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令和元年(2019年)9月20日(金) / 日医ニュース

健保連の提言に対して遺憾の意を表明

健保連の提言に対して遺憾の意を表明

健保連の提言に対して遺憾の意を表明

 松本吉郎常任理事は8月28日、記者会見を行い、健康保険組合連合会(以下、健保連)が23日にレセプトデータの分析を基に、花粉症薬を保険適用から除外するなどの提言を公表したことに対する日医の見解を明らかにした。

 健保連は提言の中で、(1)機能強化加算のあり方として、生活習慣病等の慢性疾患を有する継続的な管理が必要な患者に対象を限定する等、現行の算定要件を見直す、(2)診療報酬制度に生活習慣病治療薬の適正な選択(フォーミュラリ)の導入、(3)診療報酬制度にかかりつけ薬剤師に限定した繰り返し利用可能な処方箋(リフィル処方)の導入、(4)調剤報酬のあり方として、調剤基本料、薬剤服用歴管理指導料の算定要件の見直し、(5)花粉症を主病とする患者にOTC類似薬1分類のみ投薬する場合は薬剤を保険適用から除外する――などを求めている。
 同常任理事はまず、「そもそも、レセプト分析だけでは診療行為の理由や背景が不明なため、中医協で検証調査を行っている」と述べ、現在、その検証調査を踏まえた診療報酬のあり方について、丁寧な議論が進められている中での健保連の提言は、「中医協の検証調査や総会等での議論をないがしろにするものである」と厳しく批判。
 また、「日医が目指しているのは、患者さんが早期に医療機関を受診した際、かかりつけ医がしっかり診て個々の症状に合わせた適切な指導や処方を行い、必要な疾病管理をして、患者さんの健康を守ることにある。そのことが、ひいては無駄な医療費の削減にもつながるはずである」との立場を強調。そのための初・再診料などの技術料が、薬価や調剤技術料と比べて相対的に低すぎる方が問題だと訴えた。
 「機能強化加算」については、「かかりつけ医機能を強化した医療機関の体制を評価した加算であり、かかりつけ医機能を有する医療機関を普及させることによって、かかりつけ医をもたない患者でも、かかりつけ医をもつきっかけが増える。その結果、外来医療における大病院と診療所の役割分担を促進していくという、今後の外来医療のあるべき姿を狙ったものである」とその趣旨を説明し、理解を求めるとともに、「患者の受診回数や複数の医療機関への受診などの分析だけでは、この狙いが果たされているのかを検討するのは難しい」として、健保連の分析に疑問を投げ掛けた。
 また、機能強化加算は、全ての医療機関が算定できているわけではないことや、現行の診療報酬が、かかりつけ医機能の評価には程遠いことを改めて強調した。
 「フォーミュラリの導入」に関しては、「6月の中医協で主張した通り、診療報酬で評価することはなじまない」と強調。「日医としては、いわゆるナショナルフォーミュラリとして、日本の保険医療で使用可能な医薬品リストは『薬価基準収載医薬品』であって、これについての議論は引き続き中医協でしっかり行う」とした上で、それ以外の参考となるリストは、「国や学会、民間の取り組みとして、医学・薬学的知見に基づき一定程度、自由度をもって行われるべき」との考えを示した。
 「リフィル処方の導入」について、健保連がその対象を「病状が安定し、繰り返し同じ処方を医師から受けることが見込まれる患者」としていることに対しては、慢性疾患患者の疾病管理の質を下げるリスクがあり、慎重に検討すべき」とした上で、「リフィル処方を行う医師は、薬を長期間処方してあまり患者を診ない医師ということになるが、保険財政を理由にそのような診療を促進していくのはいかがなものか。被保険者の健康を守る立場であるはずの保険者の政策提言としては適当ではない」とした。
 また、「花粉症を主病とする患者に対し、1処方につきOTC類似薬を1分類のみ投薬する場合は、当該薬剤を保険適用外とすべき」との提案に対しては「スイッチOTC化されたから医療用ではなくなるということではなく、医療上必要な医薬品は保険でも対象とされている」との厚生労働省医薬・生活衛生局長の見解を示し、「日医としてもそうあるべきだと考えている」と主張。重ねて、重篤な疾患だけを保険給付の対象とすれば、社会保険の恩恵が薄れ、足りない部分は民間の医療保険に入れば良いという考えになり、その結果、経済的弱者等に適切な医療が提供されなくなるなど、国民皆保険が崩壊することにもなりかねないと指摘。「健保連は、財政の厳しさを患者に責任転嫁するのではなく、加入者の健康づくり、予防活動を支援する保険者業務の拡充など、国と協議して改善できることをやるべき」とした。
 更に、同常任理事は、スイッチOTC医薬品の購入価格は、医療機関を受診し、OTC類似薬を処方された場合の自己負担額に比して、1日につき3~32円ほど安い場合があるという健保連の主張に対し、医療機関を受診した際の「薬剤費+その他の医療費」と「市販薬の購入価格」を比較しているが、その他の医療費とは、初診料、処方箋料、調剤基本料などの技術料であり、「これは医師、薬剤師の技術の対価は不要であると言っているに等しく、言語道断である」と批判。中医協委員がこのような誤解をしていることに遺憾の意を示し、「保険者として、被保険者の健康の向上・維持への配慮が全く見られず、失望した」と述べた。
 その他、同常任理事は当日の中医協総会において、湿布・ビタミン剤・保湿剤などといった市販薬に類似した医療用医薬品について保険適用外としたり、自己負担を増やす方向で"厚労省が検討に入った"との一部日刊紙の報道に対して、厚労省事務局に事実確認を行ったことにも言及。担当課長より、「記事にあるような医師が処方する軽症向けの市販類似薬について、患者負担の引き上げを検討している事実はない」との回答を得たことを報告した。
 ※同日、松本常任理事が行った「消費税率10%への引き上げに伴う診療報酬改定の告示を受けて」に関する記者会見の模様は「日医君だよりNo.166」をご参照下さい。

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