医学会との共同事業の一つとして、9月28日に英文医学総合ジャーナル『JMA Journal』を創刊(別記事参照)。一方、国際的な評価の高い医学雑誌『JAMA(The Journal of the American Medical Association)』を発行するAMAでは、今春、初のオープンアクセスジャーナル『JAMA Network Open』を創刊した。
 本シンポジウムは、両医師会が、新たなジャーナルの国際展開をテーマとして開催したものである。
 道永麻里常任理事の司会で開会。開会あいさつで横倉義武会長は、10月5日の世界医師会(WMA)レイキャビク総会式典で、1年間のWMA会長の任期を終え、今後1年間は、WMA前会長を務めることになったことを報告し、日本及び世界の人々の健康水準の向上に引き続き貢献していきたいとした。
 また、横倉会長は、①日医は1958(昭和33)年に、当時の日本の医療をアジアを中心とした途上国に伝えることを目的に、『Asian Medical Journal(AMJ)』を創刊、2001年からは、『JMAJ(Japan Medical Association Journal)』と名称変更して、日本の医療や日医の国際保健に関する取り組みなどを英文で掲載してきた②医学・医療が進歩し、ITやAIの進化が社会のさまざまな局面に大きな改革を迫り、医療を取り巻く環境が著しい変化を遂げる中で日医が国際社会において担う役割についても更なる展開を図ることとなり、情報発信のための媒体の役割の見直しを行った―など、新たな国際的情報発信プラットフォームとして、ピアレビュー(査読)誌『JMA Journal』の刊行に至った経緯を説明。
 その上で、「『JMA Journal』は、特にわが国の医学研究者にとってその成果を国際社会に向かって発信するための有力な媒体となることを意図しているが、海外の研究者にも広く成果を発表する媒体として受け入れて欲しい」と述べ、日本で初のチャレンジとなる英文医学総合ジャーナルが多くの人々に読まれ、引用されることで、国際的な医学の高揚、医療の質の向上等に貢献していくことに期待を寄せた。
 続いてあいさつした門田守人日本医学会長は、1902(明治35)年に設立された日本医学会には現在129学会が加盟しているが、加盟の際、社会医学系以外の学会では、機関誌の定期的な発刊、特に英文誌の発刊が審査条件の一つとなっていることを紹介。各加盟学会の雑誌は専門領域に限られ、『JAMA』や『British Medical Journal』のような医学全般にわたる総合誌がなかったことから、『JMA Journal』の発刊は非常に意義があるとして、「成長させていけるよう皆さんと一緒に頑張っていきたい」と述べた。
 ハワード・バークナー『JAMA』編集長は、両医師会は医師の代表であり、日米から各国に広められている医学研究の知見についてお互いに学び合うことが重要であると指摘。「『JAMA』としても『JMA Journal』の今後に注目していきたい」とあいさつした。
 続いて、福井次矢『JMA Journal』共同編集長/聖路加国際病院長が座長として「シンポジウム概要」と題し、日本の研究力が低下している現状と、自身が2月に出席した『JAMA Network Open』の編集委員会における、世界全体を視野に置き壮大な目標をもったディスカッションの模様等を紹介。
 本シンポジウムは、『JMA Journal』を『JAMA』のようなインターナショナルジャーナルにまで高めるためのアドバイスを得る、『JAMA』の編集委員の活動を直接聞くことによってヒントを得るという二つの目的をもっており、横倉会長に相談し、開催に至ったとした上で、「将来的には、同じテーブルで互いの経験を共有できるようなジャーナルになっていければよい」との考えを示した。

『JAMA』の責任者がノウハウを披瀝(ひれき)

 [講演1]「JAMAの過去と現在」では、バークナー『JAMA』編集長が、AMAの代表的出版物である『JAMA』について、1883年創刊の総合医学雑誌で、年間48回発行されていること、編集上の独立性を保持していること、冊子からオンライン、ソーシャルメディア、更にポッドキャストや動画等の新しい技術も活用していること等を紹介。また、JAMA Networkとして、『JAMA』と専門誌12誌がネットワークを形成し、継続的な質の改善とテクノロジーの革新に取り組んでいることなどを解説した。
 [講演2]「JAMA Network Open」では、フレデリック・リヴァラ『JAMA Network Open』編集長が、著者による論文掲載料支払いの有無など、パブリックアクセスとオープンアクセスの違い等を解説。ピアレビューを行うオープンアクセスの総合医学ジャーナルである『JAMA Network Open』は、世界中の人々のために健康とヘルスケアを改善することを使命として、厳格な論説、査読及び出版基準を維持しながら、世界で一流のジャーナルとなることを目指しているとした。
 [講演3]JAMA Network13誌の拡大戦略の責任者であるマイケル・バークウィッツJAMA Networkエレクトロニック・エディターは、「JMA Journalへの論文投稿の奨励」として、①著者への働き掛け②著者に対するサービス③影響力を高めること―が必要だとし、視覚に訴える抄録やオーディオ・ビデオ抄録といった表現力向上のための手法を具体的に紹介するとともに、インパクトファクター(impact factor:自然科学・社会科学分野の学術雑誌を対象として、その雑誌の影響度、引用された頻度を測る指標の一つ)の重要性を強調した。
 [講演4]跡見裕『JMA Journal』共同編集長/杏林大学名誉学長による座長の下、五十嵐隆『JMA Journal』副編集長/国立成育医療研究センター理事長は、「JMA Journal発行の目的と戦略」と題して講演。前身である『AMJ』『JMAJ』にも触れ、新しい『JMA Journal』を客観的な査読を経た科学雑誌に変貌(へんぼう)させることを目指していると説明。その上で、目的と展望、行動計画について具体的に解説した。
 その後、福井・跡見両座長、演者に羽鳥裕常任理事が加わって行われた[質疑応答]では、「雑誌のインパクトファクター」「支えるスタッフの量と質」「投稿料」「ビデオ抄録」「査読者の探し方」「著者向けサービス」など、多岐にわたる問題を巡って熱心な討論があり、松原謙二副会長による閉会の辞でシンポジウムは終了した。

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