渡辺常任理事
渡辺常任理事
令和8年度学校保健講習会が4月19日、日本医師会館大講堂で開催され、現場が直面する喫緊の課題として、熱中症、自殺対策、性教育、花粉症などについての講演が行われた。
渡辺弘司常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで松本吉郎会長(茂松茂人副会長代読)は、今日の学校現場を取り巻く環境はかつてない速さで変化し、教育・医療・福祉の連携により、高度で総合的な判断が求められる状況になってきていることを強調。本講習会で、学校医の職務を改めて確認するとともに、養護教諭との連携強化につながることに期待を寄せ、「未来の学校保健を共につくり上げていく創造的な場となることを強く願っている」とした。
引き続き、松本吉郎日本学校保健会長(弓倉整日本学校保健会専務理事代読)のあいさつの後、加藤智栄日本医師会学校保健委員会委員長/山口県医師会長を座長として、6題の講演が行われた。
(1)学校医の職務について講演した渡辺常任理事は、主な仕事を、①定期・臨時健康診断の実施②学校保健・安全計画の立案③学校の環境衛生の指導・助言④疾病の予防・感染症対策⑤健康相談・保健指導⑥救急処置―に整理して説明。
学校における健康診断の目的については、「学校生活を送るに当たり支障があるかどうかについて、疾病をスクリーニングし健康状態を把握することと、学校における健康課題を明らかにして、健康教育に役立てることにある」とした。
内科健診における脱衣の問題については、着衣のままであれば学校医はその結果に責任を負えないため、同意書を求める方向で文部科学省と話し合っているとし、健診の意義を伝えるSNS用の動画を作成する考えを示した。
学校産業医については、学校医と産業医の役割を区別すべきと改めて強調し、学校保健安全法と労働安全衛生法の違いを理解した上で、健診項目を明確にした契約を行うよう呼び掛けた。
(2)「養護教諭から学校医にお伝えしたいこと」と題して講演した吉田真弓全国養護教諭連絡協議会長は、健診に関する養護教諭へのアンケートで寄せられたコメントを紹介。調整に当たる養護教諭の多くは、忙しい学校医に時間的な負担を掛けられないと思いつつも、できるだけ落ち着いた状態で子どもたちに健診を受けさせたいとの思いもあり悩んでいるとした。
感染症対応や困った時には、学校医の助言が大きな支えになっているとし、「困ったら○○先生がいると思って執務に当たれることの心強さや安心感は、本当にありがたい。そんな関係性を作りながら、生徒たちの成長を見守っていきたい」と強調。養護教諭として、小学校から中学校、また高校への申し送りをしっかりと行うとともに、保護者及び医療機関との連携に努めていくとした。
(3)学校における熱中症対策について説明した吉田慶太スポーツ庁スポーツ戦略官は、昨年の熱中症による搬送人数が10万人を超え、調査開始以来、最多であったことを報告。特に6月の多さが特徴的で、暑くなる前からの計画的な取り組みが重要になるとした。
文科省における熱中症対策に関しては、①教室や体育館等の空調整備促進②学校における「危機管理マニュアル」の活用③「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」や動画、ポスター・リーフレットなどによる普及啓発活動―などを行っていると説明。
子どもは熱中症であっても「疲れた」としか言わないことなどに注意を促し、刻々と容態が変わっていく緊急時の対応について、地域の実情を踏まえた危機管理マニュアルを作成・見直ししていくことの重要性を訴え、学校医には、学校や子どもたちの状況を踏まえた医学的知見によるアドバイスを求めた。
(4)こどもの自殺対策について講演した小野雄大こども家庭庁支援局総務課長は、令和7年度の自殺者総数は1万9188人と統計開始以降で最少となる一方、小中高生の自殺者数は538人と最多であったことを報告。小中高生は男女共に自殺未遂から1年以内に再び自殺を試みるケースが過半数を占め、特に女子小学生や女子高校生では自殺未遂から1カ月以内に自殺に至る割合が高いことから、「自殺未遂をした子や、希死念慮を口にしている子をいかに支援につなげることができるかが、とりわけ重要になる」と強調した。
また、政府としては、「こどもの自殺対策緊急強化プラン」(令和5年)に基づき、リスクの早期発見や的確な対応、要因分析に努めるとともに、改正自殺対策基本法(同7年)を踏まえた地方公共団体による子どもの自殺対策に係る協議会の設置などを進めており、引き続き子どもを取り巻く関係者による一体的な支援強化を促進していくとした。
(5)「学習指導要領に基づく性教育の考え方・進め方」について講演した横嶋剛日本女子体育大学体育学部スポーツ科学科教授は、性に関する内容は、①小学校では「思春期の体の変化」②中学校では「生殖に関わる機能の成熟と適切な行動」「エイズ及び性感染症の予防」③高校では「現代の感染症とその予防」「思春期・結婚生活など生涯の各段階での健康」―を教えているとし、学校医が性に関する指導に当たる際には、子どもへの教育段階を踏まえた内容とするよう配慮を求めた。
また、個別指導については、発達段階を踏まえた上で、学校全体の共通理解を図り、保護者の理解を得る必要があるとし、プライバシーや実施場所など、集団指導以上の配慮が求められるとした。
(6)「花粉症重症化ゼロ作戦〜学校保健との連携~」と題して講演した岡野光博国際医療福祉大学医学部耳鼻咽喉科学教授は、アレルギー性鼻炎・花粉症が重症化するとQOLが低下し、学業への悪影響も見られるとのデータを示すとともに、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、2022年から「花粉症重症化ゼロ作戦」を実施していることを紹介。
2030年までに「花粉症を含むアレルギー性鼻炎」の重症化を防ぐことを目標に、「市民・国民向け」「医師・医療機関向け」「小児向け」のアクションプログラムを展開しているとし、花粉症への先制医療を行うことで、ライフステージを通じて重症化を予防する考えを示した。
また、学校医には、授業、課外活動などでの花粉を考慮した環境整備を図ることや、花粉症の児童・生徒等への対応指導が求められるとし、「花粉症重症化ゼロ作戦」のホームページから連絡すれば、花粉症の授業用スライドの提供が可能であるとした。
最後に渡辺常任理事が閉会のあいさつを行い、講習会は終了となった。
| お知らせ |
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| 令和8年度学校保健講習会を収録した動画並びに資料は日本医師会ホームページ内のメンバーズルーム〔映像配信(講習会・研修会等)〕に掲載していますので、ご活用願います(メンバーズルームをご覧いただくにはログインIDとパスワードが必要となります)。 https://www.med.or.jp/japanese/members/flv_movie/20260419school/ ![]() |




