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令和元年(2019年)10月5日(土) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

全世代型社会保障改革に向けて

 第4次安倍第2次改造内閣が9月11日に発足し、新たに「全世代型社会保障検討会議」が設置されることとなった。これを受け、横倉義武会長は、全世代型社会保障改革に向けた日医の見解として、健康保険の傷病手当金を雇用保険の傷病手当で賄うことや、消費税以外の新たな税財源も検討することなどを提案した。
 横倉会長は、全世代型社会保障検討会議では、まず年金と介護の議論が先行して行われ、その後に医療に関して医療費抑制策と患者・国民負担増について厳しい議論が行われる見込みであるとした上で、「財政健全化を主張する立場からは、先日も健康保険組合連合会から提案がなされたように、後期高齢者の窓口負担の引き上げ、市販類似薬について保険給付範囲からの除外や償還率の変更などを始めとした従来の国民皆保険制度の理念を変更する改革案が示されている」と牽制。
 年金・介護に関しては、70歳までの就業機会の確保と年金受給年齢の選択肢の拡大などが議論される見込みであることを踏まえ、「人生100年時代において、安心の基盤は健康である。社会に参加し続けられるようにするためには、高齢になっても健康を維持し、病気になっても重症化を防ぐという体制をしっかりとつくり上げていくことが重要である」と強調する一方、健康でない人を差別することがあってはならないと指摘。そのためには、予防・健康づくりの取り組みと健康寿命を延伸する政策が重要だとした。
 また、健保連が提案している医療に関する検討項目のうち、(1)後期高齢者の窓口負担の引き上げ、(2)市販類似薬の保険給付範囲からの除外や償還率の変更―に対する日医の考え方を説明した。
 (1)については、「高齢になると医療を必要とする機会が増えるため、生活に過度な負担が掛からないようにするのが望ましいが、現役世代の負担も鑑み、低所得者にも十分配慮しつつ、国民が納得できるよう、十分に議論を尽くしていくべき」と一定の理解も示した。
 (2)については、8月28日の定例記者会見で松本吉郎常任理事が日医の見解を表明しているが、改めて「スイッチOTC化されたから医療用でなくなるということではなく、医療上必要な医薬品は保険でも対象とされるべき」との考えを強調。「早期に診断して早期に治療することが医療の鉄則である」と述べた。
 更に社会保障は、自助・共助・公助のバランスを取りながら、患者負担を増やすだけではなく、時代に対応できる給付と負担のあり方を模索すべきだとした。
 給付と負担のあり方に関しては、共助である保険料について、被用者保険の保険料率が国家公務員共済組合7・99%、組合健保9・22%などとなっていることから、協会けんぽの10%に合わせて公平化することが必要であると主張。
 また、雇用情勢の改善に伴い、失業等給付積立金が5・8兆円、雇用安定資金が1・3兆円に達し、安倍政権発足後の6年間で雇用保険料率は1・35%から0・9%へと、0・45ポイント低下したにもかかわらず、積立金は0・8兆円増加していることから、「雇用保険料を引き下げずに、休業時の毎月給付である健康保険での傷病手当金を雇用保険の傷病手当で賄うことも必要ではないか。傷病手当金は市町村国保の加入者には支給されておらず、多様化する働き方に対応していない」と指摘した。

新たな税財源についても検討を

 更に、公助である税負担についても、高齢者人口の増加をにらんでの検討が必要であるとし、「安倍総理大臣は『安倍政権でこれ以上(消費)税率を引き上げることは全く考えていない』と述べているが、例えば死亡した場合の税のあり方や、賃上げや設備投資が行われない場合のいわゆる内部留保への課税など、消費税一本足打法ではなく、新たな税財源についても併せて検討すべきである」との姿勢を示した。
 最後に横倉会長は、「日本で暮らして良かった、日本で過ごして幸福だったという全世代型社会保障制度をつくりたい」と述べるとともに、今後、関係各方面に医療現場からの意見を届けていく意向を示した。

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