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令和5年(2023年)5月5日(金) / 日医ニュース

学校保健をめぐる今日の課題や国の取り組み等を共有

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 令和5年度学校保健講習会が4月2日、オンライン形式で開催された。
 講習会は担当の渡辺弘司常任理事の司会で開会。冒頭ビデオメッセージであいさつを行った松本吉郎会長は、現在の児童生徒達が抱える解決すべき課題として、「長引くコロナ禍による運動不足の問題」「スクリーンタイムの増加による近視や睡眠不足の問題」「いじめ・不登校・自殺等の問題」「家庭環境の問題」などを挙げ、本日の講習会が、それらの解決につながることに期待感を示した。

文科省から3題の中央情勢報告

 続いて、松村誠日本医師会学校保健委員会委員長/広島県医師会長が座長を務め、中央情勢報告が行われた。
 宇高章広文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課企画官はまず、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが見直されることを踏まえた学校の対応について説明。感染対策については、引き続き、文科省としても支援を行っていくとして、「感染症流行下における学校教育活動体制整備事業」などの活用を求めた。
 学校医に関する諸課題については、学校医の確保が困難な地域が出てきていることを挙げ、「学校医の果たす役割の重要性からもぜひ、更なる協力をお願いしたい」と述べた。
 その他、令和5年度予算に盛り込まれた「学校健康診断情報のPHRへの活用に関する調査研究事業」など、学校医に係る四つの事業を紹介。子ども達の健やかな成長に向けて引き続き学校保健の充実に努めていく考えを示した。
 生方裕文科省初等中等教育局特別支援教育課企画官は、特別支援教育の現状として、障害児への社会の理解が進んだこともあり、特別支援教育を受ける児童生徒の数が増加していることなどを報告。
 最近の動向としては、「特別教育に携わる教師の専門性の向上を図る取り組みが進められている」「病気療養児の教育機会の確保のため、オンデマンド型の授業を認めるなどの要件緩和が行われている」「医療的ケア児への対応のため、教育委員会に対して、医療的ケア児支援センターとの連携を促している」こと等を紹介した。
 清重隆信前文科省初等中等教育局児童生徒課長は、生徒指導提要の改訂内容を概説。「生徒指導」に関しては、「発達支持的生徒指導(児童生徒への声掛け、授業、行事等を通じて、社会的資質・能力を育成する指導)という新たな概念の導入」「チーム学校(校長のリーダーシップの下、教職員や学校内の多様な人材がそれぞれの専門性を生かし、子ども達に必要な資質・能力を身に付けさせる)という考えの明記」など、大きな見直しを行ったとした。
 また、提要には個別の課題として、「いじめ」「自殺」「不登校」などが触れられているとして、その内容を説明。「学校の中だけでは対応困難な問題も増えてきている」として、「学校医だけでなく、地域の医療機関にもぜひ、その解決に向けた協力をお願いしたい」と述べた。
 学校保健委員会小委員会報告では、弓倉整同委員会副委員長が、学校保健委員会の下に本年1月に設けられた小委員会において、令和版の学校医の手引きの作成が進められていることを報告。作成に至った背景には、学校医の成り手不足があることにも触れ、「手引きを作成することで、少しでもその問題の解決につなげていきたい」と意欲を示した。
 午後からは、引き続き、松村委員長が座長を務め、3題の講演が行われた。
 山田泰造前文科省初等中等教育局特別支援教育課長は、2014年に日本が批准した障害者権利条約について、昨年行われた対日審査勧告に基づき、障害者権利委員会から、通常の学校に特別支援学級があることなどに懸念を示す勧告を受けたことを報告。しっかりと受け止め、対応していく姿勢を示した。
 「交流及び共同学習」(障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に参加する活動)については、「その回数を増やすべきであるが、ただ一緒に活動すれば良いというものではない」とした他、特別支援学級を置かず、通級による指導が実践されている事例などを紹介した。
 その他、通常学級に障害のある児童生徒を受け入れる方策として、「校内支援体制や通級による指導、特別支援学校からの小中高等学校への支援の充実」「インクルーシブな学校運営モデルの創設」などが提言されたことを説明。今後、提言の内容に基づき、文科省としても取り組みを進めていきたいとした。
 日比謙一郎スポーツ庁政策課企画調整室長は、スポーツ庁が実施した「令和4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果として、(1)令和元年度の調査以降、8種目の体力合計点が低下し続けている、(2)1週間の総運動時間が420分以上の割合は令和3年度より増加したが、以前の水準には戻っていない、(3)睡眠時間が「8時間以上」と回答した割合が減少する一方、スクリーンタイムが「4時間以上」と回答した割合が増加している―ことなどを報告。「大変厳しい状況にある」として、文科省として、運動習慣を身に付けてもらうため、「幼児期からの運動習慣形成プロジェクトの実施」「一人一台の端末を活用した体育授業の充実」「アスリートの派遣等による体育授業等の充実・高度化の促進」などの取り組みを進めていることを紹介した。

こども家庭庁創設の意義を改めて強調―自見参議院議員

 自見はなこ参議院議員は、成育基本法に示された理念の実現のために行った自身の活動の成果として、(1)子どもの弱視の早期発見・治療に向けて、自治体が屈折検査機器を導入するための補助が2022年度から導入された、(2)側弯症の早期発見のための検査機器を用いた仕組みの調査・実証研究が2022年度から開始された、(3)先天性難聴児の検査・支援の予算が2020年度予算から倍増された―ことなどを報告し、その活用を求めた。
 4月1日に発足したこども家庭庁については、創設までの歩みや組織の概要を説明。「こども家庭庁に成育部門が設けられたことは、成育基本法成立後、先生方が行ってきた日頃のさまざまな活動が結実したことの表れだ」として、その創設の意義を改めて強調。今後は、年内の閣議決定を目指し、内閣府大臣政務官として、「こども大綱」「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」などの策定に向けた検討に取り組んでいくとした。
 最後に渡辺常任理事が「本日の成果をぜひ、地域医療や学校保健の現場で生かして欲しい」とあいさつを行い、講習会は終了となった。
 なお、当日の模様は、今後、日本医師会ホームページのメンバーズルームに掲載する予定としている。

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