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令和3年(2021年)3月5日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

医師の働き方改革の進捗状況を報告

日医定例記者会見 2月10・17日

医師の働き方改革の進捗状況を報告

 松本吉郎常任理事は、医師の働き方改革の進捗状況を報告した。
 医師の働き方改革については、昨年12月に厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」が中間取りまとめを行った後、本年2月に医療法等の改正法案が閣議決定されるなど、制度の開始に向けた準備が進んでいる。
 同常任理事は、質問や意見の多い八つの項目〔(1)医療機関が行うべきこと、(2)2024年度からの医師の働き方の新制度施行、(3)2024年度の新制度施行に向けて取り組むこと、(4)コロナ禍と医師の働き方、(5)宿日直の許可、(6)医師の副業・兼業の取り扱い、(7)大学病院における働き方、(8)医師の働き方の制度理解〕についてそれぞれ説明を行った。
 説明のポイントや回答は以下のとおり。

(1)医療機関が行うべきこと

 2019年4月に施行された働き方改革関連法により、労働時間の把握・制度の見直し、有給休暇の取得義務、産業保健機能の強化などの規定は医療機関でも遵守(じゅんしゅ)しなければならない基本的事項となっている。医師も決して例外ではないことを医療機関は認識する必要がある。

(2)2024年度からの医師の働き方の新制度施行

 コロナ禍等の影響もある中、2024年度からの同制度の開始を懸念する意見に対し、日本医師会は、スケジュールありきで拙速に進め、地域医療にひずみが生じることは絶対に避けなければならないと考えている。一方で、勤務医の長時間労働の問題は医療界の積年の課題である。日本医師会は10年以上前から勤務医支援に取り組んできており、施行まで3年の時間がある現時点で先延ばしについては慎重な議論が重要である。

(3)2024年度の新制度施行に向けて取り組むこと

 今回の医療法改正では、医療機関が医師の労働時間管理、健康確保措置に真摯(しんし)に取り組み、改善することが求められている。
 労働基準法による罰則付きの規制が地域医療に影響を及ぼす懸念も指摘されているものの、これは"地域医療を守っていくために取り組まなければならない基本的事項を医療法によって規定したもの"という点を医療機関や関係者は再認識する必要があり、2024年に向け、今からできることを少しずつ改善し、取り組むことが重要となる。

(4)コロナ禍と医師の働き方

 災害その他避けることのできない事由で、臨時の必要がある場合に、使用者が行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において労働時間を延長したり休日労働をさせることを認める趣旨の労働基準法第33条第1項については、厚労省から新型コロナウイルス感染症への対応も要件に該当するとの見方が示されている。
 先述のとおり、労働法制上は一定程度柔軟な対応が可能なものの、医療機関は労働時間の状況や疲労の蓄積が認められる場合には、医師による面接指導などを実施し、適切な事後措置を講じる必要がある。

(5)宿日直許可

 宿日直の許可について、全国統一基準をつくるべきという意見に対しては、日本医師会として、医療機関や地域によって宿日直中の働き方はさまざまであり、統一基準は難しいと考えている。また、つくったとしても結果的に現実に沿ぐわない、複雑かつ厳格な制度になることを危惧(きぐ)している。
 一方で必要書類については、労働基準監督署間で統一されていない部分もあるため、統一を厚労省に申し入れている。
 また、宿日直の許可は、さまざまな内容での取得パターンが考えられるため、各医療機関での体制の工夫が必要となる他、日本医師会としても、日本産婦人科医会などの各医会や社会保険労務士会等と連携し、許可取得の推進と事例収集などを進めている。

(6)医師の副業・兼業の取り扱い

 派遣先で働いた時間については、派遣された医師の自己申告により管理を行うこととされたため、医療機関は、自己申告をベースに労働時間の把握を行う仕組みの構築が必要になる。特に、派遣医師の多い大学病院や基幹病院については確実な取り組みが求められる。

(7)大学病院における働き方

 全国81カ所の国公私立大学病院を対象とした文部科学省の「医師の働き方改革に関するアンケート調査」では、大学病院における制度への理解が浸透していない現状が示された。
 日本医師会として、教育や地域医療の継続の観点から、全ての大学病院にはB水準または連携B水準の申請とともに、医療水準の維持向上のためにC―1水準とC―2水準の申請をしてもらいたいと考えている。文科省には、厚労省と連携し大学病院における制度の理解浸透に取り組むことを要請する。

(8)医師の働き方の制度理解

 各種水準等の用語やその内容は、これまでの議論を熟知していない者に理解することは困難であるため、日本医師会として、制度理解と取り組みの推進に資するよう、会内の医師の働き方検討委員会と連携し、病院における医師の働き方についてのさまざまな好事例を集積し情報提供を行っていく。
 また、本年4月1日には、オンラインで「都道府県医師会医師の働き方改革担当理事連絡協議会」を開催し、都道府県医師会の役員のみならず、郡市区医師会・病院団体・社労士会等で医師の働き方改革に関心のある方にも参加頂く予定となっている。その後も引き続き情報提供の場を設ける。
 松本常任理事は最後に、厚労省に対し、本制度に関する医療機関への繰り返しの周知を求めるとともに、全国の行政組織にも理解を深めてもらうことの重要性を強調。「働き方改革を医療機関と一緒に円滑に進めて頂くとともに、しっかりと取り組んでいる医療機関に対しては、行政指導について謙抑的な運用をお願いしたい」と理解を求めた。

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