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令和8年(2026年)2月13日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース

中医協答申を受けて

 2月13日に令和8年度の診療報酬改定に関する答申が取りまとめられたことを受けて、日本医師会・四病院団体協議会合同記者会見が同日開催され、日本医師会から松本吉郎会長が、日本病院会から岡俊明副会長が、全日本病院協会から猪口正孝副会長が、日本医療法人協会から太田圭洋副会長が、日本精神科病院協会から平川淳一副会長が、それぞれ出席した。

 松本会長は、中医協で行われた令和8年度診療報酬改定の答申を受け、(1)物件費の高騰を踏まえた対応、(2)賃上げに向けた評価の見直し、(3)患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた医療提供体制の整備(入院の見直し)、(4)かかりつけ医機能の評価―を医科部分のポイントに挙げた。

 (1)と(2)ではまず、診療報酬改定が長期間、デフレ下で行われきたことで、近年の急激なインフレに診療報酬改定が対応できていないことによって、病院の約7割が、診療所の約4割がそれぞれ赤字という、かつてない異常事態を生じさせたことなどに言及。特に多くの医療従事者を抱え、より高度な医療を提供するための人員配置、医療設備への投資が必要となる病院の経営に顕著に表れたとした。

 一方で、地域の医療は病院だけでは成り立たないとし、「病院と診療所が互いに役割分担や連携をしながら、地域を一体的に面として支えているものであり、その差はあっても病院・診療所ともに配慮が必要だ」と指摘。その上で「今回の改定の物件費・賃上げの対応は、病院に重点を置きつつ、診療所に対しても評価されたものだ」と強調。今回の対応がしっかりと医療従事者の賃金改善に反映されるよう、各医療機関での対応を要請した他、全ての医療機関で物件費や賃上げに関する評価が活用できるよう、日本医師会として周知等を図る姿勢を示した。

 (3)では、今回の改定の特徴として、救急搬送件数がさまざまな項目の評価対象となっている点を挙げ、新設された「急性期病院一般入院基本料」などの要件に一定の搬送件数が求められていることに触れた。このことにより、3次救急病院に救急対応が集中すれば、2次救急を支える地域の中小病院が機能しなくなる恐れがあるとし、地域の医療提供体制の崩壊を防ぐために、厚生労働省に対して十分な検証を求めるとともに、場合によっては軌道修正を図る対応を求める必要性も示した。

 加えて、生産年齢人口の減少に伴う医療従事者の確保の制約が増す中で、これまでの看護師配置による入院基本料の評価について、他の医療職種がそれぞれの専門性を発揮し、協働して病棟業務を行う体制を評価する「看護・多職種協働加算」が新設されたことは「新たな試みだ」とした。

 更に、若手の医師が減少しており、かつ医療提供体制の確保が必要とされる診療科の医師を対象として、勤務環境・処遇改善を行うとともに、研修体制を整えている医療機関を評価する「地域医療体制確保加算2」や、地域の基幹的な医療機関で、高度手術を実施する体制を整備し、外科医の勤務環境の改善を図った上で、当該手術を実施した場合の加算である「外科医療確保特別加算」が新設された点に言及。「これは特定の診療科について、特別な評価を行う新たな試みだが、具体的な対応はある程度、医療機関の裁量に委ねられていることから、対象の医療機関においては点数設定の趣旨を理解頂き、医師の働き方改革及び診療科偏在対策としての効果が発揮されるよう、対応をお願いしたい」と呼び掛けた。

 加えて、今回の改定における新たな対応については、今後しっかりと調査・検証を行い、次回以降の改定につなげていくことの必要性にも言及した。

 (4)では、前回改定で大幅な見直しが行われた「生活習慣病管理料」などについて、検証調査の結果から不合理な取扱いが見直されたことに言及。具体例として、1.患者・医療機関の双方から「大変負担である」と指摘があった患者署名を不要とする2.生活習慣病と直接的な関係の乏しい疾患に関する医学管理等について、包括範囲から除外とする―点を上げた上で、「より質の高い疾患管理を推進する観点で見直されたことは評価できる」と述べた。

 最後に、今回の改定が国民へのより良い医療提供につながるように十分な検証を行い、三師会や四病協などの各種医療関係団体と共に、医療界一丸となって国民の生命と健康を守っていく姿勢を強調した。

 岡日病副会長は、1.ベースアップ評価料における病院の事務職員の追加2.入院物価対応料等の新設―を高く評価した上で、「令和9年度には、ベースアップ評価料、物価対応料が2倍になることを盛り込まれた点に関しても、物価や人件費が年ごとに上がっている中で、このような形で対応頂いたことは評価したい」と述べた。一方で、物価高騰のスピードは我々の予想を上回っていることもあるとし、「今後の春闘や人事院勧告の数字を見て、本当に今回の対応で他産業に追い付けていけるかはしっかり検証していく必要がある」と説明した。

 急性期・高度急性期入院料の評価として新設された急性期病院一般入院基本料にも言及。救急車を受け入れることによって、利益率の悪化が改善することに期待感を示すとともに、この措置についても検証の必要性を指摘した。

 猪口全日病副会長は、今回の改定によって、特に急性期の入院料が改善することに期待感を示した上で、「急性期拠点を担うような大きな病院にはかなり手厚い評価となっていることは分かるが、民間中小病院の2次救急レベルの病院にとってどうなのかは今後シミュレーションをしてみないとよく分からない部分がある」と述べるなど、どの程度の良い影響が出てくるか状況を見極める姿勢を示した。

 その他、ICTやAIの利活用による業務の効率化を図った場合に、配置基準を柔軟化する規定が盛り込まれたことなどについては、「ICT・AIを促進していくだけでなく、今までの診療報酬体系とは異なる視点が入ってきたと歓迎している。費用面に関しては特に診療報酬の中であてがわれている訳ではないので、その部分も考慮して頂けるとありがたい」と述べた。

 太田医法協副会長は、急性期病院一般入院基本料や急性期総合体制加算、看護・多職種協働加算の新設の他、地域包括医療病棟入院料の見直しなどを踏まえ、「見直しが多岐にわたる大規模な改定となった」と指摘した。

 更に、今回の改定率にも言及。近年にない高い水準を設定されたことに謝意を示した一方で、「本体3.09%は、令和8年度には2.41%、令和9年度は3.77%となっており、薬価等のマイナス0.87%を踏まえたネット改定率では令和8年度は1.54%の増加、令和9年度はそこから1.36%の増加に過ぎない。この数値は想定される令和8年度、令和9年度の物価上昇率以下だ」と説明。医療費の対GDP比も、医療費の自然増分を考慮しても2026年度以降も横ばいか、緩やかに低下していくことが予想されるとし、「決して医療機関にとって容易な経営環境にはない」として、引き続きの対応を求めた。

 平川日精協副会長は、精神保健行政の方向性として、入院中心から地域生活支援が謳われ、退院支援や病床削減ばかりを評価する改定が続いてきたとし、「小規模病院の多くが赤字病院であるという現実があり、ダウンサイズは病院存続の危機を招きかねない状況だ」と説明。その上で、今回の改定でダウンサイズやその先の小規模病院を評価した精神科地域密着多機能体制加算が新設されたことは「一つの希望ができた」と評価した。

 また、精神科の入院対応は精神保健福祉法に則り、人権に配慮した複雑な手続きが必要で、入院後も継続されることにも言及。「急性期の段階でかなりの手間が必要だが、現状では正当な評価になっていないと考えている。医療保護入院、措置入院など、本来国が行うべき法的な入院に対する評価については今後も正当な評価になるように働き掛けていきたい」と述べた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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