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令和5年(2023年)8月5日(土) / 南から北から / 日医ニュース

目薬あれこれ

 ここ数年、日常診療において意識していることがあります。それは目薬の差し方です。
 開業してから外用薬の処方上限数を学び、ひと月当たりの処方本数を意識するようになりました。また、白内障手術等を予定している患者さんには、実際に点眼方法を確認し、必要があれば練習して頂き、手術の日を迎えられるようにしてきました。
 10年以上前、60代緑内障の患者さんに、約3カ月分の予定で目薬を処方したはずが、6カ月程後に来院されました。本人がおっしゃるには、「毎日差し忘れもなく使っていたのに、先生が言ったようには無くならなかった」とのことでした。口頭で簡単に点眼方法を確認しても「きちんとできています!」との返答。確かに、見るからにきちんとされている印象の女性です。
 しかし、スタッフが実際に点眼方法を確認してみると、引き下げた下まぶたに点眼瓶の先をピタッと当て、力強くビュッと液を押し出し、そのままシュッとスポイトのように吸い上げていました。ご本人としては、眼がぬれるので、入っていると思っておられたそうです。言うまでもなく、点眼液は容器内外を行き来しており、差す量が少ないだけでなく、目薬の汚染が心配されました。
 更に意識し始めたのは、10年近く前、テレビの健康番組で、「日本人で正しく目薬を差せている人は4割しかいない」という内容が放送された後でした。私はその番組を見ておりませんでしたが、健康番組の影響は大きいようで、何人かの患者さんから、「番組内で教えてくれた、差し方の手つきが分からない」「下まぶたを下げていなかった」「差した後すぐに瞬きをたくさんしていた」「うまく距離が取れない」等の話がありました。
 実際に確認してみると、正しい差し方は分かっているものの、うまく入らず、何滴もこぼしてしまう方。更には、その目の周りにこぼれた液を、瞬きで流し込んでいる方。上手に差せているのに、何滴も入った方が効果があると思って差している方。点眼行為そのものが怖い方。リウマチなどで首の後屈が難しかったり、指先で点眼瓶が押しづらい方。涙点目掛けて、目頭付近に差している方。下まぶたを横に2本指でつまんでポケットを作り、そこに差している方。下まぶたの内側に、口紅のように塗っている方。手鏡を持って差している方、等々見られましたが、比較的予想可能な内容でした。
 予想外の差し方だったのは、比較的若い女性です。下まぶたを下げると弛(たる)んでシワができるからという理由で、上まぶたのみを上げて差す方。つけ睫毛(まつげ)や睫毛エクステが長く、邪魔をするので、目尻側から差して、頭を左右に倒し目薬を行き渡らせる方。※この差し方は、まぶたを触ってアイメイクを崩したくない方もされていました。
 眼科診療において、目薬は必要不可欠なものであり、回数を守るだけでなく、手技も大切であるとの理解が深まれば良いと思っております。
 ちなみに、最近一人で来院された91歳の女性、目薬を差すのは白内障手術時以来20年ぶりとのことでしたが、お手本のように点眼されていました。

福島県 会津医師会報 通巻688号より

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