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令和4年(2022年)12月27日(火) / 「日医君」だより

第37回都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会

 第37回都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会が12月23日、日本医師会館でWEB会議により開催された。

 冒頭のあいさつで松本吉郎会長は、新規感染者数が増加する中、診療・検査医療機関は、12月14日時点で41,850施設となっているとし、各医療機関の尽力や、会員の検査センターへの出務などの協力に謝意を示した。

 その上で、年末年始等に向けた発熱外来診療体制の強化とともに、自宅療養患者の診療、かかりつけの患者以外への対応などを要請。ワクチン接種、感染予防、発熱時の対応、医療のかかり方に関する啓発についても、引き続きの協力を求めた。

 当日の議事は、(1)新型コロナウイルス感染症の現況等、(2)感染症法等の一部を改正する法律及び次期医療計画、(3)日本医師会「新型コロナウイルス感染症第8波(季節性インフルエンザとの同時期流行)、年末年始等に向けた発熱外来診療体制に関する状況把握調査」―についてであった。

 (1)では、釜萢敏常任理事が、新規感染者数について、中国四国、九州などでは全国より増加幅が大きく、10万人当たりで全国を上回っている一方、北海道では減少傾向が継続しており、東北、北陸、甲信越では横ばいから減少傾向であるなど、「全国的には増加速度は低下しているものの、増加傾向が継続している」と報告。高齢者施設と医療機関の集団感染も増加傾向にあるとし、「全国の新規感染者を年代別に見ると、全ての年代で増加している。重症者数と死亡者数も増加傾向にあり、新規死亡者の推移も急上昇している」と説明した。

 変異株については、BA.5が圧倒的に多かった状況から、今後はいくつかのタイプが共存する状況になるとの見通しを示し、中国での感染拡大に伴い、新たな変異株が出現する懸念もあるとした。

 インフルエンザに関しては、1都5県で流行の始まりとされる定点当たり1を超えてきているとし、「全国平均ではまだそこまでいかないが、昨年の同時期は定点当たり0.01であったので、今後の動向に注意が必要である」と述べた。

 更に、感染症法における取り扱いの議論にも触れ、「新型コロナウイルス感染症は急激な感染拡大があり、その規模は他の疾患では経験がない。さまざまな罹患後症状も問題になっており、扱いの変更に当たっては慎重さが求められる」と指摘した他、今後も医療機関においては感染防止対策が必要であることから、国に対して支援の継続を要請する姿勢を示した。

 (2)では、猪口雄二副会長が、今後の感染症に備えた法整備のため12月2日に参議院本会議で可決・成立した「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案」について概説。

 都道府県と医療機関との間で感染症対応の協定を締結する仕組みの法定化に関しては、「協定内容を履行できない時の医療機関名の公表や、地域医療支援病院等の承認取り消しなどの規定が、現場に不安をもたらしていることは承知している」とした上で、感染者対応のあり方については、平時からの役割分担と連携を軸に、関係者間で協議して柔軟に対応していく方向で厚生労働省と協議していくとした。

 また、自宅・宿泊療養者等への医療や支援の確保については、感染症法に健康観察や医療の提供業務を委託できる旨が規定されたため、自身の診療所で感染症対応ができない場合であっても、地域医師会による自宅や宿泊療養の健康観察業務に参画して役割を果たすことができると説明。

 費用負担については、都道府県と協定を締結した医療機関に対し、都道府県がハード、ソフトの費用を補助することについて、今回の法改正によって、法律上の根拠が生じたとした。

 一方、次期医療計画において、5疾病5事業の6番目の事業として、日本医師会の主張の通り感染症対策が追加されたことについては、「これまで日本医師会が主張してきた感染症医療と通常医療の両立という考え方が盛り込まれている」と強調。想定する感染症は、感染症法に定める新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症を基本とするが、未知の感染症が発生した場合は、協定内容の履行が強いられるものではなく、その感染症の特性に合わせて協定の内容を見直すなど、実際の状況に応じた機動的な対応を行うことが明記されているとした。

 (3)では、釜萢常任理事が、「新型コロナウイルス感染症第8波(季節性インフルエンザとの同時期流行)、年末年始等に向けた発熱外来診療体制に関する状況把握調査」への協力に謝意を示した上で、途中集計結果として、各地域医師会が、かかりつけの患者以外の者も発熱外来の対象としたり、自治体ホームページでの公表をするよう呼び掛けていること、あるいは、ゾーニングやリスクの高い患者を抱えるなどで自院では発熱外来ができない会員医師も、地域医師会の休日夜間診療所等での発熱外来(センター方式)に参画していることが把握できたとした。

 また、年末年始の発熱外来診療体制については、1.診療・検査医療機関の増加(時間外・診療日の拡充含む)が37.8% 2.各医療機関で当番制による対応が37.2% 3.医師会施設(医師会館、医師会病院、医師会休日夜間診療所等)での発熱外来への出務が23.4%―となっているとした。

 体制づくりについては、自由回答で「年末年始は4名の医師を配置し、ドライブスルー方式で新型コロナおよびインフルエンザの検査を実施」「これまでは休日診療所ではコロナの検査をしない体制だったが、コロナ、インフルエンザの検査も行う」などの他、応援金支給制度により発熱外来を増やす取り組みがあったことも紹介した。

 非常に多くの回答が寄せられた国や日本医師会に対する意見では、時間の制約上一部を取り上げ、2類相当からインフルエンザと同じ5類への変更を求める意見が出される一方、5類相当に変わっても発熱患者を受け入れる医療機関を増やすのが難しいことが予想されるので、現在の診療検査医療機関の体制を継続すべきとの見解も見られたとし、「急激な感染拡大をもたらす新型コロナの特性を踏まえ、社会機能の維持の面からも慎重な議論が必要である」との見解を述べた。

 質疑応答の中では、各都道府県医師会より、病床使用率を指標としていては、医療機関のクラスターで病床が使えないケースや、自宅療養が中心となっている自治体などで、実態と乖離が生じるとして、死亡者数を指標とするよう要望が出された他、行政と協力して臨時的対応のためのオンライン診療センターを立ち上げたことなどの報告がなされた。

 総括を行った松本会長は、「一部の地域を除き、第8波で感染者数が増えており、先が見通せない状況にある」として、季節性インフルエンザとの同時期流行に備えた年末年始の体制整備への協力を呼び掛けるとともに、引き続きワクチン接種の推進も要請した。

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