勤務医のひろば


栃木県は、宇都宮・県北・県南・県西・県東・両毛の六つの2次医療圏に分かれている。県庁所在地である宇都宮医療圏と二つの大学病院を有する県南医療圏は、2040年までは高齢化は進行するが、大きな人口減少は無い。しかし、それ以外の医療圏は待ったなしの人口減少と高齢化が始まっており、各医療圏での立場と問題点が異なるため、医療圏内だけで解決できないことが多くなっている。
「医療者の派遣」「越境受診」「オンライン診療」「医療機関の集約〜効率化」などの医療圏を超えたさまざまな協力体制についての話し合いを進めるに当たり、留意しなくてはならないのは、医師数・医療機関数・行政予算などの医療資源に恵まれている医療圏や郡市医師会・市町が一人勝ちにならないようにすることである。多くの意見がある中で、多角的な視野を持って判断を下していかなければならない。これは医療の「恒常性・冗長性」を担保する上で必要なことであり、医療機関同士の連携・集約・統合でも同じことが言える。最終的には医療者の考える損得ではなく、2040年に向けて県民のためになる医療体制を構築することが、誰もが納得せざるを得ない目標である。
少子高齢化時代の地域医療構想には、各医療圏・各郡市医師会・各市町・各医療機関・各大学・開業医及び勤務医がそれぞれの個別最適解を求めず、枠を超えて話し合うことが必要だ。その上で、戦うべきは多くの医療者の中にある「不変バイアス(変わりたくない)」「現在バイアス(将来の大きな利益より、現在の小さな利益を優先する)」「楽観バイアス(今まで何とかなっていたのだから大丈夫なはず)」の三つであり、これからはそれぞれが大義のために何を譲れるか、そして、県民のための全体最適解を考えていく時代である。
今後は、勤務医の視点を超えて、医療の質を担保した上で病床数をコントロールし、効率的で恒常性・冗長性の高い医療体制の構築を目指したい。



