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令和3年(2021年)4月20日(火) / 日医ニュース

衆議院厚生労働委員会で意見陳述 現場の苦労に報い、支えとなる改正に

衆議院厚生労働委員会で意見陳述 現場の苦労に報い、支えとなる改正に

衆議院厚生労働委員会で意見陳述 現場の苦労に報い、支えとなる改正に

 今村聡副会長は3月24日、衆議院厚生労働委員会に参考人として出席し、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」(以下、改正案)について意見陳述を行った。

 今村副会長は当日、(1)医師の働き方改革(医療法)、(2)各医療関係職種の専門性の活用、(3)地域の実情に応じた医療提供体制の確保―という三つの観点から意見を述べた。

医師の働き方改革(医療法)

 (1)では、「今回の改正で、医師の働き方に関しては地域医療とのバランスを見ながら改革していくとされた点は評価できる」とした上で、「医師の厳しい勤務環境の改善は、日本医師会が10年以上検討してきた課題であり、医師の労働時間短縮への取り組みや健康確保策の推進は今後も重要になる」と述べた。
 その一方で、「2024年4月施行というスケジュールで拙速(せっそく)に進めると、地域医療の混乱を招きかねない。コロナ禍において、現場が医師の働き方改革に取り組める状況かどうか、注視していく必要がある」と指摘した。
 医師の労働時間短縮計画を調査する「評価機能」と、臨床従事6年目以降の医師の高度技能の認定を取り扱う「特定技能の審査組織」については、「地域医療の確保、医療の質の維持と進歩にとって大変重要」と強調。「持続的・安定的に業務遂行ができるよう、体制整備を進めていく必要がある」と述べた。
 加えて、働き方に関する新制度を早期に幅広く浸透させる必要があることを踏まえ、特に、大学病院と基幹病院に対しては、派遣医師の引き揚げで地域医療に影響が出ないよう、早期の周知が求められるとした。

各医療関係職種の専門性の活用

 (2)では、タスクシフト・シェアについて、「新たな職種の創設ではなく、既に認められている業務の着実な実施を基本とすべきであり、タスクシフト・シェアを受ける側の医療関係職種に対する支援も必要である」と指摘。今回の法改正による業務の拡大に際しては、医療安全の観点から、相当程度の教育・研修体制とメディカルコントロールが必須であり、併せて、需給見通しに基づく養成の視点も重要になるとした。
 また、いわゆる"Student doctor"に関する制度創設などの改正については、「日本医師会としても長年提唱してきたものである」と説明。医療安全と国民の医療への信頼を守るために、CBT(コンピュータベースドテスティング)やOSCE(客観的臨床能力試験)の不断の改善並びに、診療参加型臨床実習の充実を要請した。

地域の実情に応じた医療提供体制の確保

 (3)では、①地域医療構想の実現に向けた医療機関の再編支援②新興感染症等の感染拡大時における、医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置付け③外来医療機能の明確化・連携―について、意見を述べた。
 ①では、病床機能再編支援事業の対象地域・医療機関の選定や執行に当たって、当事者だけではなく、地域の関係者間の十分な協議と合意に基づいて行うことを担保するよう求めた他、「都道府県行政や病床機能再編支援補助金申請者は、同補助金の交付条件を満たしている場合であっても、地域医療構想調整会議や医療審議会等の場において、十分かつ丁寧な説明を行い、関係者の理解を得ることが必要」とした。
 ②では、「平時から有事に備え、新興・再興感染症の感染拡大や災害等にも強い医療提供体制を構築すべき」と強調。日本医師会として、医療計画におけるいわゆる「5疾病5事業」に新興・再興感染症対策を速やかに追加することを求めてきたことや、新興・再興感染症による医療崩壊を防ぐためにも、感染症法上の予防計画だけではなく、感染症への対応と通常の医療が両立し得る医療提供体制の整備が必要なこと等を説明した。
 ③では、都道府県が、地域の医療機関の中から「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関として明確化することとなるとして、地域における協議の場において、各医療機関の自主的な取り組み等の進捗状況を共有するだけでなく、地域における必要な調整を行えるようにすることを求めた。
 また、「これらの機能を担う医療機関は、紹介外来だけではなく、状態が落ち着いたら逆紹介によって、再診患者を地域に戻す役割も担うべきである」と述べるとともに、その促進策は、地域の関係者の納得が得られるものにすべきであるとした。
 その他、外来機能報告の対象とされた有床診療所については、現在、地域に密着した医療施設として限られたマンパワーで運営されていることを踏まえ、適用に当たっては、時期、報告事項等の設定や丁寧な説明など、特段の配慮を求めた。
 同副会長は最後に、「各地の医療現場は、公か民か、あるいは施設の大小や機能にかかわらず、新型コロナウイルス感染症への対応に大変な努力をしている。今回の制度改正は、そうした現場の苦労に報い、支えとなるものでなければならない」と強調。
 その上で、「大規模な制度改正は想定外の問題を生じやすい他、硬直的な制度運用がなされれば、現場に不安や混乱を招きかねない」と述べ、改正法の施行に際しては、政省令・告示や関係通知等による具体的な制度設計を含め、地域の実情に応じた柔軟な運用とすること及び、国や地方公共団体に対して、地域の不安惹起(じゃっき)や混乱の発生を未然に防ぐためにも、現場に対して丁寧かつ詳細な説明を行うことを要請した。
 併せて、今回の医療法等改正による制度改革を確実に進めていくためには、さまざまな財政的支援が不可欠であるとしてその検討を求めた。
 その後に行われた各政党からの質疑では、新型コロナ対策や医師偏在不足、地域医療構想、タスクシフト・シェア等に関する質問に対して、従来の日本医師会の見解を改めて説明した。

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