閉じる

令和7年(2025年)12月8日(月) / 「日医君」だより

参議院厚生労働委員会の参考人質疑に出席

 城守国斗常任理事は12月3日、「医療法等の一部を改正する法律案」(以下、法案)について審議が行われている参議院厚生労働委員会に参考人として招かれ、日本医師会の考えを説明した。

 冒頭、城守常任理事は、医療機関の経営が大変厳しい状況を踏まえて、令和7年度補正予算案が取りまとめられたことに謝意を示した。

 まず、令和5年度と令和6年度の医療機関の経営状況に言及。病院の赤字割合が令和6年度にかけて増加しており、無床診療所と有床診療所も経営状況が悪化しているとした。経常利益率について「特に病院は令和6年度の平均値、中央値を見ても、大変悲惨な状況になっている。無床診療所も経営の実態を示す中央値は2.5%と大変厳しくなっている」と訴えた。

 近年の入院受療の推移にも触れた。入院受診延日数は減少傾向にあり、それに伴い病床利用率も減少のトレンドが続いているとし、「病院の経営悪化の一因となっている」と述べた。

 「新たな地域医療構想」には1.病棟機能に加えて、新たに追加された医療機関機能は複数の選択を可能にする2.病床機能報告の「回復期」を「包括期」に名称や定義を見直す3.予測と異なる実態を踏まえ「現状投影型モデル」から「新たな推計」に変える4.直近の実績を踏まえた修正を行う5.医療機関の健全経営を担保する―といった視点が重要とし、「今回は外来、入院、在宅、さらには介護を含めた地域包括ケアという概念で策定される」との認識を示した。

 「地域医療構想」から「地域医療介護構想」にしていく重要性も指摘。その際には「それぞれの地域における医療資源、介護資源、地理的な状況など、さまざまな要素を含めて、地域に合わせた形で策定することが肝要だ」とした。

 医師偏在に関しては、「大変難しい問題で、特効薬のような一つの手段で解決するものではない」と指摘。解決に向けては
1.公的・公立病院の管理者要件
2.医師少数地域の開業支援等
3.全国レベルの医師マッチング支援
4.保険診療実績要件
5.地域医療貢献の枠組み推進
6.医師偏在対策基金の創設
―の6項目の日本医師会案(昨年8月)を示して、そうした取り組みを進めることが大切とし、6項目を各地域において適時適切に対応していくべきとの姿勢を示した。

 オンライン診療をめぐる動きにも触れ、オンライン診療を医療法に位置付けることによって、「さまざまな分析や規制等を強化できる」とした。また、人口減少のフェーズでは、オンライン診療を適宜適切に使用することが必要になるとし、「利便性、効率性のみを重視するのではなく、医学的な有効性、特に安全性をしっかりと担保した形で進める必要がある」との見方を示した。

 日本医師会が実施した「紙カルテ利用の診療所の電子化対応可能性に関する調査」の結果も紹介した。54.2%が電子カルテの導入不可能(紙カルテのまま)と回答したことに触れ、「電子カルテを義務化していくと、これに対応できない先生はおそらく診療をやめることになる。その地域を守っている先生が少しでもそうならないような形で対応をお願いしたい」と求めた。

 現状や調査結果を踏まえ、医療DXの推進に当たっては、1.全ての医師が、現状のままでもしっかりと医療を継続できることが大前提2.オンライン資格確認以外の医療DX施策の導入の完全義務化は適切でない3.紙カルテのままでも導入できる「医療情報を電子的に共有できる仕組み」の提供も極めて有用4.中小規模の病院はコストと労力の負担が大きく、電子カルテの導入が困難5.国に よる十分な財政支援が必要不可欠6.工程表に余り縛られることなく、地域の医療提供体制にひずみが出ないような形で進める―といった観点を踏まえる重要性を強調した。

 その後、城守常任理事を含めた3人の参考人に対して、各党の代表者8人から法案等に関する質問がなされ、改めて日医の立場を回答した。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる