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令和8年(2026年)5月13日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

財務省財政制度等審議会「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論II)」等、最近の情勢について

 松本吉郎会長は5月13日の定例記者会見で、近く取りまとめられる「春の建議」に向けた財務省財政制度等審議会財政制度分科会での議論を踏まえ、「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論II)(以下、財政審資料)」における、(1)社会保険料の負担、(2)医療法人の業務範囲の拡大及び医療法人・医療機関に対する税制上の特例措置―の他、「AIの利活用」「医療機関の経営情報のさらなる『見える化』」「保険給付外サービス」に関する主張について、日本医師会の見解を示した。(2)を巡る財政審資料の主張に対して、「医療法人に収益業務を認める一方で、正当な税制を脅かそうとするような議論は受け入れられない」などと断じた。

 松本会長は(1)について、「必要かつ適切な医療は保険診療により確保しなければならない」との見方を改めて示した上で、1.税金による公助2.保険料による共助3.患者さんの自己負担による自助―のバランスを取りながら、自己負担のみを上げないことや低所得者等に配慮することの重要性を重ねて指摘した。

 その上で、財政審資料の「高齢者医療における患者自己負担の在り方」に言及した。

 自助について、高齢者は複数の疾患を抱えている方や低所得の方も多いことから、「応能負担の観点から負担できる方にはその負担能力に応じて負担していただくという観点は必要だが、いきなり一律3割負担にしてしまうというような乱暴な議論は避けなければならない」とし、バランスを取りながら少しずつ段階を経て、配慮すべき部分にはしっかりと配慮しつつ、応能負担の議論を進めるべきとの考えを示した。

 共助に関しては、財政審資料でマルチワーカーの社会保険適用を求めており、「これも負担増を求める方向の提案だ」と指摘した。

 一方で、公助については「財政審は減らすことしか頭にないようだ」とした上で、1.2.3.のバランスを取りながら進める必要性を再度強調した。

 (2)ではまず、財政審資料において「医療法人の業務範囲の拡大」として、医療法人に現在禁止されている収益事業を条件付きで認め、その際には医療機関に対する税制上の特例措置とあわせて、そのあり方を検討すべき」と主張していることに言及。

 医療法人の収益業務は現在、社会医療法人に限って一定程度認められているが、これは、地域で不採算な医療など、公益性がより高い医療を担う使命を負っており、より厳しい管理能力が求められていることが背景にあると指摘。「これを一般の医療法人にまで広げれば、財政審が言うような『経営基盤強化』につながるケースばかりではなく、逆に収益事業への投資がうまく行かなければ、その赤字を医業収入から穴埋めする事態になりかねない」との懸念を表明した。

 こうした事態を防ぎ、良質かつ適切な医療を守るためには、日本医師会の医の倫理綱領に謳っているとおり、営利を目的としてはならないとし、「医療機関を開設する法人は非営利原則の堅持が大前提であり、一部の特に不採算な医療を担う医療機関を除けば、社会保険診療で経営が成り立つようにすることが原則だ」と主張した。

 その上で、医療法人の業務範囲については、現行制度の中で医業の附随業務・附帯業務として「認められるもの」「認められないもの」を整理することが第一だとの考えを示した。

 また、財政審資料において、「医療法人の社会保険診療以外の所得への事業税の軽減措置」について、医療法人が営利追及を禁止されていることを存続理由として挙げており、「あたかも医療法人に営利追及を認める代わりに事業税の軽減をなくすべきとも読み取れる資料となっている」と指摘。

 これに対し、同軽減措置は健診、予防接種などの地域の保健・衛生に関する業務の多くを行政と一体となって担っている医療機関の地域貢献に対する地方税上の措置として相応しいものだとの考えを示し、「医療法人に収益業務を認める一方で、正当な税制を脅かそうとするような議論は受け入れられない」と強く訴えた。

 また、財政審資料において、社会保険診療報酬の概算経費の特例について、「医療DXの進展も踏まえれば合意性が低下している」との主張を展開している点にも言及。現在、地方で細々と医業を続けている高齢の医師が突然、概算経費を認められなくなれば、今までやったことのない経理処理を求められるとし、「そうした先生が困窮した果てに『この際、閉院してしまおう』ということになれば、人口減少や医師不足が進む地方の医療提供体制は崩壊しかねない」との危機感を示した。

 AIの利活用ではまず、日本医師会の「AIの臨床利用に関する検討委員会」が取りまとめた答申では、今後AIをうまく活用していくことは重要である一方、医療という分野は「AI単独で完結」ということにはならず、あくまで「拡張知能」という位置付けにすることを指摘としていると紹介。特に人生の最終段階の医療などにおいて、人間の尊厳を守るという観点からも医師が最終的な責任を持たなければならないとした。

 それに対し、財政審資料には、財政審が考える「医療提供体制の未来像のイメージ」が掲載されていて、「医療はできる限り『AI単独で完結』することが理想であるかのような内容になっており、医療側のAIの利活用に対する考え方とは根本から異なる」と述べた。

 医療機関の経営情報のさらなる「見える化」については、財政審資料で「MCDBにおける必須報告項目の追加や細分化が必要」と主張されている点に触れ、全ての医療法人が提出可能な情報には限度があるので、科目の細分化に当たっては、原則として医療法人が既に集計して持っている科目にとどめるなど、法人の負担に配慮すべきとの姿勢を示した。

 さらに、財政審資料で「職種別の給与・人数の提出の義務化は必須」とされている点に関しては、例えば、ある医療機関で、ある職種の従事者が1人の場合は個人の給与が報告対象になってしまうとし、「今後、MCDBデータが研究者等に提供される制度が始まるが、そこで仮に当該医療機関が特定されてしまった場合には個人の給与情報の流出にもつながるのではないか」と危惧した。

 また、職種の分け方や括り方も医療機関によって様々であることにも触れた 上で、「職種ごとの1人当たり給与費は、全ての医療法人に一律に義務付けることは現実ではない。財政審が求めるような『より細かく科学的』な対応が必要であれば、任意の項目を活用する中で、できるだけ回答を促していくことの方が必要だ」と訴えた。 

 保険給付外サービスについては、2026年度診療報酬改定で追加された「Wi-Fi利用料」を一例に挙げ、利便性を追求するサービスが対象となるとの前提に触れた上で、財政審資料では「オンライン診療の受診に係るシステム利用料」を引き合いに出し、通常の診療の窓口業務を保険給付外サービスに位置付けることを主張している点について、「全くもって容認できない。病に苦しむ方や高齢の方に大きな負担がかかるものはその対象にするべきではない」と断じた。

 さらに、財政審資料では「窓口業務」と単に一括りにしている点に対し、「ある程度、本人がICT機器になれている、もしくは周りにサポートしてくれる方がいる場合にのみ利用されるオンライン診療とは違い、対面診療は高齢者を含め、あらゆる方が来院する可能性があり、事情が全く異なる」と指摘。通常窓口では患者さんの様子を見て柔軟な対応が行われていることから、「実質的に一連の診療の入口と言え、診療と窓口業務は不可分の関係だ」と強調。「Wi-Fi利用料」や「オンライン診療の受診に係るシステム利用料」等はあくまで例外として考える必要があると訴えた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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