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令和6年(2024年)4月20日(土) / 日医ニュース

「在宅医療が支える暮らし~住み慣れた地域の中で~」をテーマに開催

「在宅医療が支える暮らし~住み慣れた地域の中で~」をテーマに開催

「在宅医療が支える暮らし~住み慣れた地域の中で~」をテーマに開催

 第1回在宅医療シンポジウムが3月20日、「在宅医療が支える暮らし~住み慣れた地域の中で~」をテーマに、日本医師会館大講堂で開催され、在宅医療の推進のためには、医療・介護・福祉における多職種の連携が重要であることが改めて確認された。

 本シンポジウムは、在宅医療への期待がますます高まる中、在宅医療を実践するさまざまな立場からの取り組みを取り上げ、今後の在宅医療の提供体制や、あるべき姿について考えることを目的として初めて行われたものである。
 当日は、江澤和彦常任理事の司会で開会。冒頭あいさつで松本吉郎会長は、「わが国では、『治し、支える医療』のニーズが高まる中、誰もが住み慣れた地域で、人生の最期まで自分らしく暮らすことを目指しており、在宅医療はその要の役割を担う不可欠な存在である」と述べた上で、令和6年度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定においても、医療・介護・福祉の連携の重要性がこれまで以上に示されたと強調し、本シンポジウムが実り多きものとなることに期待感を示した。

基調講演

 続いて、2名の講師による基調講演が行われた。
 谷口倫子厚生労働省医政局地域医療計画課外来・在宅医療対策室長は、令和6年度から開始される第8次医療計画における在宅医療の体制整備について概説。その中では、在宅医療・介護連携の一層の推進に向けて、「在宅医療に必要な連携を担う拠点」と「在宅医療・介護連携推進事業」との連携が重要だとして、2県による好事例を紹介するとともに、在宅医療は多職種の連携が非常に大切であることから、各職種の関わりについて議論整理を行ったことなどを説明した。
 眞鍋馨厚労省保険局医療課長は、今回の診療報酬改定における在宅医療に関する改定の概要について解説。今回の改定については、「近年に無い社会経済状況への対応が求められるとともに、ポスト2025を見据えた対応を行ったことから、非常に幅広いものとなった」と振り返りつつ、「同時改定の際には、『医療においては生活の視点を』『介護においては医療の視点の継続を』念頭に、今回の改定でも患者がなるべく在宅に近い環境でいられるようにということを目指した」と私見を述べた。

講演

 その後、6題の講演が行われた。
 川越正平あおぞら診療所院長/松戸市医師会長は、かかりつけ医が在宅医療に取り組む意義を強調した上で、多疾病併存患者と最期まで伴走するために必要な三つの素養を取り上げるとともに、各地域における機能が強化されたかかりつけ医の比率を高めることを地区医師会として目指しているとした。
 また、松戸市医師会の具体的な取り組みを例に挙げ、「在宅医療経験の深化が、かかりつけ医の機能を強化することにつながる」と指摘した。
 小浦友行ごちゃまるクリニック院長は、令和6年能登半島地震の経験を踏まえた平時と有事の二つの事例を紹介した上で、平時の在宅ケアに求められることについて解説。その要点は、プライマリ・ケアのACCCC(Access to Care:近接性、Continuity of Care:継続性、Comprehensive Care:包括性、Coordination of Care:協働性、Contextual Care:文脈性)と同じであり、「身近に末長く、丸ごとみんなで、あなたらしくを応援する」ことが必要であるとするとともに、「有事への備えとしては、平時から受援力を高めておくことが重要になる」と主張した。
 第4回「日本医師会 赤ひげ大賞」の受賞者でもある髙橋昭彦ひばりクリニック院長は、自身が行っている小児在宅医療の経験を基に、小児在宅医療の役割は「子どもと家族の今と今後を考えること」にあると指摘。
 また、医療的ケア児と家族の暮らしについては、「保育や教育、入浴、介護負担の増加や、親亡き後の見通し等の悩みが出てくる18歳の壁など、多岐にわたる課題がある他、医療的ケア児のきょうだいの支援も非常に重要になる。その解決のためにも多くの医師に小児在宅医療に取り組んで頂き、将来、小児在宅医療という単語が特殊ではなくなることを望む」と述べ、課題解決に向けた支援と理解を求めた。
 織田良正織田病院副院長・総合診療科部長は、地域医療、地域包括ケアシステムのネットワークの窓口の機能を担う他、薬剤師や管理栄養士等を病棟に配置し、多職種協働で入退院を支援したり、MBC(Medical Base Camp)を設置して、多職種協働で退院後の在宅生活までのケアを行っているなど、地域における自院の役割や取り組みなどを詳説。今後については、在宅療養支援病院が地域包括ケアシステムにおけるネットワークのハブとなることで、地域のニーズに合ったより良い在宅療養支援を行うことができるのではないかとの考えを示した。
 中島朋子全国訪問看護事業協会常務理事/東久留米白十字訪問看護ステーション所長は、自身が経験した三つの事例を基に、「その人らしく生きる」ことに関する自身の考えを説明。地域包括ケアシステムを深化・推進する以外に、地域住民も含めた互助力が求められるとした他、「本人の意思を軸に、暮らしを医療と生活の両面から支えることが訪問看護師の役割でもあり、在宅医療の目指すところだ」と強調した。
 小柳亮新潟県医師会理事/在宅医療推進センター長は、新潟県在宅医療センター整備事業等について概説。医師会主体の在宅医療ネットワークの構築に向けて、在宅医療連携拠点である医師会在宅医療推進センターを中心に、「第8次医療計画での明確な位置付けと機能拡充」「入退院支援ルールの策定による医療介護連携、病診連携推進」などを行っているとした他、今後は、医師会においては医師会共同利用施設として、医療計画においては連携拠点として、地域社会においては社会的共通資本として、在宅医療推進のモデルケースとなることを目指して取り組みを進めていく意向を示した。
 その後は、フロアを交えた意見交換が行われ、最後に釜萢敏常任理事が「日本医師会としても、日本の在宅医療の更なる充実に向けて、引き続き、関係者の皆様と共に考えを深めながら、より一層取り組んでいきたい」と総括し、シンポジウムは閉会となった。
 なお、本シンポジウムの模様は日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載されているので、ぜひ、ご覧頂きたい。
 https://www.youtube.com/watch?v=8ZYwIO0ZE58

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