会議に参加した世界の若手医師
会議に参加した世界の若手医師
日本医師会では今年度より、若手医師の医師会活動への参画支援の取り組みの一環として、世界医師会(WMA)理事会・総会に併せて開催される医学部卒後10年以内の医師を対象とした会議に全国6つの地域ブロックの協力の下、若手会員(医学部卒後10年以内の日本医師会員)を派遣しています。 そこで、今号では今年4月にウルグアイで開催された、WMAモンテビデオ理事会に併せて行われた若手医師の会議に参加した2名の若手会員の感想などをご紹介します。 |
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横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター内科 岩本雄太朗(関東甲信越ブロック推薦)
このたび、同世代の若手医師との交流、取り組みについて大変興味があったため参加させて頂きました。
会議の内容としては、日本ではあまりなじみのない「非感染性疾患(NCDs)」やplanetary healthなど、世界的に課題となっているテーマを学ぶことができ、大変勉強になりました。
NCDsに関しては医師、患者どちらに対しても予防に関しての教育が重要だと感じました。
例えば、高血圧患者に対しての降圧薬の強化に関して医師側は副作用の懸念、患者側は薬が増えることに対しての抵抗があることによってClinical inertiaに陥ってしまうケースを臨床の場ではしばしば経験します。NCDs予防の重要性を双方が認識することでこのようなケースを減らすことができるのではないかと考えます。
しかし、指導的立場のメンターも不足しており、NCDsに関しての教育が不十分であることも問題点として挙げられます。フランスの取り組みとしてNCDsに関しての学生からの継続教育は大きな役割を果たしていると感じました。
このように各国の取り組みについて共有することで、課題解決に向けて建設的な議論ができたと感じています。
会議以外の時間では交流を通して同世代の医師の働き方を知ることができました。今回参加されていた医師は既に世界医師会ジュニアドクターズネットワーク(WMA―JDN)のメンバーとして活動しており、日々の診療以外に世界が抱える医療の課題の解決に向けて取り組んでおり、尊敬の念を抱くとともに大変刺激となりました。
このような大変貴重な機会を賜り、日本医師会の先生方には心より感謝申し上げます。今回の経験を生かして今後の診療に励んで参りますので、今後ともご指導ご鞭撻の程、何とぞよろしくお願い申し上げます。
京都府立医科大学附属北部医療センター救急科 大江 熙(近畿ブロック推薦)
京都府医師会若手ワーキンググループの一員として、初期研修医向けの教育セミナー「屋根瓦塾KYOTO」を開催しています。このたび、WMA理事会に併せて開催された若手医師の会議に参加し、ウルグアイでの貴重な経験を得ました。
WMA―JDNは卒後10年以内の医師が中心となる国際ネットワークで、教育・アドボカシー・国際協力を通じて、より健康な世界の実現を目指す活動を行っています。
今回の会議ではNCDsがテーマであり、日本を含む多くの国で急増するがん、糖尿病、メンタルヘルスなどへの対策や教育のあり方について議論が交わされました。
救急医療に携わる中で、高齢化や医療負担の増大といった課題に日々直面しています。今回の会議では、NCDsが世界的に主要な健康課題となっていることを改めて認識し、その多くが生活習慣や社会環境に起因し、介入可能であることを学びました。
こうした議論を通じて、高齢化や医療費増加といった日本の現状も、社会構造変化の「結果」に過ぎず、その根本的対策としては若年層からの生活習慣病やメンタルヘルスへの予防的介入が不可欠であると強く感じました。これは、2040年問題の負荷を軽減するための現実的な糸口となり得ると考えています。
世界での学びは、日本の医療を客観視する大きな機会となりました。自ら体験し、得た知見を国内に還元する意義は大きく、多くの若手医師にこの会議への参加を勧めたいと思います。
最後に、この機会を下さった関係者の皆様に心より感謝申し上げます。