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令和3年(2021年)4月5日(月) / 南から北から / 日医ニュース

三たびの子育て

 私には子どもが3人いる。長女、次女、長男の女2人男1人である。次女は私の開業時に生まれた。長女とは10歳離れている。年の開きや環境の変化があり、まさに、2回子育てをしたという思いであった。
 当時、幼稚園の運動会で、知り合いのMRさんに会った。「あ、先生、お孫さんですか」、何と失敬な。夜の天文館では、行きつけの店のカウンターの端で一人で飲んだものだ。隣になったお客さんから話し掛けられた。皆さん、自分の家族の話をする。おまけにこちらにも尋ねて来る。私が長女と次女と10歳違いだと話をすると、話題が急に家族の話から他に移り、だんだん話をしなくなる。「まずいことを聞いた」と思ったようである。
 二度目の子育ては、個性的な次女とおとなしい長男との4人暮らしであった。塾のお迎えにも行った。ある日、医局の後輩に言われた。「先生、どうしたんですか、人が変わりましたね~」。「失敬な。昔からゴルフもせずに、家庭奉仕しているのだ」と反論したが、全く信じてくれない。
 あの時の次女も母親になり、今、私は孫の手を引いて、幼稚園への同じ道を歩いている。次女そっくりの5歳の孫と歩いていると、若返った気がする。
 東京で屋形船のクラスターが発生した時に、孫を鹿児島に呼び帰した。たまたま、名古屋に行っていた孫を急きょ、鹿児島に呼び戻した。着の身着のまま、連れ帰った。ひと月もすれば落ち着くだろうと思っていたのだが、政府の対応の悪さでコロナがどんどん広がる。結局、引き続き孫の面倒を見る羽目になった。
 長期戦になれば、じじ、ばばとテレビだけではどうにもならない。懐かしの幼稚園に通わせることにしたのである。かくして、今、じじ、ばば、孫で手をつないで幼稚園に通っている。
 コロナ規制解除後初の日曜日、孫の夏物の服を買いに、じじ、ばば、孫、3人で車で出掛けた。ピーターパン物語のCDをかけながら、車で走っていたが、CDを聞いていた孫が、「おじいちゃん、指揮官ってなに?」と聞いてきた。「うーん、指揮官はね、物事の方針を決める人。リーダーだね」。これに、おばあちゃんが補足した。「いろんなところにリーダーがいるでしょう。幼稚園のリーダーは園長先生。ファミリースクール(通っている英語教室)のリーダーは校長先生」「お家のリーダーはおじいちゃんだね」。ところが、孫が猛然と反論した。「違うよ。お家のリーダーはおばあちゃんだよ」。絶句。うーん、子どもはよく見ている。感心するやら、悲しいやら。
 三たびの子育ては楽しくも、疲れるものだ。泣き笑いの3人の新生活である。この変則の子育てが成り立っているのは、幼稚園や、子どもら全員が通ったファミリースクールのおかげである。コロナ終息とともに終わる「みたびの子育て」、孫にせがまれて、寝る時に、「大どろぼう、ホッツェンプロッツ」を読んでやっている。あー、こてっと寝てしまった。なかなかしっかりした優秀な子だなと思いながら、「じじ馬鹿」稼業に励んでいる。

鹿児島県 鹿児島市医報 第59巻第8号より

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