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令和6年(2024年)2月5日(月) / 日医ニュース

診療報酬改定をプラス改定とする方策とは

 令和6年度診療報酬改定の本体部分は、プラス0・88%のプラス改定となりました。物価高、特に水道光熱費と食材料費の高騰、また物価が上昇している中で生活をしている職員の賃金引き上げも考慮しないといけない状況の中、もう少しの上乗せは欲しいところでしたが、まずはプラス改定に胸をなで下ろしたところです。
 次の診療報酬改定は2年後の2026年です。診療報酬改定というと、常に財政制度等審議会などはマイナス改定を主張し、医療関係団体はプラス改定を主張します。では、彼らはどうして診療報酬を減らしたいと考えているのでしょうか。この点について、歴史的経緯を踏まえて考察したいと思います。
 国民皆保険が発足して以来、日本経済の発展と共に診療報酬は常にプラス改定でした。オイルショックの際は年に2回、改定したこともあったそうです。日本のバブルが崩壊した1990年、翌年から株価と地価は下がり始めましたが、消費者物価はしばらく上昇を続けます。消費者物価が低下し始めるのは1998年前後からです。そして、初めて診療報酬本体部分がマイナス改定となったのは2002年小泉内閣の時です。
 さかのぼること8年、1994年に高齢社会福祉ビジョン懇談会が「21世紀福祉ビジョン」という報告書を出しました。この報告書で、将来の社会保障費がどの程度になるかの試算が行われました。この報告書によると、2025年の社会保障費は上位推計で約380兆円、医療費は約150兆円と計算されています。2022年の国民医療費は約46兆円でしたので、2025年は約50兆円程度と予測されます。
 国民医療費の上昇は経済の圧迫につながるという考えの下、一部の人々は医療費を削減しようとします。財務省は国庫負担分の縮小を主張し、財界は社会保険料の企業負担分の拡大に反対します。野党も診療報酬が上がると自己負担が上昇するという理由で反対することも多いのが現状です。
 医療費を「費用」と捉えると、医療費増は経済成長を阻害し、医療費を削減すべきという考えになりがちです。一方、現実的な経済循環を考えると、医療費のうち約50%は人件費であり、医療従事者のほぼ全ての人は日本国内に居住しているため、我々医療従事者の消費は国内で行われます。更に、その給与所得から個人所得税、消費税、社会保険料を支払うため、医療費の大半は国内に還流されます。
 また、医療機関は日本中、津々浦々にあるので、大都市で集められた保険料は多くの地域に流れ、そこで雇用と消費を創出します。「医療機関が無いと人はその場所に住み続けることはできない」と言われますが、言い換えれば「医療機関が無いと雇用は生まれず地域の消費も生まれない」とも言えるでしょう。このように考えると、診療報酬を削減すると地方の経済から悪化していくのは明白です。
 診療報酬を下げようとする勢力は多々ありますが、上げようという意見は少数派です。診療報酬の上げ下げは最終的には政治力によって決定されます。今回の改定で2年間の安心は得られましたが、2026年改定に向けての準備をする必要があります。診療報酬を増額改定する方法としては、国民の理解を求め、その結果として政治家を説得するしかなく、そのためには会員の先生方が周りにいる多くの方々に働き掛けていくしかないのです。
 診療報酬を上げるためにも、全国の会員の力が必要です。ぜひ、周りにいる方々に診療報酬プラス改定の必要性を説き続けて頂ければと思います。
 本年も先生方、皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。

(日医総研副所長 原祐一)

お知らせ
 日本医師会のシンクタンクである日医総研の研究成果は、日医総研のホームページでご覧頂けますので、ぜひ、ご活用願います。
https://www.jmari.med.or.jp/

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