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令和7年(2025年)10月20日(月) / 南から北から / 日医ニュース

約束

 今から二十数年前、私は結婚し東京で勤務していました。当時、石原都知事の下で東京マラソンが計画されていました。学生時代、足の遅かった私には全く関係ない話だと思いながらも、「東京マラソンに出るぞ!」と冗談で妻に言い、二人で笑い合ったものです。その後、東京マラソンのニュースが流れるたびに「走るんじゃなかったん?」と妻にからかわれるのが恒例でしたが、出産や子育てに追われ、いつしかそんな会話も無くなりました。
 それから十数年が経ち、私は開業しました。患者さんには運動の大切さを日々説いていましたが、自分はクリニックの中でほとんど動かず、体重計を見て焦りを感じていました。そのため、内向的な私でもできそうだと思い、ジョギングを数年前に始めました。最初は1~2キロメートルで息も絶え絶えでしたが、下手の横好きながらも少しずつ長く走れるようになりました。更に、コロナ禍ではランニングに費やす時間が増え、何とかフルマラソンを完走できるようになりました。最近では、年に4~5回のマラソン大会に参加しています。
 "マラソン"と聞くと立派に思われがちですが、私はタイムを競うシリアスランナーではなく、楽しみながら走っています。大会では各地の名産品が補給食として支給されることも楽しみの一つです。例えば、北九州マラソンでは小倉牛、熊本城マラソンではイチゴなどをコース上で味わいました。また、普段は立ち入れない首都高速道路や空港内を走れる大会では非日常感を満喫しました。ただ、楽しみながらとは言え、休み休みでも42・195キロメートルは長く、翌日の診療中は立ち上がるのもやっとのことです。
 昨年、ついに人気の東京マラソンに参加できました。新宿や池袋を駆け抜け、東京タワーやスカイツリーを眺めながら、東京を独占したような気分で走るのは格別でした。沿道の幾重にも重なった途切れることのない応援に後押しされ、自己ベストタイム(速くありませんが)を更新できた最高の大会となりました。また挑戦したいと思いますが、抽選倍率が10倍以上と言われるこの大会、次は何年後になることでしょうか。
 さて、大会後に自宅に戻ってから東京マラソンの話を妻に熱く語りました。その中で、「新婚の頃、東京マラソンを走るって約束したしね!」と伝えると、妻から「......そうだったっけ? それなら、その頃に約束したスイートテン・ダイヤモンド、まだもらってないけど......2回分にもなるよ!?」と返されました。ああ、そんな約束もしていたな......。

(一部省略)

広島県 広島市医師会だより NO.708より

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