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令和7年(2025年)10月22日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

令和8年度予算編成に向けて

 茂松茂人副会長は10月22日の定例記者会見において、令和8年度予算編成に向けて、次期診療報酬改定で必要な対応を説明した他、経済成長の果実である消費税増収分の活用や、公定価格で運営されている医療機関等における賃上げ環境の整備を求めるとともに、OTC類似薬の保険給付の見直しに対する日本医師会の考えを説明した。

 まず同副会長は、次期診療報酬改定において、1.賃金上昇2.物価高騰3.医療の高度化4.高齢化5.過年度の対応不足分―について、しっかり対応する必要があると主張。「骨太の方針2025」で示された2025年春季労使交渉の平均賃上げ率は5.26%等となっていることに触れた上で、「医療は公定価格で運営されている上、診療報酬改定は2年に一度だけであり、医療機関は賃金上昇や物価高騰等に対応できるような状態ではない」と強調した。

 特に改定2年目の対応については、10月1日の定例記者会見で松本会長が説明したとおり、賃金・物価が上昇する中で、診療報酬が2年間同じ点数のままなら、改定2年目に厳しくなるのは「自明の理」と指摘。同会見で示した2つの仕組みを実現するのが重要なポイントであると改めて主張した。

 また、政府が予算編成の時期を迎えるに当たり、同月14日には43の参加団体から成る「国民医療推進協議会」の総意として、1.令和7年度補正予算での対応2.令和8年度予算での対応3.財源を純粋に上乗せするいわゆる「真水」による大規模で抜本的な対応―の3項目を求める決議を採択したことを報告。今後、これらについて強く求めていくとした。

 次に国民医療費の財源構成について、2022年度と2023年度を比較すると、公助(税金)の割合が減少していることを指摘。その要因として、消費税収が令和4年度の14.3兆円から令和7年度は16.3兆円と2兆円増えている一方、増収分の使途における「社会保障の充実」の項目は、令和4年度の4.01兆円から令和7年度は4.1兆円と0.09兆円しか増えていないことに言及。消費税増収分の多くは「後代への負担のつけ回しの軽減」として使用され、「社会保障の充実」には使用されていないことから、国民は消費税による社会保障の恩恵を実感できていないとして、「経済成長の果実である消費税収増を社会保障に活用すべき」と強調した。

 更に、厚生労働省の「令和7年度賃金引上げ等の実態に関する調査」にも言及し、「医療、福祉」分野における1人平均賃金の改定率は、他産業と比べて低く、最下位であることを指摘。令和7年の公共工事設計労務単価が全国全職種単純平均で前年度比6.0%引き上げられた建築業(令和6・7年計10.2%)と比べても、「医療、福祉」分野の賃上げは半分以下(令和6・7年計4.8%)に留まっているとして、「民間に賃上げを求めるのであれば、公定価格で運営されている医療機関等において賃上げが可能となる環境を整えることが不可欠である」と主張した。

 続いて、OTC類似薬に対する日本医師会の考えに言及。「OTC類似薬の保険給付の見直しは、安全性、有効性、経済性の面で国民にとって負担や不利益が大きいことから時期尚早であり、反対である」と述べるとともに、検討を行う際には慎重に検討する必要があると強調。「国民皆保険制度は公的保険制度であることから、民間保険の『大きなリスクは共助、小さなリスクは自助』という考え方ではなく、国民生活を支える基盤として『必要かつ適切な医療は保険診療により確保する』という理念が今後も堅持されなければならない」と主張した。

 更に、OTC類似薬の保険給付の見直しに係る懸念点として、1.医療機関への受診遅延による健康被害2.患者・家族の経済的、物理的な負担の問題3.市販薬へのアクセスの問題―について指摘。2.については、医療用医薬品であれば1~3割の負担である一方、一般用医薬品ではその10倍以上の価格になるものもあり、その全額が自己負担になることに言及。特に影響が大きいのが難病や心身障害者、生活保護受給者、小児の医療費助成等で助成の対象外となる方だとして、「病気で苦しむ方や経済的弱者の負担が重くなる」との懸念を表明した。

 最後に、今後、これらの項目について、政府・与党に働き掛けていくと述べた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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