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令和5年(2023年)1月5日(木) / 日医ニュース

令和5年 年頭所感

令和5年 年頭所感

令和5年 年頭所感

 明けましておめでとうございます。会員の皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。
 また、新春の寿(ことほ)ぎも束の間に、昼夜を分かたず、新型コロナウイルス感染症への対応を始め、あらゆる医療の現場でご尽力頂いている会員、医療従事者の皆様には心からの敬意を表すとともに感謝を申し上げます。
 わが国の医療界が新型コロナウイルス感染症と向き合い始めて、丸三年の月日が経とうとしています。この間、先生方始め医療従事者の皆様におかれましては、発熱外来における診療やワクチン接種、あるいは通常医療の分担など多岐にわたる取り組みを頂くとともに、物心両面で筆舌に尽くしがたいご負担をお掛けしてきたものと拝察いたします。
 こうした皆様の献身により、わが国の新型コロナウイルス感染症による死亡率は諸外国と比べて極めて低く抑えられてきました。この事実は、世界に誇るべきものであると思います。
 昨年はこれまでで最大規模となる「第7波」を経験しましたが、新たな変異株の出現、季節性インフルエンザとの同時期の流行が予想されるなど、今後の動向はなお予断を許しません。
 そのような中にあっても、全国の先生方が医療の現場で培われた知見をもってすれば、必ずやこの感染症を克服して穏やかな日常を取り戻し、明るい未来へとつなげていくことができるものと確信いたします。
 新型コロナウイルス感染症に限らず、わが国の医療提供体制を支え、更に前へ進めていく原動力は、全国津々浦々で日々、患者さんと向き合っておられる先生方お一人お一人の経験に裏打ちされた情報やご意見、ご提言の数々に他なりません。そして、このような経験知の総和が、学術専門団体である日本医師会のさまざまな施策や政策提言を形づくっていくものと考えます。
 日本医師会は昨年11月に「地域における面としてのかかりつけ医機能~かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて~(第1報告)」を公表しました。地域に根差して診療されている先生方には、自院での診療以外に、平日夜間・休日輪番業務などの「地域の時間外・救急対応」や、学校医・産業医活動などの「地域保健・公衆衛生活動」等を連携して行い、地域住民の健康を守るため、二次医療圏や市区町村等それぞれの地域を面として支えて頂いています。「地域における面としてのかかりつけ医機能」は、医療機関間の連携とネットワークにより、更に強く発揮され、そこから得られる膨大な知見は、わが国の医療提供体制を充実・発展させる上での貴重な財産となります。
 日本医師会はこうした活動に深く感謝申し上げるとともに、引き続き全力で支援して参ります。併せて、国民の皆さんに対しても、地域医療が地域医師会及び会員の先生方の多大なるご尽力の下に成り立っていることを広く知って頂くよう努めて参ります。
 このような「面としてのかかりつけ医機能」を一段と高めるためには、医師会の組織強化が不可欠となります。その一環として、日本医師会では令和5年度より、現在臨床研修医に適用している会費減免の期間を医学部卒業後5年目まで延長することといたしました。
 この取り組みを通じて、より多くの医師が医師会活動に参画しその重要性を体感頂くとともに、わが国の医療を支える担い手として、共に歩みを進めて頂きたいと考えております。また、組織強化の取り組みは、三層全ての医師会が足並みを揃えることによって実効性が高まるものですので、地域医師会の先生方におかれましては、格段のご理解とお力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 昨年6月、私は日本医師会長に就任する際の所信表明において、会務運営の四つの柱として、「地域から中央へ」「国民の信頼を得られる医師会へ」「医師の期待に応える医師会へ」「一致団結する強い医師会へ」をお示しいたしました。
 いずれも今後の日本医師会の活動における重要な目標となるものですが、それらの大前提として、まず「国民の健康と生命を守ること」を所信の冒頭に申し上げました。
 これは医師会として、また一人の医師として、最も基本的な責務であると考えております。医師会の全ての活動は、国民の健康と生命を守るという目標に向けたものでなくてはなりません。医師会の組織強化の取り組みも、自らの利益擁護のためではなく、わが国の医療のあり方を誤りなき方向に導くための大局的視点に立って進めることが肝要です。
 医療は、患者さんやその家族と医療提供者との相互の信頼関係を礎として成り立つものです。国民の健康と生命を守るためには、まず、医療の現場における患者さんとの信頼関係が揺るぎないものでなくてはなりません。
 一方、残念なことに昨年も、地域医療に情熱的に取り組まれていた医療従事者の方々が、診療現場において暴力の犠牲となる事件が起こりました。医療従事者が安心して医療に打ち込むことができるよう、医療現場の安全確保対策を進めることは喫緊の課題ですが、信頼関係に根差した医療を取り戻すことも、わが国の医療に課された重要なテーマであると考えます。
 この他にも、医師の働き方改革に向けた取り組みや、次の感染症への対策、次期医療計画と介護保険事業計画等の策定、更には診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の「トリプル改定」に向けた社会保障財源の確保など、医療界を取り巻く重要課題は山積しています。これらの課題の解決に向けては、関係当局を始め政府関係者に対して、医療現場の実情や課題を正確に伝え、科学的根拠に基づいて自由に議論できる関係性を築き維持していくことが不可欠です。今後も会員の先生方から頂いた数々のご提案を国の医療政策に反映できるよう精一杯努めて参ります。
 医療の現場に生起する課題が複雑、多様化するに従い、日本医師会に期待される役割も多岐にわたって参りました。対応の迅速さやよりきめ細やかな柔軟さもこれまで以上に重要となっています。今年も一つ一つの課題に対して、日本医師会の総力を挙げ、兎のような素早さと勢いで取り組んで参る所存です。
 新しい年が会員の先生方お一人お一人にとって充実した幸多き年となりますことを祈念申し上げ、年頭に当たってのごあいさつといたします。
 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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