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令和3年(2021年)9月20日(月) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

「令和4年度医療に関する税制要望」まとまる 消費税問題や承継税制の改善、事業税非課税措置や四段階制の存続等を要望

 日本医師会はこのほど、「令和4年度医療に関する税制要望」を取りまとめ、9月1日の定例記者会見で公表した。
 今後は要望内容の実現を目指して、年末の「令和4年度税制改正大綱」決定に向け、政府与党などに働き掛けを行っていくことにしている。

 記者会見で別掲の要望内容を説明した担当の宮川政昭常任理事は、まず、(1)の控除対象外消費税問題について、個々の医療機関の負担のばらつきを解消するために課税取引への転換が有力な選択肢として考えられる一方で、小規模医療機関等への影響に配慮して慎重に検討する必要があるため、「一定の医療機関においては従前通り非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、消費税負担の大きな医療機関においては軽減税率による課税取引に改めることを含め、見直しを検討すること」を要望することとしたと説明した。
 (2)に関しては、6項目の要望があるとした上で、そのうち、「基金拠出型医療法人における負担軽減措置」については、持分のある医療法人が基金拠出型医療法人に移行する際の「みなし配当課税」を、基金が払い戻されるまでの間、繰り延べることや当該基金に係る相続税等の猶予を求めるものであるとした。
 また、(3)と(4)は事業税の特例措置の存続を、(5)については、社会医療法人、認定医療法人等における価格要件や収入要件の見直しを、それぞれ求めるものであると述べた。
 (8)と(13)については、新規の要望であるとした上で、(8)に関しては指定運動療法施設の利用料が医療費控除の対象になることから、その認定要件の見直し及び医療費控除の対象となる疾病範囲の拡大を要望するものであると説明。
 また、(13)については、医療介護総合確保推進法の改正により、医療機関の再編計画の認定制度が創設されたことを受けた要望であり、認定を受けた再編計画の中で地域の医師会、都道府県の医療審議会、地域医療構想調整会議において合意を得た再編・統合のために取得した土地・建物の不動産取得税及び固定資産税を軽減する措置を求めるものであるとした。
 (14)については、「四段階制」の存続を、(15)については、医師会の開放型病院等の法人税非課税措置の拡充などを、引き続き要望するものであるとした他、(16)から(18)は、本年3月、厚生労働省に提出した「新型コロナウイルス感染症対策に係る税制上の緊急要望」の内容を改めて要望したものであると説明した。
 その上で、同常任理事は今回の要望を8月25日に厚生労働省に提出したことを報告するとともに、「今後、年末の『令和4年度税制改正大綱』決定に向けて、要望が実現するよう政府与党などに働き掛けを行っていきたい」と述べ、その実現に意欲を示した。

診療報酬での対応の精緻(せいち)化には限界―猪口副会長

 その後の記者との質疑応答の中で、控除対象外消費税問題に関する要望の意図を質問された猪口雄二副会長は、昨年の税制要望に「消費税の課税取引も視野に入れ、あらゆる選択肢を排除せずに引き続き検討する」との文言を盛り込んだ上で検討を進めてきたことを説明。
 急性期の大病院などでは消費税の支払いが大きく、医療機関によって、控除対象外消費税の負担に大きな差が生じ、診療報酬での対応の精緻(せいち)化には限界があるとし、今後については、「さまざまな方からの意見を聞いた上で、そうした現状に対応できる制度づくりを考えていきたい」と述べた。

令和4年度 医療に関する税制要望(項目)

令和3年8月
公益社団法人日本医師会

医業経営

(1)社会保険診療等に係る消費税について、一定の医療機関においては従前通り非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、消費税負担の大きな医療機関においては軽減税率による課税取引に改めることを含め、見直しを検討すること。
―消費税―
(2)医業を承継する時の相続・贈与に係る税制の改善。
①医療法人の出資に係る相続税及び贈与税の納税猶予制度の創設。
②医療法人の出資の評価方法の改善。
③基金拠出型医療法人における負担軽減措置の創設等。
④認定医療法人制度の拡充。
⑤出資額限度法人の持分の相続税・贈与税課税の改善。
⑥個人版事業承継税制の改善。
―相続税・贈与税・所得税―
(3)社会保険診療報酬に対する事業税非課税の存続。
―事業税―
(4)医療法人の事業税について特別法人としての軽減税率課税の存続。
―事業税―
(5)訪日外国人患者の増加に対応する所要の税制措置。
―法人税・相続税・贈与税・固定資産税―

勤務環境

(6)少子化対策及び、病院等に勤務する医療従事者の子育て支援並びに勤務環境を改善するため、下記の措置を講ずること。
・ベビーシッター等の子育て支援のサービス利用に要する費用を、税制上の控除対象とする措置を講ずること。
―所得税―

健康予防

(7)たばこ税の税率引き上げ。
―たばこ税・地方たばこ税―
(8)指定運動療法施設の認定要件の見直し―医療費控除の対象の見直し。
―所得税―

医療施設・設備

(9)病院・診療所用の建物の耐用年数を短縮。
―所得税・法人税―
(10)医療機関が取得する償却資産に係る固定資産税についての所要の税制措置。
①生産性向上特別措置法による固定資産税軽減措置について医療法人等の非営利法人を適用対象に加えること。
②医療機関が取得する新規の器具・備品や建物附属設備などの償却資産の投資に係る固定資産税軽減措置を全国一律の要件で適用する措置として講ずること。
③固定資産税の償却資産の申告期限を法人税申告期限と統一すること。
―固定資産税―
(11)医師少数区域等に所在する医療機関の固定資産税・不動産取得税に係る税制措置の創設。
―固定資産税・不動産取得税―
(12)医療機関の防災・減災対策を支援するため、以下の措置を講ずること。
①医療機関が取得した耐震構造建物、防災構造施設・設備等に係る税制上の特例措置を創設すること。
②中小企業防災・減災投資促進税制について医療法人等の非営利法人を適用対象に加えること。
―所得税・法人税・固定資産税・不動産取得税―
(13)地域医療構想実現に向けた税制上の優遇措置の拡充。
―不動産取得税・固定資産税―

その他

(14)社会保険診療報酬の所得計算の特例措置(いわゆる四段階制)存続。
―所得税・法人税―
(15)公益法人等に関わる所要の税制措置。
①医師会について
開放型病院等の法人税非課税措置の拡充、開放型病院等の固定資産税等非課税措置の恒久化、その他の措置。
②公益法人等への課税強化を行わないこと。
③一定の医療保健業を行う非営利型法人等に係る固定資産税等軽減措置及び公益目的事業として行う医療保健業に係る固定資産税等軽減措置。
―所得税・法人税・相続税・登録免許税・固定資産税・不動産取得税―
(16)社会医療法人・認定医療法人等の認定要件等における補助金収入の取扱いの見直し。
―法人税・相続税・贈与税・固定資産税―
(17)新型コロナウイルス感染症に対応する医療機関・医療従事者に対する税制措置。
―所得税・法人税・贈与税・固定資産税―
(18)新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者に対する税制措置。
―所得税・法人税・住民税・法人住民税・事業税・固定資産税・他―

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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