医学生の時、ローソンでアルバイトをしていた。学生時代の大半をローソンで過ごしたと言っても過言ではない。大抵月15回以上、多い時は月28回出勤したこともあった。
当時の日中の時給は575円、夜で730円であった。最初は17時から22時までの勤務で、アルバイトの先輩の高校生から仕事を教えてもらった。5時間勤務して、もらえるのは3000円弱であり、お金を稼ぐのは簡単ではないんだな、と感じたのを覚えている。
仕事を覚えてからは深夜の1人勤務に入るようになった。主に22時から翌8時までの深夜勤務に週3回入り、その他、日勤、夕勤、準夜とさまざまな時間の勤務に入っていた。当時は若かったので週3回徹夜の勤務をしても問題なかったが、さすがに深夜勤務明けの翌日の授業は居眠りをしていたかも知れない。
ローソンのアルバイトで最も助かったのは賞味期限切れの弁当をもらえたことである。学生時代の私はローソンの賞味期限切れの弁当で育ったと言える程である。とは言え、売れ残って賞味期限切れとなる弁当は大抵見た目も地味なものが多く、デラックスな弁当ではなかったように思う。たまにカルビ焼肉弁当のような売れ筋の弁当が当たった時には今日は何てラッキーなんだ、と喜んだものだった。それでもどんな弁当でももらえた弁当はうれしく、たくさんもらえた時は冷凍しておき、後で食べていた。
自分はローソン店員になるためにこの地に来たのだ、と勘違いするくらいに医学生の本分を忘れてローソンバイトに明け暮れた日々を送っていた。それはローソンバイトが楽しかったことに他ならないが、時には楽しいばかりではなく、困難な場面にも遭遇した。
勤務していたローソンは幹線道路に面しており、暴走する改造車が夜な夜な出没し休憩がてらローソンに駐車するのである。マフラーの爆音で近隣住民から「お前のところの車がうるさいぞ! 何とかしろ!」と苦情を受けたことが度々あった。駐車中の車に「近隣の方から苦情が来ておりますのでお静かにお願いします」と注意すると「何だよ、お前。俺ら客だぞ?」とすごまれたこともあった。クレームに対する対処の必要性とその難しさを学ばせてもらったのは貴重な経験だった。
自分を雇ってくれたローソンのオーナーには公私ともにお世話になり、卒後も時間があった時にはオーナーを訪ねては、私はローソンの制服に袖を通し、度々レジに立っていた。卒後しばらくは学生時代の経験で業務をこなすことができていたが、年数が経つにつれ支払い方法や各種チケットの発券など業務が多様化し、だんだんと私はローソン店員として使い物にならなくなっていった。10年程前にオーナーがローソンの仕事を勇退され、この時私のローソン店員としてのキャリアも終わりを告げた。
ローソンでのアルバイトは、社会を知らなかった未熟な自分にお金を稼ぐことの大変さやクレームへの対応の難しさなど、さまざまなことを教えてくれた。それらの学びは医師として働いてからも糧となっている。
ローソンの青い光を見るたびに当時を思い出す。またあのローソンの青いストライプの制服に袖を通しレジに立ってみたいな、と思いながら、社会人としての初心を忘れずに日々の診療に当たっていきたいと思う今日この頃である。