日本医師会は6月3日、4月6日に開催した日本医師会・日本歯科医師会合同シンポジウム「健康長寿に必要なこと―知って欲しい! お口の重要性」の動画を、公式YouTubeチャンネルで公開した。
日本歯科医師会との初の合同開催となった本シンポジウムは、国民に医科、歯科両面の観点から早期の予防と対策の必要性を認識してもらうとともに、医科歯科連携について知ってもらうことで、健康長寿の実現に役立ててもらうことを目的として、日本医師会館大講堂で行ったものである。当日は、約1600名にも及ぶ応募者の中から抽選で選ばれた約470名が参加した。
冒頭、ビデオメッセージであいさつを行った松本吉郎会長は、口腔機能の低下が全身の健康に大きな影響を与えることが明らかとなってきたことを踏まえて今回のシンポジウムを開催したと説明。今後も国民の健康を守るため、医科歯科連携を更に進めていく考えを示した。
続いてあいさつした高橋英登日歯会長は、「元気で働くことができる高齢者を増やし、最期までおいしく食事をしてもらうことが我々の目標だ」と述べるとともに、参加者に対して、健康で長生きするためにもぜひ、このシンポジウムで知識を深めていってもらいたいとした。
その後は、四つの講演が行われた。
飯島勝矢東京大学高齢社会総合研究機構長/未来ビジョン研究センター教授はオーラルフレイルについて、(1)歯の喪失や、食べることなどのさまざまな機能の軽微な衰えが重複したものであるが改善できる、(2)加齢によって増加していくが高齢者だけの問題ではない―ことなどを解説。自分でできるチェック項目などを示しながら、その予防の重要性を指摘するとともに、産官学民の協働によりその予防対策を行っている平塚市の取り組みを紹介。今後は、学会ばかりでなく、日歯とも連携しながら、オーラルフレイル対策を進めていく考えを示した。
沼部幸博日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座教授/日本歯周病学会前理事長は歯周病について、歯を失う最大の要因であり、日本人の約47・9%が罹患(りかん)し、年齢とともにその罹患率も増えていることなどを報告。歯周病は歯を失うばかりでなく、がんや糖尿病、アルツハイマー型認知症などの原因にもなるとして、プラークコントロールの意義を強調するとともに、「その予防のためにも歯科医院で定期的に検診を受けて欲しい」と述べた。
黒瀬巌常任理事は、喫煙が歯周病や糖尿病、がんなどの生活習慣病の原因や増悪因子となるばかりでなく、互いに悪化を促進させるものになっていることなどを概説。「これらを予防し、活力あるWell-being社会を実現すべきであり、禁煙がその実現のための第一歩となる」と強調するとともに、参加者に対してかかりつけ医ばかりでなく、かかりつけ歯科医ももつよう呼び掛けた。
小林隆太郎日本歯科医学会副会長は誤嚥性肺炎について、災害時においてもその対策が重要になっているとした上で、その予防のために日頃からできることとして、①正しい姿勢で食事を取る②良くない食べ方をしない③うなずき嚥下(えんげ)―などを紹介。楽しく食事をし、楽しく話をするなど、健康的に年を重ねていくためにも、口腔健康管理〔普段からの口腔ケア(セルフケア)と定期的な歯科受診(プロフェッショナルケア)〕が大切になるとして、その重要性を強調した。
引き続き行われた実演指導では、伊藤明彦日本歯科医師会常務理事が当日配布した資料を基に、オーラルフレイル対策として、口や舌の体操、パタカラ発声練習などを紹介。朝昼晩の1日3回実施するよう求めた。
その後に行われたパネルディスカッションでは、オーラルフレイルの予防や医科歯科連携について、演者間で活発な討議が行われた。
その中で、黒瀬常任理事は禁煙推進に向けた日本医師会の活動として、小冊子『禁煙は愛』の作成など、国民に正しく理解してもらうための取り組みばかりではなく、かかりつけ医機能研修の中で禁煙対策を取り扱っている他、国の支援を得るため、国会議員に対して理解を求める活動なども行っていることを報告。
医科歯科連携に関しては、その推進のための課題として医師、歯科医師が互いに必要だと思うようになることを挙げるとともに、そのための手段として、パーソナルヘルスレコード(PHR)を活用することを提案した他、各地域の医師会・歯科医師会の果たす役割も極めて重要になると指摘した。
その後は、事前に募集した質問に演者から回答を行い、シンポジウムは終了となった。
なお、当日の模様は公式YouTubeチャンネルの他、6月4日にはその採録を読売新聞全国版の朝刊に掲載した。