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令和5年(2023年)3月5日(日) / 日医ニュース

学校保健活動の推進に向けた課題と対応を共有

学校保健活動の推進に向けた課題と対応を共有

学校保健活動の推進に向けた課題と対応を共有

 令和4年度都道府県医師会学校保健担当理事連絡協議会が2月9日にWEB会議により開催された。
 今回の連絡協議会は長引くコロナ禍による運動不足、スクリーンタイムの増加による近視や睡眠不足、いじめ・不登校・自殺、家庭環境等、児童・生徒達はさまざまな問題を抱えており、その解決が大きな課題となっていることを踏まえ、国がどのようなことを考えているかを都道府県医師会と日本医師会の役員との間で情報共有を図るために行われたものである。
 渡辺弘司常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで松本吉郎会長は、「人生100年時代と言われる中で、ライフステージ初期に健康の基礎を獲得することが大変重要になっており、生活習慣や身体的・精神的発達の基礎が形成される子どもの健康を『面』として守っていくという意味からも学校医の重要性が増している」と指摘するとともに、学校保健活動推進に向けた引き続きの協力を求めた。

学校保健に関する行政の取り組みを報告―文部科学省

 議事ではまず、横嶋剛文科省初等中等教育局健康教育・食育課健康教育調査官から、(1)学習指導要領に基づく健康教育、(2)学習指導要領に基づく具体的な指導(性に関する指導)、(3)カリキュラム・マネジメント―について説明が行われた。
 (1)では、保健教育の基礎的な事項を説明した上で、現場では「知識を伝達する授業から課題を解決する授業」へ転換するための工夫が行われているとした。
 (2)では、現学習指導要領でどのような性教育が行われているかを紹介。いわゆる「はどめ規定」については、「教えてはならないという意味ではなく、全ての子どもに共通に指導するべきではないという趣旨である」と述べ、発達の段階を踏まえた個別指導等は可能とした。
 (3)では、医師が学校医や講習会の外部講師などの立場で学校保健活動に参画している例を紹介。特に学校医としての引き続きの協力を要請した。
 次に山田泰造同局特別支援教育課長が、(1)特別支援教育の現状、(2)令和5年度予算案、(3)最近の動向〔①通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援②病気療養児に対する支援(遠隔教育)③障害者権利条約④医療的ケア児への支援〕―について説明を行った。
 (1)、(2)では、義務教育段階の全児童生徒数が平成24年度から約1割減少する一方、特別支援教育を受ける児童生徒数は倍増していることなどを紹介した上で、障害のある児童生徒が十分な教育を受けるためのさまざまな財政的措置も行われているとした。
 (3)では、通常の学級に在籍し、特別な教育的支援が必要な児童生徒の割合が増えていることについて、関係者の理解が進んだことによって認識されるようになったことがその要因の一つとして挙げられると説明した。
 医療的ケア児については、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」施行後、特別支援学校の医療的ケア児及び看護師・認定特定行為業務従事者の数が増え、教育現場と医療の連携が進んでいるとする一方、その取り組みには地域差もあるとして、医師会に引き続きの協力を求めた。
 清重隆信同局児童生徒課長は、「生徒指導提要(生徒指導の実践に際し、教職員の共通理解を図り、組織的・体系的な生徒指導の取り組みを進めることができるようにするための、生徒指導に関する基本書)」の改訂について説明。前回の改訂から10年以上が経過していたことから昨年改訂が行われ、これまでは困難な事態への対応が中心であったものに、未然防止や課題の早期発見などの観点が新たに盛り込まれたとした。
 また、いじめに関する状況については、「いじめ防止対策推進法」成立以降、積極的な認知は進んでいるものの、自殺等の深刻な事案が後を絶たないことなどを解説。今後は教師等が個人としてではなく組織的に対応することや、そもそもいじめを生まない環境づくりなどが必要になると強調した他、不登校に関する現状等も紹介した。
 山田哲也同局修学支援・教材課長並びに安井順一郎同局教科書課長は、「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」について紹介。「1人1台端末、高速通信ネットワーク等の学校ICT環境を整備・活用することで、個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実など教育の質の向上を目指す構想」であり、現行の学習指導要領で初めて位置付けられた「情報活用能力」の育成の観点からも重要なものとなるとした。
 一方、デジタル機器の利用に関しては、姿勢の問題や近視等健康上の課題もあることから、文科省として日本医師会と連携しながら同構想を進めていく意向を示した他、学習用デジタル教科書の現状についても紹介した。
 その後の協議では、①北海道②岩手③福島④千葉⑤神奈川⑥大阪⑦和歌山⑧愛媛⑨高知⑩佐賀⑪鹿児島―の各道府県医師会から事前に寄せられた質問や意見に対し、渡辺常任理事と文科省が回答した。
 総括を行った茂松茂人副会長は、学校保健に関して、元々児童生徒を取り巻くさまざまな課題があった中で、更に新型コロナが発生したことで、子ども達の心身には大きな影響が出ているとし、今後は、医療界と教育界が連携を図りながらこうした問題に対応していくことが重要になるとの考えを示した。

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