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令和3年(2021年)12月5日(日) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

財政制度等審議会財政制度分科会の議論について(各論)

日本医師会定例記者会見 11月17日

財政制度等審議会財政制度分科会の議論について(各論)

財政制度等審議会財政制度分科会の議論について(各論)

 松本吉郎常任理事は財政制度等審議会財政制度分科会(11月8日開催)で示された財務省の考えに対して、特に問題のある以下の4点に関する日本医師会の見解を説明した。

医療法人の事業報告書の電子開示

 同常任理事は、財政審の資料では「全ての医療法人が作成・提出している事業報告書をアップロードで届出・公表する全国的な電子開示システムを整える」「その際、併せて損益状況の施設別区分、収益の入院・外来区分、費用の主要費目区分など、事業報告書等の内容の充実を図るべき」とされている他、将来、この事業報告書が医療経済実態調査に取って代わる提案とも読み取れる内容となっていることに言及。
 医療経済実態調査は、長年、中医協において改定の都度、必要な調査項目を追加するなど改善を重ねてきたものである一方、「医療法人の事業報告書は、医療法で提出義務が定められているものであり、医療経済実態調査のように改定の度に記載項目を変更することは難しい」とした上で、「引き続き、その時々の課題に応じて改善しながら、改定の基礎資料として医療経済実態調査を行っていくべきである」と主張した。
 更に、財政審で事業報告書の詳細化だけでなく、事業報告書の閲覧のデジタル化が別途検討されていることにも触れ、「この二つが合わせて実施されることになれば、個別の医療法人の詳細な経営状況が、小規模な一人医療法人も含めて、公開されることになってしまう。本来の政策利用の目的とは全く違うことに利用されることになれば、現場に大きな混乱が生じ、弊害の方が大きい」と問題意識を表明。医療法人の事業報告書の電子開示・データベース化に当たっては、誰でも閲覧できる事業報告書の内容が詳細になっていくことがないよう担保した上で、政府に対して、行政に閲覧履歴が残る仕組みや本人確認などの適正な閲覧手続きを整備するよう求めた。

かかりつけ医機能

 かかりつけ医については、患者自らが選ぶものということが基本であるとした上で、原則としてフリーアクセスを担保する、あるいはそれを制限しないということが患者目線から非常に大事な観点だと指摘。「患者が、この先生であればしっかりとしたかかりつけ医機能を担っているということが体験できるよう、引き続き、医療機関としても取り組んでいきたい」とした。

リフィル処方・多剤/重複投薬・医薬品の保険給付などの調剤関連

 まず、「リフィル処方箋」について、処方日数が長期化し、受診回数の減少により病状悪化の発見が遅れる懸念があるとするとともに、「慢性疾患患者の疾病管理の質を下げるリスクがあることから、日本医師会としては、慎重にならざるを得ない」との考えを示した。
 また、「多剤併用」に関しては、有害事象のリスクを低減することが重要な課題であるとするとともに、単に数の問題では無く、その中身が重要であると強調。「入退院時や療養環境が変更される際に処方を見直すことや、あるいは病態が長期に安定している場合でも定期的に患者の服薬状況を確認することが重要である。厚生労働省でも取り組みが進められており、引き続き、現行の多職種連携・病院/診療所/薬局の連携の枠組みの中で一層の改善に努めることが、最善の策だ」とした。
 更に、「既存医薬品の保険給付範囲の見直し」については、国民の健康を守るために、国は「治療に必要な部分は公的な医療保険で賄う」ことを基本姿勢とするべきであると主張。「スイッチOTC化されたから医療用ではなくなるということではなく、医療上必要な医薬品は保険でも対象とされている」との厚労省の考えに賛意を示した上で、「財政審の言う『保険給付範囲の縮小』は、社会保障の充実と逆行する政策であり、断固反対する」と述べた。

薬価改定における調整幅

 薬剤の流通安定のための一定幅であり、これまでのさまざまな歴史的な経緯により、現在の2%が維持されてきたと説明。「価格や経費のバラツキが、どうしても生じているということを前提とすれば、それをある程度、平均的に吸収させる仕組みとして必要であることに変わりはない」とした。
 その上で、「今回のコロナの対応や後発品の問題による安定供給障害等により、流通経費が増加したり、さまざまな在庫管理コストが増加しているということを鑑みれば、これ以上、調整幅を引き下げたり、変動させるということはなかなか難しいのではないか」との認識を示した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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