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令和元年(2019年)12月20日(金) / 日医ニュース

「がん統計の活用と未来」をテーマに開催

 日医、日本がん登録協議会(JACR)共催によるシンポジウムが11月17日、「がん統計の活用と未来」をテーマとして、日医会館大講堂で開催された。
 本シンポジウムは、がん登録に関する知見を深化させることを目的として、毎年テーマを変えて行われているものであり、今回で6回目となる。
 冒頭のあいさつで、横倉義武会長(代読:道永麻里常任理事)は、全国がん登録の仕組みについて、「医療関係者のみならず、患者さんやご家族の方が望んでおられる適切な医療につなげるための礎(いしずえ)となるものである」と述べ、その意義を強調。日医としても引き続き、がん登録を始めとするがん対策の推進に向けて取り組んでいく考えを示した。

シンポジウムⅠ「がん登録データ利用の未来」

 シンポジウムⅠでは、国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センターの松田智大企画戦略局国際戦略室長及び奥山絢子院内がん登録分析室長による講演が行われた。
 松田室長は、がん登録が進んだことにより、診断率が向上し、詳細な地域別の分析なども可能になっていることを報告。登録情報の活用を進めるための課題としては、現状のデータの利便性やマスコミ、国民の理解の向上、個人を識別するためのIDの作成等を挙げた。
 奥山室長は、同センターが行っている院内がん登録について説明。「登録情報を使って、自身の施設の立ち位置の把握、診療の向上につなげて欲しい」と述べるとともに、「今後は、医師だけでなく、患者、家族にも役立つデータを提供していきたい」と述べた。

シンポジウムⅡ「様々ながん統計の活用事例」

 シンポジウムⅡでは、石川ベンジャミン光一国際医療福祉大学大学院教授がDPCの利点として、診療のプロセスと掛かった費用の把握ができることを挙げる一方、医療機関ごとに匿名化されているため、施設間での患者情報が統合できないなどの課題があると説明。今後は、その他のビッグデータとも合わせた活用が行われるよう期待を寄せた。
 高橋新慶應義塾大学医学部助教は、多くの臨床学会が連携して2010年4月に設立した「National Clinical Database(NCD)」について、1000万以上の症例情報が集積され、ユーザーは4万名以上になったことなど、その現状を報告。有益な情報を効率的に収集するためにも、全国がん登録などとの連携体制の整備を進めていきたいとした。

トピック

 引き続き行われたトピックでは、サイニクス株式会社の永岩麻衣子氏が「都道府県がん登録の全国集計データと診療情報等の併用・突合によるがん登録整備及び活用促進の研究班」が製薬企業を対象として行った、全国がん登録情報の利用ニーズに関する2回の調査結果を報告した。
 その中では、企業が新薬の開発に役立つ情報を求めており、情報を利用したいと考えている企業も約60%あるとするとともに、民間企業も利用できるよう、利用後の分析結果の公表義務の見直しなどを求めた。

シンポジウムⅢ「ゲノム診療時代のがん臨床データベース」

 シンポジウムⅢでは、吉田輝彦国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター副センター長が「がんゲノム情報管理センター」がつくられた経緯などを説明。情報収集を進めるための課題として、「日常診療への負担をいかに軽減するか」「臨床情報とゲノム情報を統合したデータベースの構築」などがあるとした。
 米盛勧国立がん研究センター中央病院医長は、同病院が希少がんの治療薬の薬事承認、産学共同の治療開発基盤の構築などを目的として取り組んでいる「MASTER KEY PROJECT」の概要を説明。医薬品や医療機器だけでなく、医療システムの構築・運用においてもレジストリの多様な活用が進めば、医療コストの削減も期待できるとの考えを示した。
 シンポジウムの最後には、猿木信裕JACR理事長が「今後もさまざまなビッグデータの利活用を進め、国民に還元することで日本のがん医療、がん対策に貢献していきたい」とあいさつを行い、シンポジウムは終了となった。

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