日医ニュース
日医ニュース目次 第1008号(平成15年9月5日)

平成15年度第2回都道府県医師会長協議会
各県から活発な意見が続出

 平成十五年度第二回都道府県医師会長協議会が,八月十九日,日医会館小講堂で開催された.冒頭のあいさつのなかで坪井栄孝会長は,来年十月東京で開催予定の世界医師会総会に向けて,日医内に準備委員会を設置することを報告.さらに,都道府県・郡市区医師会でも,日医と共通の認識をもって,自浄作用の活性化を推進してほしいと要望した.

平成15年度第2回都道府県医師会長協議会 各県から活発な意見が続出 医療費の動向等を報告
 つづいて報告事項に移り,岩手県医師会から一件,日医から五件の説明が行われた.
 岩手県医師会からは,重複投薬・重複検査を防ぎ,医療費の無駄をなくすことを目的として,「医療パスポート」を作成したことが紹介された.
 日医からは,まず,青柳俊副会長が,厚生労働省公表のMEDIASを参考に作成した資料を基に,最近の医療費の動向を解説した(詳細は別記事参照 ).
 櫻井秀也常任理事は,平成十三年の医療法改正に伴う「その他の病床」からの変更の届出状況を説明.届出期限が本年八月三十一日となっているにもかかわらず,全国平均の届出率(八月一日現在)が,七六・四%しかないことを示して,早急な対応を要請した.
 西島英利常任理事からは,テレビ会議システムの導入に関する経過報告が行われ,都道府県医師会館への回線工事ならびに導入コスト等に関する調査結果を示し,今秋中に導入を終了し,二月の都道府県医師会情報担当理事連絡協議会から開始したいとした.
 星北斗常任理事からは,(I)日本医師会治験促進センターの設置,(II)研修医のマッチング―について説明が行われた.
 (I)については,(1)このセンターは,日医が主体的な役割を担って,日本で空洞化が進んでいる治験に歯止めをかけ,国内において安全で価値のある適切な治験を行うことを目的としていること(2)当日開催の第五回理事会において設置することが正式に承認されたこと―等を説明.今後については,現在治験センターを運営している医師会と連携を図りつつ,事業を進めていきたいと述べた.
 (II)については,現在,医師臨床研修マッチング協議会が主体となって運営を進めており,最終的な組み合わせの決定は十一月十三日を予定していると報告.九月三日開催予定の担当理事連絡協議会で詳細な説明を行いたいとした.

平成15年度第2回都道府県医師会長協議会 各県から活発な意見が続出 中医協等の動きに注目
 つづいて,協議に入り,櫻井常任理事が,(一)「規制改革の動向」として,(1)医療提供体制関係(2)保健所長関係(3)構造改革特別区域関係(4)全国規模の規制改革要望関係(5)薬事法・血液法改正関係(6)医療分野における規制改革の検討の項目について説明を行った(詳細は別記事 ).
 (二)平成十四年度の政管健保の見通しについて,社会保険庁の発表と日医総研の試算が異なっていることについて,石川県医師会から質問があり,青柳副会長は両者の見解が異なる理由について,次のように説明した.
 (1)平成十四年度の医療費縮小傾向という現実に対し,各保険者が支払った老健拠出金が大きすぎた.これは,支払基金の老人保健特別会計決算が約六千百億円の黒字経常となっていることから明らかである.政管健保では五百十一億円余計に支払われていることになる(2)保険料収納率の低さが影響した面がある.平成十四年度の保険料収納率は,過去五年間で最低の九六・八%という結果だった.つまり,収支両面で異例な環境にあったことが事業運営安定資金の枯渇という決算を生んだ.
 (三)地域の医師会では,行政から「役員のうち監事については外部監事を導入すること」との指摘を受けているが,日医としてはどのような見解をもっているか,鳥取県医師会から質問が出された.
 石川高明副会長は,平成十年二月九日付日医発第九百七十一号で書面で回答しているとおりで,何らの変更もないと答えた.
 (四)「議論から実践へ」について,議論も大切だが,実践が伴わなければ意味がないとして,課題ごとに理解を同じくするブロックあるいは近隣医師会ごとにプロジェクトチームを作ってはどうかという提案が埼玉県医師会からあった.
 回答に立った青柳副会長は,「戦略的にどういうスケジュールで,どう国民に理解を求めるかが重要になってくる.対外広報活動の充実や,国会議員と会って日医の意見を伝える努力をする必要もある.また,他の医療関係団体との連携も必要になる」と述べた.
 (五)中医協の医療経済実態調査について,この調査結果が的確に医療経済の実態を反映しているのか疑義があるとして,沖縄県医師会から質問がなされた.
 青柳副会長は,「医療経済実態調査は,医療機関を無作為抽出して調査を行っているので,統計的な問題はない.問題は有効回答数が病院六〇%,診療所五〇%程度にとどまっていることで,しかも,調査に応じるところは業績がよい医療機関が多い.結果的に,医療機関は経営が安定しているという結論が導かれてしまう.先生方には,ぜひ,地域の医療機関に調査に応じるように呼びかけていただきたい.また,日医は定点調査を行って経時的に業績を把握している.そちらの方も客体数をそろえるためにもご協力いただきたい」と話した.
 (六)「有事関連法と医師の職務について」(福岡県医師会),都道府県知事が防衛庁長官の要請に基づき,医療職に対し業務従事命令を出すことができるといわれているが,医師会としてどう考えているかという質問に対して,羽生田俊常任理事は,「自衛隊法による医療従事者に対する業務従事命令の制度は,法律上は,昭和二十九年から規定されていたが,これまで,その具体的範囲を定める政令が制定されていなかった.今般,医療従事者の範囲を定める政令を整備するにあたり,そのなかに,『医師』が明記されるということで,法律自体が変わったわけではない.また,業務従事命令違反に対する罰則規定もない」と説明した.
 (七)消費税の医療機関に及ぼす影響について,熊本県医師会から質問があり,宮坂雄平常任理事は,「ゼロ税率課税にするのは,現実的にはむずかしいので,診療にかかる消費税を軽減するように各方面にお願いしている.自民党の税調には説明を行い,理解されていると考えている」と回答した.
 (八)「次期診療報酬改定に向けての要望」(三重県医師会)として,(1)医療経営実態の把握方法とその主張の方策について,厚労省が行う医療経済実態調査が実際の経営感覚と乖離しているので,第三者による公正中立な調査機関を設立して調査を行うべきではないか,また,(2)次回改定における厚生労働省試案の分析と検討方法について,厚生労働省案の提示から決定までの期間と,告示から実施までの期間を十分に取るべきではないかとの発言があった.
 青柳副会長は,「どこで行う調査であれ,批判に耐えうるには十分な客体数を得る必要がある.そのようなデータの蓄積ということからも,日医ではORCAプロジェクトも実施しているので,意義を理解し,ご協力いただきたい.また,告示から実施までの期間の延長については,診療報酬の改定の中身によって,会員の要請が変わってくるのではないか」と述べた.

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