

| 令和8年度第1回都道府県医師会長会議が9月15日、日本医師会館大講堂で開催され、「令和9年度介護報酬改定について」をテーマに、改定に向けた課題などに関して活発な討議が行われた。 その他、当日は日本医師会から、かかりつけ医機能報告制度の主旨の周知並びに「第32回日本医学会総会2027」への参加の呼び掛けについて協力依頼を行った。 |
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会議は渡辺弘司常任理事の司会により開会。当日は冒頭、去る8月25日に逝去した羽生田俊元厚生労働副大臣/元日本医師会副会長に感謝と哀悼の意を表すため、松本吉郎会長の発声により、参加者全員で黙祷(もくとう)を捧げた。
その後のあいさつの中で松本会長は、令和8年熊本地震や各地で豪雨等の災害が発生していることに対し、お見舞いの言葉を述べるとともに、被災地支援に尽力している全国の先生方に感謝の意を示し、日本医師会として、被災地域の医療提供体制の復興に向け、息の長い支援に努めていくとした。
その上で、今回の会長会議については、六つに分けた都道府県医師会グループのうち、Aグループに「令和9年度介護報酬改定」について議論を進めてもらうと説明。「介護保険施設を取り巻く状況は厳しく、地域の医療・介護提供体制を維持するために対応すべき課題は山積している。その改善を図るべく、これから本格化する介護報酬改定の議論に臨むに当たり、本日は忌憚(きたん)のない意見を寄せてもらいたい」と述べた。
Aグループによる討議及び全体討議
引き続き、堂前洋一郎新潟県医師会長が進行役を務め、Aグループ(青森県、東京都、新潟県、静岡県、京都府、徳島県、高知県、大分県)による討議が行われた。同会長は新潟県医師会として、(1)医療・介護連携の実質評価、(2)有料老人ホーム等の登録制導入における医療機関選択の自由の確保、(3)介護保険施設の報酬底上げ―の重視を要望した。
青森県医師会は、豪雪及び人口減少という地域特性を踏まえつつ、(1)介護報酬本体を含めた安定した賃上げ財源の確保、(2)医療と介護で処遇改善の仕組みが異なるために生じる不合理な差を避けるための制度設計、(3)住宅型有料老人ホームにおける生活支援の評価―などを求めたいとした。
東京都医師会は、都内においては単身や高齢夫婦のみの世帯及び認知症高齢者の増加と、家庭介護力の低下により、「在宅医療・介護で支える」ことが困難になるとの認識を示した上で、高齢者施設を含めた「高齢者の生活の場」全体の量的・機能的充実が不可欠となると指摘。また、大都市部における高額な賃料、土地・建物費、人材紹介手数料等を加味した別枠支援等の必要性を訴えた。
静岡県医師会は、(1)認知症対応・看取り・ACPの普及と推進のための、医療と介護の連携強化と連携の評価体系の見直し、(2)施設入所に伴う、かかりつけ医変更の問題、(3)介護保険制度維持のための財源規模や確保―などの課題があると指摘。日本医師会に対し、次回改定に向けて都道府県医師会の意見を吸い上げ、関係会議で主張するよう求めた。
京都府医師会は、特に人材確保の問題について言及。厚生労働省の試算では、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされているが、近年は採用率の低下が続いている上に、一般職との賃金格差も依然として大きいことを問題視。また、介護支援専門員の減少及び高齢化が進行しているために、介護を必要とする高齢者に必要なサービスを提供できなくなることへの懸念を示した。
徳島県医師会は、事業所存続につながる経営改善、職員の雇用継続実現には施設サービス本体への報酬アップが不可欠との認識を示した他、県内に山間過疎地域を抱えていることを踏まえ、遠隔地加算や過疎加算を創設する必要性を訴えた。
また、介護老人保健施設において入所者が常時服用する内服薬を、包括払いから出来高払いとすることを要望した。
