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平成28年(2016年)6月20日(月) / 日医ニュース

勤務医こそが少子高齢化対策の力になろう

勤務医のひろば

160620o.jpg 『日医ニュース』の読者の先生方も、少子高齢化に関しては無関心ではいられないだろう。
 1万年前に農耕牧畜が始まって以降、子どもは大家族、地域の中で育つのが普通であった。それがわずか数十年で、母親が一人で子育てする時代へと変わった。この10年にスマホが普及し、スマホを頼りに子育てする母親も散見される。
 ウェブサイトの内容をみると、母親を不安にさせるような情報、根拠のない情報も少なくなく、母親を追い詰めている。その結果が平成27年7月に世間を驚かせた"偽母乳売買"につながる。
 「母乳で育てなければ母親失格」という思い込みを修正する判断力を失ってしまった結果とも言える。
 今こそ、母親が子育てを楽しむことができ、充実した母乳育児を経験できるよう、医療者は乳飲み子を抱える母親に手を差し伸べたい。それがなければ、少子高齢化を止めることなどできない。
 妊娠中、ほとんどの女性は「母乳で育てたい」と思い、全く母乳を与えない女性はごくわずかである。
 メタ解析により、母乳育児には母子共に多くの疾病予防効果があることが示されており、結果として医療費削減にもつながる。
 私は勤務小児科医として子どもの診療を介して母親と接しているが、小児科以外の医師は、直接、子育て中の女性を診療することになる。子育て中の(特に授乳中の)女性は、「自分が受ける治療がわが子に影響するのではないか」と不安になる。治療が必要な場合も、その女性の不安を受け止めて、授乳に支障のない(少ない)薬剤を処方して頂きたい。
 医療者が母親の心に寄り添うことで、母親はわが子と前を向いて歩んでいくことができる。

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