閉じる

令和7年(2025年)10月22日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

令和7年病院の緊急経営調査結果 ―令和5年度、6年度実態報告―

 城守国斗常任理事は、「令和7年 病院の緊急経営調査 ―令和5年度、6年度実態報告―」の結果を公表した。医業利益の赤字割合が66.7%から69.5%に増え、経常利益の赤字割合が48.8%から62.2%に大幅に増加するなど、病院は危機的な経営状況に陥っていると指摘。地域医療を守るためには、「過度の適正化を行うのではなく、早期の補助金並びに期中改定、コスト増に見合った診療報酬上の評価、入院料の手当てを緊急かつ強力に行うことが必須だ」と強調した。

 調査は、令和5、6年度の病院の経営実態を早急に把握し、令和8年度診療報酬改定の議論に備えることを目的として日医総研が実施。調査対象は日本医師会A1会員の病院管理者(院長)で、今年6月21日~7月31日に調査した。1318の病院から回答があり、そのうち有効回答は1211だった。

 主な調査結果は以下のとおりとなっている。

 全体の収支について、令和5年度の医業利益率はマイナス5.2%、令和6年度はマイナス5.4%で更に悪化。経常利益率は令和5年度のマイナス0.6%から、令和6年度はマイナス2.6%となり、大幅に悪化した。施設当たりの経常利益赤字額は約4倍超となり、1億640万円の赤字だった。

 医業利益の赤字割合は66.7%から69.5%に増え、経常利益の赤字割合は48.8%から62.2%に大幅に増加した。令和6年度の経常利益の大幅な悪化と赤字割合の増加は、令和6年4月のコロナ補助金等の廃止によるもので、補助金がない状況だと、現状の診療報酬では病院経営が成り立たないということになる。

 開設主体別では、いずれの開設主体の病院も医業利益率はマイナスだった。医業費用が医業収益を上回る危機的な状況にあり、令和6年度の医業利益の赤字割合は国立92.5%、公立96.6%だった。医療法人も63.9%で公私共に極めて厳しい状況にある。経常利益率は対前年度で大きく悪化し、医療法人は56.4%が赤字だった。

 物価高騰・人件費上昇の影響を大きく受け、全体の医業収益は対前年で2.6%増、医業費用は2.8%増で、増収減益だった。医療法人は医業収益と医業費用の伸びが同率だった。2年連続の赤字で借入が困難となり、様々な経費削減を実施せざるを得ない状況だと推察される。

 医業費用について、費目別に伸び率を見ると、給与費は対前年で2.5%増、材料費は4.8%増、委託費は3.9%増、経費は4.1%増だった。特に、給与費と材料費の増加が経営を更に圧迫している要因となっている。

 国公立を除く病院類型別では、一般病院、精神科病院、療養型病院いずれも厳しい経営状況だった。療養型病院の令和5年度の経常利益率は3.0%だったが、一般病院、精神科病院と同様に、令和6年度は1.6%に低下。精神科病院は令和6年度に経常利益率がマイナスに転じ、赤字割合は56.8%だった。

 病床規模別に目を向けると、小規模、大規模など病床規模に関わらず、経常利益率が1.5~3ポイント低下し、経常利益の赤字割合はいずれも大きく悪化した。

 「その他の収益」である補助金については、コロナ関連補助金や水道光熱費関連補助金等の廃止・減額によって、病院全体ではコロナ関連補助金が令和5年度の100床当たり3393万円から令和6年度には119万円に激減。水道光熱費関連補助金も減少している。

 医療人材確保のため、病院が人材紹介会社に支払っている人材紹介手数料を調べると、病院の100床当たりの手数料は令和5年度から6年度に掛けて7.9%増加。特に医療法人での負担は大きく、令和6年度は100床当たり平均843.5万円だった。

 城守常任理事は調査の結果を受け、病院はコロナ以前から厳しい経営状態にあったが、近年の急激な物価高騰・人件費上昇の影響で、医業費用の伸びが医業収益の伸びを上回り、経営が更に悪化しているとし、「まさに危機的状況だ」と訴えた。

 また、9月17日の定例記者会見で公表した「令和7年 診療所の緊急経営調査」についても改めて触れ、診療所も1.令和6年度は前年度から大幅に悪化し、減収減益になった2.診療科や地域に関わらず経営が悪化しており、直近の決算期ほど利益率が低く、診療所の経営環境の悪化が顕著に進んでいる―ことなどに言及した上で、「この状態が続けば、令和7年度は診療所も医療法人の半数で経常利益が赤字になることが予想される。診療所は小規模であり、資金調達ができなくなり、多くが事業の継続を断念することにもなりかねない」と危機感を示した。

 このままでは多くの病院や診療所は経営が立ち行かなくなり、患者を守る地域医療の崩壊に繋がるとの懸念を表明。「過度の適正化を行うのではなく、早期の補助金並びに期中改定、コスト増に見合った診療報酬上の評価、入院料の手当てを緊急かつ強力に行うことが必須だ」と述べた上で、医療を守るため、医療機関の経営安定化を国に強く求めていく姿勢を強調した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる