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令和元年(2019年)6月5日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

「令和」の幕開けと財政審の議論について

日医定例記者会見 5月8日

「令和」の幕開けを迎えて

 横倉義武会長は、新しい「令和」の時代の幕開けに際して、所感を述べた。
 同会長はまず、新しい時代においても医療は人が人に行うものであり、医師と患者との信頼関係に基づいて成り立つものであることに変わりはないと強調。医師には、かかりつけ医の心(「和の心」と「寄り添う心」)をもって診療に当たって欲しいとした。
 加えて、今般、外務省が「令和」について外国政府に英語で説明する際には、「Beautiful Harmony」という趣旨を伝えるよう在外公館に指示したことにも触れ、「美しい調和」の心を大切に、「令和」の時代も日本医師会綱領に規定された、医師としての高い倫理観と使命感を礎(いしずえ)に、人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指していくとした。
 更に、「これまでも日医では予防・健康づくりを推進してきたが、『令和』の時代には、今まで以上に予防・健康づくりが重要となり、かかりつけ医が積極的に関わる必要がある」と指摘。日医としても、健康寿命の延伸を目指すために、日本健康会議における取り組みなどと合わせて、引き続き予防・健康づくりを推進し、明るい健康社会の実現に努めていく意向を示した。
 また、同会長は、これからの「令和」の時代について、「人工知能(AI)やICTなどの活用がより進み、今まで見つけにくかった疾病の早期発見が可能となる」との見方を示した上で、「医療技術がどんなに進歩しようとも、日医は『医療の専門家集団』として、国民が必要な医療を過不足なく受けられる社会の実現に向けて尽力し、医師が患者さんに寄り添いながら、安心・安全な医療を提供できるよう、その体制の構築に向けた取り組みを進めていく」と抱負を述べた。

 

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令和を迎えるに当たっては5月1日付で読売新聞全国版に上記の意見広告を掲載した(日医ホームページでもご覧頂けます)

財政審の議論に日医の見解示す

 横倉義武会長は、社会保障を議題として4月23日に開催された財務省の財政制度等審議会(以下、財政審)財政制度分科会の議論に対する日医の考えを述べた。
 同会長はまず、今回の財政審で提示された「金融資産等を考慮に入れた負担を求める仕組みの医療保険への適用拡大」について、「進めていくべき」との見解を示した上で、「受診時定額負担の導入」の提案については、日医がこれまで繰り返し反対してきたものであることを強調。「『日医かかりつけ医機能研修制度』の応用研修の受講者は約3万人であり、ほぼ全ての都道府県で修了者が出ていることから、現行の『日医かかりつけ医機能研修制度』を更に一歩推し進め、今後のあるべき姿について前向きに議論していく必要があると考えている。また、国民に対し、社会保障に関する教育・啓発などを行って意識改革を促し、受療行動を変えて頂く施策も必要である」と述べた。
 受診時定額負担は、経済的な誘導を行うことで、経済格差が受療行動に影響を与えるとして、「少額で軽微な受診を抑制した結果、高額で深刻な受診が増える可能性もあるため、まずは所得の高い高齢者の自己負担のあり方を見直すべき」と指摘した。
 一方、特定機能病院等の大病院における再診時の定額負担については、あまり活用されていない現状を鑑み、実効性をもたせる見直しを行うとともに、対象病院の拡大についても検討していくべきとした。
 この他、財政審の提案のうち、問題の大きい(1)地域医療介護総合確保基金創設前から存在している事業についてもメリハリのある配分調整、(2)急性期病床の次期診療報酬改定での更なる要件厳格化、(3)民間医療機関に対する他の病床機能への転換命令に係る権限等の付与―の3点についても言及。
 (1)については、基金創設前から存在している事業は、看護師等養成所への支援など、地域に大変重要な事業が多いことから、長期的な視野に立って検討することを求めた。
 (2)については、新しい評価体系が2018年度の診療報酬改定で導入されたばかりで、医療機関は自院の将来像を描いて改革をしているところであるとした上で、「改定のたびに入院基本料の要件を改変するのではなく、中長期的な方向性を踏まえた議論を行うべきだ」と述べた。
 (3)については、「地域医療構想の推進において、知事の権限強化による強制的な機能分化は現場に混乱を招き、医療提供体制を崩壊させかねない」と危惧し、知事の権限のあり方を検討する前に、公立病院のあり方について検討し、その地域にふさわしい病床数に調整していくことが重要だとした。
 その上で、横倉会長は、「急激な制度変更による医療費の抑制政策は、後期高齢者医療制度導入の時のように国民の理解を得られず、7月の参議院議員選挙で国民から与党は厳しい審判を突きつけられることになりかねない」とし、所得再分配機能をもつ社会保障が社会の安定に寄与し続けられるよう、改めて財政主導の医療政策を牽制した。

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