高知県医師会は、ここ数年間で、利用者の減少による老健の閉鎖が起きており、特に、高齢者の人口減少が進んでいる中山間地域でその傾向が顕著に見られることを報告。このままでは県全体の在宅療養の継続が困難になるとし、過疎が進む道府県において施設等の経営改善に取り組むことが急務との認識を示した。
大分県医師会は、他の医師会の問題提起や要望に対して賛意を示しつつ、地域の特性や現場で働く人材同士の「顔の見える関係」に基づいた、確実に機能する連携が重要と指摘。その上で、「医師会は、サービスの担い手である介護保険施設等が制度のゆがみや適正化の名の下に淘汰(とうた)されることがないよう、必要な医療・介護サービス提供体制を維持することに努める必要がある」と主張した。
各医師会の質疑の後、全体討議においては、介護保険における食費について、基準費用額は1日当たり1545円だが、実費はそれ以上掛かっていることへの問題提起等がなされた。
日本医師会執行部からの答弁
都道府県医師会から事前に寄せられていた質問に対しては、佐原博之常任理事が(1)介護事業の経営と処遇改善、(2)地域の実情に応じたサービス提供(新たなサービス類型の創設等)、(3)施設サービス、(4)高齢者施設等と医療機関の連携、(5)有料老人ホームの登録制等の見直し、(6)その他―の6項目に整理した上で、回答を行った。
(1)では、介護保険施設・事業所の経営は依然として厳しい状況が続いており、特に訪問系を中心に収支差率が低下していることを説明。「令和9年度改定では基本報酬の十分な引き上げと、区分支給限度基準額の一体的な検討、加算の簡素化等が必要だ」とするとともに、安定した賃上げのためには毎年の物価・賃金を反映する仕組みも必要ではないかとの認識を示した。
(2)では、2040年に向け、中山間・人口減少地域に対する「特定地域サービス」「特定地域居宅サービス等事業」が創設され、令和9年4月に施行されることを紹介。(3)では、配置医師緊急対応加算の要件や高額薬剤の負担等について、適宜見直しを求めていくとした。
(4)では、協力医療機関の3要件等に係る経過措置が令和9年3月末に終了することを説明した他、「医療介護連携の質とその評価については、連携そのものだけではなく、実績を評価することが重要になる」との指摘に対して、理解を示した。
(5)では、中重度の要介護者を受け入れる有料老人ホームに登録制が導入され、囲い込みへの対策が強化されることの他、新たに「登録施設介護(予防)支援」が導入されること等を紹介。
(6)では、介護保険制度の財源について、根本的な在り方の議論が必要との考えを明示。最後に「経営安定化と人材確保が最優先」とした上で、都道府県医師会及び現場の意見を聞きながら検討を求めていく意向を示した。
報告
最初に、今村英仁常任理事から、令和9年4月23日(金)から開催される「第32回日本医学会総会2027」の概要説明とともに、参加の呼び掛けに対する協力依頼等が行われた。
続いて、城守国斗副会長からは、今年1月より報告が開始された「かかりつけ医機能報告制度」の報告状況等について説明が行われた。
城守副会長は都道府県医師会に対し、管下医師会へ「かかりつけ医機能報告制度」の主旨について改めての説明を求めるとともに、次回報告(令和9年1~3月)においては、全ての医療機関に「1号機能有り」として報告することを強く求めた。
最後に総括した松本会長は、活発な議論に対し謝意を示した上で、OTC類似薬の保険給付の見直しなど、昨今、自己負担のみを引き上げる方策が示されていることに言及。「今回の介護報酬改定でも利用者負担増ばかりを求める方向性が色濃く出てきているが、そういった方向性だけで終わらせてはならない」と述べ、会議は終了となった。
なお、当日は水足秀一郎熊本県医師会長から令和8年熊本地震に対するJMAT活動等について改めて感謝の意が示された。



