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令和5年(2023年)3月20日(月) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更後の医療提供体制について

日本医師会定例記者会見 3月1日

新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更後の医療提供体制について

新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更後の医療提供体制について

 松本吉郎会長は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更後の医療提供体制について、日本医師会の考えを説明した。
 松本会長は最初に、「日本医師会として都道府県医師会・郡市区医師会と共に、また、病院団体等や全国知事会などと連携しながら、2カ月後に迫った新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更に向けて、医療提供体制の確保に全力を尽くしていく」と強調。
 その上で、類型変更後も新規感染者数が過去の感染拡大を大幅に超える事態も想定されるものの、定点報告に基づく感染状況の把握となることから、これまでとの流行状況の比較が困難になるとの見方を示し、その際には各地域の外来及び入院の医療逼迫(ひっぱく)具合が最も重要な指標になるとした。
 次に、外来の医療提供体制について、「およそ4万2000の診療・検査医療機関による現在の発熱外来診療体制の維持が重要である」と述べ、併せて、季節性インフルエンザの診療については、これまで対応してきた医療機関の参画や、普段は自院に通院していない患者にも幅広く対応してもらうことの重要性を説明。日本医師会としても、全国の会員医療機関に協力要請を行ってきたとした。
 更に、診療・検査医療機関に登録されておらず、発熱外来診療体制に参画していないとされる医療機関について言及し、登録が無くても、実際には相談や来院した発熱患者にしっかりと対応しているとの認識を示した。
 また、そうした医師・医療機関の多くは、地域に根差した医師・医療機関として地域医師会によるコロナへの取り組みに参加しているとした上で、実例として地域外来・検査センターや宿泊療養施設の健康観察などを行う、「COVID19―JMAT」等の活動を挙げ、「そうした各地のコロナ対応、コロナと通常医療の両立のための現場の努力は適切に評価されてしかるべき」と述べるとともに、類型の変更後も医療機関は感染対策が必要であり、コロナ診療には引き続き労力が掛かることから、医療機関の対応可能能力はコロナ以前の水準には戻らないとの見方を示した。
 松本会長は、これらのことを踏まえ、2月28日付で全国の都道府県医師会長並びに郡市区医師会長に対し、会長名で、類型変更後の発熱外来診療体制の維持・充実に向けた協力要請(日医発2235号)を行うとともに、同日開催された都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会でも、季節性インフルエンザを診てきた医療機関のコロナ対応への一層の参画など、患者を広く受け入れてもらうことを強く要請したと説明した。
 また、定例記者会見などで「高齢者人口の多いわが国においては、エンデミックによる感染リスクのレベルは、可能な限り感染リスクのレベルが低い状態でとどまる状況を目指すべき」と主張してきたことに触れ、「その実現のためにも類型変更後の医療提供体制、特に外来の体制確保への支援が引き続き必要になる」と強調。コロナ対応を担ってきた医療機関の対応力を損なうことがないような支援及び、これから新たに対応を拡充する医療機関に対しても、しっかりと感染防止対策が講じられるような支援が重要だとした。
 松本会長は最後に、「コロナ外来を分担する医療機関を支えるためには、地方自治体が何らかの形で入院調整を行うことが不可欠である」と指摘。入院対応医療機関の確保やクラスターの発生した高齢者施設への支援などについても、日本医師会として引き続き国や都道府県行政に求めていくとした。

感染状況把握の重要性を指摘―釜萢常任理事

 会見に同席した釜萢敏常任理事は、今後の感染状況等に関する予測は難しいとした上で、類型変更までの残された期間にしておかなければならないことは多いと説明。
 類型変更後は「定点把握」となり、週に1回集計の報告が行われる形となることから、そのような状況の中でも感染拡大の兆候を早期に捉えて対応していくことや、収束の傾向も的確に把握することが重要になってくるとの見方を示した他、定点把握は基本的に季節性インフルエンザの定点を担う医療機関に依頼することになるものの、地域的な偏りについては都道府県ごとに調整が必要になるのではないかとした。
 また、今後の入院体制についても言及し、「引き続き病床を確保してもらうためにも、病床確保に対する支援をお願いしていかなければならない」と述べた。

診療報酬上の特例継続を要望―長島常任理事

 医療保険に係る対応については長島公之常任理事が説明を行った。
 長島常任理事は、まず、当日の午前中に開催された中医協総会の、今後の新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取り扱いに関する審議において、「類型が変更されてもウイルスの感染性及び感染対策の必要性は変わるものではないことを、中医協の共通認識とすべきである」と強調したことを紹介。
 その上で、実際には既に多くの医療機関で、普段は自院に通院していない患者にも十分対応しているものの、今後は地域を面として、より多くの医療機関に、普段は自院に通院していない患者も含めて、幅広く対応してもらえるよう日本医師会も努力していくことを表明するとともに、医療現場では引き続き感染対策を講じる必要があることから、今後示される医療提供のあり方や感染対策を踏まえ、診療報酬上の適切な評価を強く要望したとした。
 次に、これまで保健所や地方自治体が対応してきた入院調整や陽性患者のフォローアップ、療養指導などについて、今後は医療機関が担うことになることから、「新たな業務が発生することが予想される」とし、「その場合には財政支援も重要になる」と述べた。
 更に、審議の中で、コロナ患者の高齢化に関するデータが示されたことから、基礎疾患、機能障害、低栄養等の重症化リスクの高さに加えて、現場では日常の介助や認知症への対応などもあるため、従事者の負担が増していることを指摘。オミクロン株が主流となって以降は要介護高齢者の感染が増加し、医療機関に介護の負荷が増していることを踏まえると、「特に高齢者に関しては、これまでのように主に急性期病院で陽性患者を受け入れるだけでなく、中小病院が引き受けなければ通常の医療提供体制には戻せない」と述べた他、介護保険施設等における医療支援を充実させるとともに、中小病院が陽性患者の入院を引き受けられるよう、適切な対策を講じることも必要であるとした。
 その上で長島常任理事は、「こうしたことを踏まえれば、現在の診療報酬上の特例を継続することは不可欠だ」として、その継続を引き続き強く要望していく考えを示した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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