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令和4年(2022年)10月12日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

新型コロナウイルス感染症の現況について

 松本吉郎会長は10月12日の定例記者会見で、(1)新型コロナの現況等、(2)診療・検査医療機関の拡充、(3)感染症法等改正法案、(4)物価高騰対策―について、日本医師会の見解を述べた。

(1)新型コロナの現況等
 松本会長は、新型コロナの感染者数は減少してきているが、今後の感染再拡大や季節性インフルエンザとの同時流行に懸念があるとして、感染防止対策の継続を呼び掛けるとともに、今冬の医療提供体制の整備については、日本医師会として、流行時期や規模等の情報を見極めつつ、新型コロナと季節性インフルエンザの同時流行に備え、有症状者に対応できる医療機関をより一層拡充するよう、改めて都道府県医師会、郡市区等医師会並びに会員の先生方に働き掛けていく姿勢を示した。

 ワクチン接種に関しては、10月5日に乳幼児に対するコロナワクチンが特例承認され、10月7日にオミクロン株対応2価ワクチンの特例臨時接種の使用がそれぞれ了承されたことに対して、ワクチンの種類や保管、接種間隔などが非常に複雑になってきているとして、感染拡大防止に向けて確実にワクチン接種の情報にアクセスできるよう、分かりやすい広報の実施などを国に要請していると報告。「日本医師会としても今冬の新型コロナ・インフルエンザの同時流行に備えて、各ワクチン接種が混乱なく進むよう協力していく」と述べた。

(2)診療・検査医療機関の拡充
 10月11日の加藤勝信厚生労働大臣との面談において、診療・検査医療機関の拡充や公表の推進についての協力要請を受けたことを明らかした上で、「全国 の関係者のご尽力と住民・患者さんのご理解・ご協力のおかげで診療・検査医療機関の施設数は40,624施設となった」と述べるとともに、次の波に備え、引き続き、診療・検査医療機関の拡充に努めていくと強調。その一環として、9月20日に開催された「都道府県医師会長会議」において、1.診療・検査医療機関の増加とともに、公表率を100%に近づける2.土日祝日や連休、年末年始での発熱外来診療体制を強化する3.陽性と判定した自宅療養患者に診療を実施する4.かかりつけの患者以外にも広く対応する―ことを要請するとともに、文書でも同様の協力依頼を行ったとした。

 また、10月11日に開催された「都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会」において、改めて診療・検査医療機関の拡充を要請した他、都道府県医師会、郡市区等医師会に対しても、発熱診療体制の強化を求める文書を発信する予定であることを報告。松本会長は、「国においても、国民、医療現場のため大変な努力をしており感謝しているが、この秋・冬の発熱外来の診療現場を支えていくためにも、財政支援の継続が重要」と主張した。

(3)感染症法等改正法案
 次の感染症危機に向け、10月3日に感染症法等の改正法案が閣議決定されたことについて、その改正の趣旨は、「役割分担と連携」という、今回のコロナ 対応の教訓を生かしたものでなければならないと指摘するとともに、感染症以外の通常医療を担う医療機関の位置付けも重要になると強調。「今後の医療提供体制を構築していく上では、現場の懸命な努力によって築かれてきた現在のコロナ医療体制をベースに、新型コロナウイルス感染症が再拡大したり、コロナに類似した新興感染症が現れた時に備えるということが肝要」とした上で、ウイルスの感染力や毒性に応じて、柔軟に対応していけるようにすることが求められるとし、政府に対して、これまでの現場の努力にしっかり応え、後押しする施策を進めていくことを求めた。

 また、司令塔機能や日本版CDCについても立法化される方向であることを踏まえ、「感染症危機管理庁」が司令塔となって、日本版CDCによる科学的根拠に基づく国の政策を立案し、感染症法等の改正によって、ハード・ソフトの両面での財政支援も行いながら、医療提供体制が強化されていくことが期待されるとした。

 その上で、松本会長は、「こうした体制づくりの中において、郡市区等医師会、都道府県医師会、日本医師会の役割が重要であることを強く認識している」とした上で、「感染症対策には、検査や治療法などに関する迅速な情報提供などの全国的な対応と、医療機能に応じた役割分担などの地域の実情を反映した対応の両面があるため、適切に組み合わせていくと同時に、感染症医療と通常医療との両立を果たさなければならない」と強調。そのためにも、医師会と市区町村、都道府県、国との密な連携が必須だとして、今後は地域の実情に応じた医療提供体制の構築、感染症医療と通常医療との両立、医師会と行政との連携が、具体的な制度設計・運用に反映されるよう努めていくばかりでなく、役割分担の重要性を国民に理解してもらえるよう、広報活動にも取り組んでいく姿勢を示した。

(4)物価高騰対策
 物価高騰対策については、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金において、6,000億円の交付金が創設され、国の推奨事業メニューの筆頭に医療機関等の支援が掲げられ、各都道府県において、医療機関の支援事業を含む補正予算案が順次発表されている一方、医療機関への支援が補正予算に盛り込まれていない自治体や公表されていない自治体があるとし、10月11日の加藤勝信厚生労働大臣との面談において、できる限りすべての自治体で医療機関等への支援が実現するよう、厚労省へ更なる対応を要望したことを報告した。

 更に、10月3日の岸田文雄内閣総理大臣の所信表明において、「家計・企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない、思い切った対策を講じる」、という方針が示されたことに対しては、医療機関も含めて、負担の増加を直接的に緩和する全国的な対策を実施するよう政府に求めた。

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 会見に同席した釜萢敏常任理事は、オミクロン株対応2価ワクチンについて、BA.1対応ワクチンもBA.4-5対応ワクチンも、現在流行しているオミクロン株に対する効果は期待できると説明。「2価ワクチンはオミクロン株への中和抗体の上昇具合が従来株に比べて優れており、今後の詳しい検証が必要であるが、従来のワクチンと比べてワクチンの効果の持続時間が長くなる可能性がある」と報告した上で、「当面の間はBA.1対応ワクチンとBA.4-5対応ワクチンの両方が使用できる状況になるが、希望するワクチンを接種できる体制をすべての医療機関で取ることは難しい」とし、「現時点では接種可能なワクチンを対象の方に速やかに受けて頂くのがわが国では適切であり、国としても推奨している」と概説した。

 接種間隔については、現在5カ月の間隔を空けることとなっているが、接種間隔を短くすることが可能かどうか、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会において近々議論がなされる見通しであるとし、接種間隔が短縮されることによって対象者が増えることで、より広い人々に接種が行われることに期待を寄せた。

 また、初回接種(1、2回目接種)用のワクチンの供給については、ワクチンの提供の継続は今後議論していくことになるが、「初回接種が受けられない状況になるとは考えにくい」との見解を述べるとともに、2価ワクチンの追加接種に当たっては初回接種を済ませていることが前提となるため、「初回接種を受けられていない方はぜひ、初回接種を速やかに済ませ、追加接種の機会をしっかり生かして欲しい」と呼び掛けた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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