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令和7年(2025年)12月20日(土) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

「第25回医療経済実態調査報告―令和7年度実施―」について

日本医師会定例記者会見 11月26日・12月3日

「第25回医療経済実態調査報告―令和7年度実施―」について

「第25回医療経済実態調査報告―令和7年度実施―」について

 江澤和彦常任理事は、令和7年度に実施された「第25回医療経済実態調査」(以下、実調)の結果について、日本医師会の見解を説明。病院・診療所共に経営の悪化は深刻であり、存続の危機にあるとして、賃金・物価が上昇する中でも、病院・診療所が存続できるよう、緊急かつ十分な対応を求めた。
 江澤常任理事は、令和6年度の一般病院全体の損益率はマイナス7・3%で、赤字施設の割合は67・6%になるなど、前年度に続き約7割に上っているとして、「厳しい経営状況になっている」と指摘。また、全病床に占める精神病床の割合が80%以上の病院では、医業利益率(損益率に相当)がマイナス4・2%からマイナス6・1%に悪化しており、令和6年度の赤字割合は約7割になったとした。
 他方、令和6年度の医療法人の一般診療所の損益率について、平均値は令和5年度の8・3%から令和6年度は4・8%に、中央値は令和5年度の5・6%から令和6年度は2・7%に大幅に悪化しているとした上で、「中央値が平均値を大幅に下回っている」と強調。更に、令和6年度の赤字施設の割合は37・4%と約4割に上ったとして、同常任理事は「病院の約7割、診療所の約4割が赤字という看過できない状況になっている」と訴えた。
 また、一般病院は、いずれの開設主体も医業収益は増加した一方、総損益率は悪化し、増収減益となったことに言及した上で、「総損益率が悪化した要因は、賃金・物価の上昇によるコスト増の他、新型コロナ関連の補助金や特例の終了による影響が大きい」と考察した。
 一方、医療法人の一般診療所では、「入院収益なし」「あり」共に、医業収益は減少した他、損益率は平均値、中央値共に令和5年度から大幅に悪化し、減収減益になったとした。
 医業・介護費用については、人件費・物価等の高騰の影響を受け、給与費や材料費等の諸費用が病院・診療所共に上昇していることに対し、同常任理事は「物価高騰が続く中で費用を抑え続けることには限界がある」と強調。また、給与費は伸びているものの、病院・診療所共に他産業の賃上げを大きく下回っているとして、「この状況が続けば、医療人材の他産業への流出に歯止めがかからず、人材確保がより一層、困難になる」と危惧した。
 一般病院の総損益率については、ほぼ全ての地域で、どの病床規模でも悪化している他、急性期一般・地域一般のいずれの入院基本料を算定している病院でも赤字が更に拡大しているとして、「現在の診療報酬では経営が成り立たないことが浮き彫りとなっている」とした。
 また、令和7年3月決算の医療法人では、令和6年度全体に比べて損益率が低い傾向にあり、特に、減収減益の診療所ではその傾向が強く見られるとして、「物価上昇は継続しており、令和7年度は更に経営が悪化し、赤字の施設が増加する可能性が高い」との懸念を示した。

病院・診療所が存続できる緊急かつ十分な対応を要求

 以上の結果を踏まえて江澤常任理事は、「病院・診療所共に経営の悪化は深刻であり、存続が危ぶまれる状況が明白になった」と指摘。病院は既に瀕死の状態であり、ある日突然倒産するという事態が全国で起きていることに危機感を表明した他、診療所も約4割が赤字であるとして、「規模が小さく脆弱な診療所は、これ以上少しでも逆風が吹けば、経営が立ち行かなくなる」と警鐘を鳴らした。
 更に同常任理事は、既に医療機関の倒産が過去最多のペースとなっていることに触れ、「継承にも支障を来し、閉院が大幅に増え、地域医療の崩壊を招きかねない」と述べた上で、患者に対して質の高い医療を継続的に提供するためには、医療従事者に対する賃上げと人材確保が急務であることを強調した。
 最後に江澤常任理事は、診療報酬という公定価格で運営する医療機関にとって、賃上げや人材確保を継続的かつ安定的に行い、物価高騰にも対応するためには、十分な原資が必要であり、対応は待ったなしの状況であるとして、「令和8年度診療報酬改定が担う役割はかつてないほど極めて重要」と主張するとともに、物価・賃金が上昇する中でも病院・診療所が存続できるよう、緊急かつ十分な対応を求めた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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